レザルド川 6

エドゥアール・グリッサン/著
恒川邦夫/訳
四六判・上製・308頁 
定価3000円+税
ISBN4-7738-0310-X C0097 Y3000E

奴隷として連れてこられ、祖国(アフリカ)の記憶も奪われて、主人の国(フランス)に対する憧憬で生きるしかなかった黒人民衆が「尊厳」をもって自らを見つめ、立つために、作家は、アンティルの美しく豊かな自然を背景に、この物語を書いた。

【著者紹介】
エドゥアール・グリッサン
Edouard Glissant

エドゥアール・グリッサンは1928年マルチニック生まれの作家。ネグリチュード運動のエメ・セゼールの次の世代を代表するカリブ海仏語圏の知識人である。

1981年に出版された『アンティル論』で、三角貿易で連れてこられたカリブ海の黒人たちに、《アフリカ回帰》ではなく、《カリブ海への本格的な根下し》を提唱し、「クレオール性」を標榜する若い世代―P.シャモワゾーやR.コンフィアンたち―に多大な影響を及ぼした。

1958年度のルノドー賞を受けた『レザルド川』以降、『第四世紀』(1964)、『マルモール』(1975)、『奴隷監督官の小屋』(1981)、『マアゴニー』(1987)などの連作小説によって、島(マルチニック)の黒人の歴史を克明に掘り起こすと同時に、世界的視野から、民族や言語の多様な接触によって起こる地球社会の新たな問題に対して、独創的なコンセプトを打ち出し、活発な評論活動を行ってきた。

現在ニューヨーク市立大学・大学院教授。日本語訳に『〈関係〉の詩学』(インスクリプト刊)、『全−世界論』(みすず書房刊)がある。




 世界の創造 あるいは世界化 6

ジャン=リュック・ナンシー/著
大西雅一郎+松下彩子+吉田はるみ=訳
A5判・上製・164頁 
定価2400円+税
ISBN4-7738-0311-8 C0010 Y2400E

現代フランス屈指の思想家ナンシーが「グローバリゼーション」を哲学的に考察する!
【あらゆる意味での他者性の排除、「西洋」による文化・文明・進歩・人間性の独占】に抗して「無限の正義は、いかなる場所にも見ることはできない。

いたるところから、逆に、耐えられない不正が荒れ狂っている。
大地が揺れ、ウィルスが伝染し、人間たちは犯罪者、欺瞞者、死刑執行人なのだ。」〈本書より)

【本書の目次】
I 都にそして世界に
II 創造について
III 脱自然化としての創造 形而上学的テクノロジー
IV 補遺
「生命政治」という用語についてのノート
無カラノ至高(Ex nihilo summum)至高性について
コスモスこそ王
訳者あとがき

【著者紹介】
ジャン=リュック・ナンシー (Jean-Luc NANCY)
1940年生まれ。ストラスブール・マルク=ブロック大学名誉教授。特にハイデッガーが解明した実存の二重性をなす共存在・共同性と独異性・単独性の共有=分割(パルタージュ)という問題系を徹底化させることで、西洋形而上学・存在神論における身体性やテクネーの否認を脱構築し、出来事が真に到来しうるような世界、表象作用に還元されえないイマージュが現前しうるような世界、絶対的に切り離された単独者が、その絶対性=分離性のままに、メ芸術的にモ、触れ合うことが起きうるような世界の創造ム主体ならざる自己の自己触発、無カラノ創造ムの可能性を素描し続けている。邦訳書に、『エゴ・スム』(朝日出版社)、『無為の共同体』『侵入者』(以文社)、『共同?体』『声の分割』『哲学の忘却』『神的な様々の場』『共出現』『訪問』(松籟社)、『自由の経験』(未来社)、『ヘーゲル』(現代企画室)、フィリップ・ラクー=ラバルトとの共著の邦訳に、『ナチ神話』(松籟社)、編著に『主体の後に誰が来るのか?』(現代企画室)などがある。




 空の瞳 6

蜷川泰司/著
A5判・856頁・上製 
装丁=本永惠子デザイン室
定価6500円+税
ISBN4-7738-0308-8
2003年10月中旬刊行

地上と空中の二重都市で繰り広げられる痛切な物語を、豊饒に描き切った2500枚!

20世紀末の東洋(アジア)のとある「くに」、停滞と後退、敗北と沈黙に彩られた時代の様相と、その時代を生きざるを得なかった魅力的な人びとの心のふるえと表情を、類い稀な構想力と、勁く濃密な文体で描いたロマンの誕生! 
 
「夕暮れがこの天井のない二重都市を静かに包み込んでいく。入り組んだ狭い路地裏に建ち並ぶ大小さまざまの雑居ビル。その合間からわずかな空が覗くと、そこには決まって硝子の容器に納められたもうひとつの都市、新たな神を受胎せる光り輝く街並が浮かんでいるのだ」(本書冒頭の一節より)


【目次より】二重都市 自殺体 監獄の夜 三味線弾き翌檜 空中都市
外科的な精神療法 スパルタカス ヘイカ 黒い制服たち カナシラ島
渡航記 第七収容所 木箸の看守 受胎告知 半魚人 濃緑の意志 共
和国 巨人族 臨時中央委員会 地上の楽園 イショ 9・17爆破 銃撃
戦 鏡のない世界 地獄の門 服喪 検死 男性部分 女性部分 キリギ
リス 死の玉 亡命作家KF 人面広場 海 
 

蜷川泰司 経歴紹介
1954年 京都に生まれる
1973年 京都大学文学部に入学 学部ではフランス文学 大学院では哲学を専攻
    入学と同時に劇団を結成 76年末の解散まで作・演出とともに自ら舞台に立つ
    大学院時代の80年には京都大学新聞の編集に携わる
1984年 東京に移り、現代企画室で編集・営業にあたる
1987年 日本語・留学生教育に転じ、「空の瞳」に向けての執筆をはじめる
1988年 オランダに移り、ライデン大学日本学センターで教育・研究を続ける
1992年 日本に戻り、その後98年まで、執筆のかたわら、京都大学や大阪外国語大学の留学生センターで教育・研究を続ける
97年秋の「空の瞳」原稿完成後は、オランダでの生活体験もふまえた三部作を構想、執筆

現在はその三作目の長篇として、スピノザの人物・思想をひとつのモデルにその言語作品化に取り組んでいる




 ドラウパディー 6

モハッシェタ・デビ/著
臼田雅之+丹羽京子/訳
装丁=本永惠子デザイン室
定価2500円+税
ISBN4-7738-0309-6 C0097 Y2500E
2003年11月中旬刊行

ガヤトリ・チョクロボルティ・スピヴァクは、この作家の「乳房を与えしもの」を読み、目の覚めるような論評を書いた。それは、モハッシェタ・デビの名前を世界的なものとし、また同時に「サバルタン」概念をより豊かにした。

ベンガルの女性作家、モハッシェタ・デビの選りすぐりの短篇集。「日印作家キャラバン」の交流から生まれたインド文学紹介の第1弾。気鋭のベンガル文学研究者が、ベンガル語から翻訳。

収録作品
ドラウパディー、乳房を与えしもの、チョーリの後ろに、
漁師、10+10、ラーヴァナ、モホンプルのおとぎ話

訳者ふたりと、「日印作家キャラバン」参加の作家3人
による解説も巻末に収録。
モハッシェタ・デビに------
一本の鋭い剣のように  津島佑子   
耳を澄ませて読む    松浦理英子
捨て去れ、放棄せよ   星野智幸


モハッシェタ・デビ(Mahasweta Devi)
1926年、東ベンガルのダッカに生まれる。両親はいずれも作家で、文学や社会問題に早熟な関心を示した。幼いころ、西ベンガルに移り、カルカッタ大学に学ぶ。教師、新聞記者のかたわら、小説を発表し始める。

最初の作品は30歳の時に書いた評伝『ジャーンシーの王妃』で、インドにおける初の対英独立戦争に際して自ら軍隊を率いて戦った人物の生涯を、地元の人びとが150年後にも語り継いでいる民謡・叙事詩・民話などに基づいて、描いた。

「書かれていない本当の歴史を掘り起こすこと」が、その後の彼女の執筆活動の信念となった、と自ら語っている。不可触民・先住民など抑圧された人びとの権利獲得の運動に深い関心を寄せて農民組織に関わり、それらの人びとの表現の場として1980年以降は季刊誌『灯火』の編集にも携わってきた。

長篇小説、中・短篇小説。史伝、児童小説など、表現の分野は多岐にわたり、主としてベンガル語で作品を発表している。インドでもっとも重要な現代作家のひとりである。日本語に翻訳された作品に『ジャグモーハンの死』(大西正幸訳、めこん、1992年)がある。




 アボリジニ現代美術展 [精霊たちのふるさと] 6

2003年7月刊行
ISBN4-7738-0306-1 C0071 Y1800E

オーストラリアの美術界に旋風を巻きおこし、世界からも注目を集めているアボリジ
ニ芸術?の代表的なアーティストの作品を紹介するとともに、アイヌやイヌイット
まで視点を広げ、「先住民」と「芸術」の多様な関係性を提示する。




 PH STUDIO 1984-2002 6

2003年7月刊行
ISBN4-7738-0305-3 C0071 Y2400E

美術と建築の間を縦横に行き来するPHスタジオのこれまでの活動を収めた作品集

PH スタジオ
美術家と写真家と建築家からなるユニット。発足は1984年。「家具」「家」「都市」といった既成の枠組みを「棲む」というキイワードでそれらの解体と再読を試みようとしている。

活動は、美術館やギャラリーでの展覧会、野外でのプロジェクト、建築設計等、多岐にわたっている。

現在のメンバーは池田修、中川達彦、小杉浩久、細淵太麻紀。




 暴力の考古学 6

ピエール・クラストル/著
毬藻充/訳・解説
本永惠子/装丁

定価:2300円+税
ISBN4-7738-0307-XC0039 Y2300E

「帝国」の「戦争機械」が猛威を揮う時代に、未開社会における暴力=戦争の意義を考察する。人間の声に、人間的な言葉に耳を傾けるために。

ピエール・クラストル(1934-1977)
 Pierre Clastres

パリに生まれ、ソルボンヌ大学で哲学を学ぶ。
人類学者で、南アメリカ先住民の神話を研究するアルフレッド・メトローのもとで、南アメリカ民族学をフィールドに選び、政治人類学者としての道を歩み始める。

哲学者クロード・ルフォールらとともに雑誌『リーブル』の創刊に参加し、政治権力をめぐる問題を軸に論文を発表し始める。

すべての文化は自民族中心的であることを免れ得ないとしても、「異民族文化抹殺的であるのはヨーロッパ文化だけである」と断言し、それは「多なるものを解消して<一>にしようとする同一化の原理」がはたらいているからだと喝破するなど、南アメリカ先住民社会を深く研究しつつ、それに基づいてヨーロッパ文明に対する徹底的な批判を展開した。

不幸、自動車事故で夭折したが、形成途上であったその理論は、フェリックス・ガタリの「戦争機械」概念をはじめ、急進的な現代フランス政治・哲学思想に影響を与え続けている。

日本語訳された著作に『国家に抗する社会:政治人類学研究』(渡辺公三訳、水声社、1987)と『大いなる語り:グアラニ族インディオの神話と聖歌』(毬藻充訳、松籟社、1997)がある。




 アフター・ザ・ダンス ハイチ、カーニバルへの旅 6

エドウィージ・ダンティカ/著
くぼた のぞみ/訳
本永惠子/装丁

46判変形・上製・200ページ・写真、地図収録
定価:2200円+税
ISBN4-7738-0304-5 C0098

「カーニバルのあいだジャクメルはただの町じゃなくなる、カーニバルの国になるんだ」

世界に名だたるハイチはジャクメルのカーニバル。幼いときにハイチを離れたエドウイージは、カーニバルに再会するために、ジャクメルを訪れる。カーニバルの日までの数週間、読者はエドウィージに案内されてジャクメルの裏小路をさまよい、墓地を訪れ、山に暮らす人びとに会い、ハイチの歴史に触れ、次第に高まってゆく興奮をともにする。

そしてカーニバル。女王がほほえみ、かたわらにはマザーテレサもいれば、ブッシュも、カストロもいる。ゾンビが猿と挨拶を交わし、奴隷がゴーストや悪魔と握手している。熱狂に誘い込む耳をつんざくような音楽。だが仮面を被った熱狂の日は、また自分に立ち返る仮面を脱いだ日でもあった・・・・・

観光客むけのカーニバルではない、幾世代にもわたる住民をつないでゆくカーニバルを詩情に満ちた筆致で描き出す旅の物語。

エドウィージ・ダンティカ
(Edwidge Danticat)

1969年ハイチに生まれる。
12歳のとき、先に移住していた両親のいるニューヨークへ移る。
幼いときから物語を書きたいという願望をもち、1994年、修士論文として書いた小説『息吹、まなざし、記憶』が高く評価されて、本格的に作家の道を歩みはじめる。

少女時代の記憶に光をあてながら、歴史に翻弄されるハイチの人びとの暮らしや、過酷な条件のもとで生き抜く女たちの心理を、リリカルで、静謐な文体で描き出し、デビュー当時から大きな注目を集める。

その作品の底には、祖母たちから夜ごと語り聞かされた、クレオールの豊かな物語世界が息づいている。1991年に出された『クリック? クラック!』は全米図書賞の最終候補にあげられたほか、発表する作品がつぎつぎと文学賞を受賞し、幅広い読者層に迎えられている。

日本語訳に『息吹、まなざし、記憶』(DHC)、『クリック? クラック!』(五月書房)がある。




 『マヤ先住民族 自治と自決をめざすプロジェクト』 6

IMADR-MJPグァテマラプロジェクトチーム/編集
反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)

A5判・並製・249頁
定価:2300円+税
ISBN4-7738-0302-9

「・・・「北」の「豊かな」国のNGOが「南」の草の根の人々とどのような協働関係を築くことができるのかムムグァテマラプロジェクトの5年余りの歩みの中で、私たちは何度もこの問いに立ち止まってきました」(本書「はしがき」より)

 「西半球で元も醜悪な人権侵害」と呼ばれたマヤ先住民族への虐殺を生んだグァテマラの内戦。1996年の内戦終結とともに、500年にわたる植民地支配の歴史を転換させ自治と自決を求めるマヤ先住民族の新たな戦いが始まった。

その中で、マヤとしてのアイデンティティを保ちながら、差別と抑圧に抗し、共同体としての「エンパワメント」をめざす若者たちの地道な教育活動をともに作っていきたいムムNGO,反差別国際運動の「マヤ先住民族のエンパワメントプロジェクト」はこうして1998年に始まった。

 5年間のプロジェクトの奇跡を振り返りながら、マヤの人々と「ともにつくる」プロジェクトとは何かを問う。

 グァテマラだけでなく世界の先住民族にとって共通の重要な課題である、自決と自治、開発、教育、女性への複合差別についての資料や論考を掲載。

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  『マヤ先住民族 自治と自決をめざすプロジェクト』
               目 次
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第I部 プロジェクト報告ムム1998年?2002年
 1 <何か>のために生きること
 2 平和をめざす青年運動ムム活動の軌跡
 3 プロジェクトの5年間を振り返って
第II部 プロジェクトの背景ムム先住民族の権利とエンパワメント
 1 先住民族の権利と自決権
   ムム1980年代以降の権利回復運動と国際的動向
 2 土着の民の逆襲
 3 先住民族の権利とは何か
   ムム主権・自決権・オートノミーをめぐって
 4 「地球市民社会」を問い直す
   ムム先住民族の権利実現のためのNGO運動論
 5 資料1 先住民族シアトル宣言
第III部 グァテマラの先住民族をめぐる諸問題
 1 和平合意履行と先住民族
 2 特別寄稿・土地問題、地方分権、先住民族の参加
   ムム現状とMINUGUAの意義と限界
 3 先住民族と開発、グローバリゼーション
 4 先住民族と民衆教育
 5 先住民族女性と複合差別
 6 資料2 先住民族の権利と和平合意履行に関する主な動き
 7 資料3 第1回米州先住民族女性サミット宣言
 8 資料4 先住民族のアイデンティティと権利に関する合意(抜粋)
第IV部 マヤ先住民族のコミュニティラジオ
 1 コミュニティラジオプロジェクト提案
 2 グァテマラのメディアムム戦争から検閲へ
 3 グァテマラにおけるコミュニティラジオの歴史
 4 コミュニティラジオとグローバリゼーション
 5 コミュニティラジオプロジェクトへの連帯アピール
 6 電波を先住民族の手に




 関係と無関係--河口龍夫論 6

中村英樹/著
河口龍夫/ドローイング
ディス・ウェイ/装丁
ブック・イン・ブック形式 (上製本の中に文庫本が挿入)
サイズ(天地310mm 左右255mm)
ドローイング図版48頁、文庫本216頁、函入り。
定価:50O0円+税
ISBN4-7738-0218-9 C0070 Y5000E

評論家とアーティストとのコラボレーションが
画期的な造本(ブック・イン・ブック)で実現!

本書は、美術評論家、中原佑介が、30年以上にわたってその作品を観てきた現代美術作家、河口龍夫の作品と思想について、折々に書いた文章に新たな書き下ろしを加え、ふたりの対談をまとめたものです。

ひとりの評論家がひとりのアーティストとの関係を通して1970年代から今日に至るまでの現代美術の意味を探ります。

本書のために河口龍夫は新たに29点を描いて積極的に本づくりに関わり、文字通り評論家とアーティストのコラボレーションが実現しました。ブックデザインは、本の中に本を埋め込む形をとり、ユニークな楽しさにあふれています。




 視角の断層ーー開かれた自己生成のために 6

中村英樹/著
有賀強/装丁
A5判・上製・256頁・図版88点・模式図11点
定価:40O0円+税
ISBN4-7738-0301-0 C0070 Y4000E

現西洋の「神」(ゴッド)とその残影=「自我」(エゴ)の主体構造に対する
東洋の「空」(くう)あるいは「道」(タオ)。

本書の根底には、生きた個体の身体性と物質的素材に基づく
視角的システムによって、その間を橋渡しし、
21世紀の新しい精神的支柱と社会規範を築こうとする
問題系が潜在する。

目次
ポロローグ ある美術家のカメラ・ワーク
第一章   視角的表現は何をめざすのか?
第2章   たまには展覧会に出かけよう
第3章   アートの見方を変える
第4章   アーティストたちの冒険
第5章   アジアとの交流から学ぶ
第6章   心の将来に備える
エピローグ 《境界》に目を向ける壮大なプロジェクト

著者=中村英樹
1940年、名古屋生まれ。現在名古屋造形芸術大学教授。
小社からの既刊書
  ハイブリッド・アートの誕生:東西アート融合に向けて
    ISBN4-7738-9608-6 定価5500円+税 1996年刊 




 ヘーゲル 否定的なものの不安 6

ジャン=リュック・ナンシー/著
大河内泰樹+西山雄二+村田憲郎/訳
本永惠子/装丁
46判・上製・220頁
定価:2400円+税
ISBN4-7738-0213-8

現代世界の開始を告げる思想家、ヘーゲル。
現代フランスの哲学者、ジャン=リュック・ナンシーが、独自の11の問題意識からヘーゲルを読み解く。気鋭の訳者、三者三様の読解のための論考も収録。

11のテーマ
不安・生成・浸透・論理・現在・顕現・動揺・意味・欲望・自由・我々

読解のための論考タイトル
大河内泰樹=「不安」の存在論と「我々」の時代
西山雄二=ヘーゲルに無限なる存在論的開けを切り込む
村田憲郎=「意味の実践」について

ジャン=リュック・ナンシー
1940年、ボルドー生まれ。現在ストラスブール大学教授。ドイツ・ロマン主義、ナチズム、デカルト、カント、ニーチェなどに関する独創的な研究で知られる。
最近はとくに「共同体」概念の練り直しに取り組む。

小社既刊書     編著『主体の後に誰が来るのか』3刷 3800円+税




 空間批判と対抗社会
グローバル時代の歴史認識
6

斉藤日出治/著
本永惠子/装丁
A5判変型・上製・288頁
定価:3500円+税
ISBN4-7738-0214-6 

空間、時間、身体、生きられる経験の根源にまでさかのぼり、その概念の再構築を通して、グローバリゼーションへの対抗的理念を提示する。

本書の目次

はじめに

序章 ポストモダンにおける歴史の復権ー歴史認識をめぐる政治闘争

 はじめに/「新しい歴史教科書」の歴史観/《国民》の物語としての歴史教科書/ポストモダンの歴史的状況と新しいナショナリズム/歴史認識による《現在》の再審理−「木本事件」から学ぶこと/K・マルクスの歴史認識/歴史の責任

T グローバル時代を読むー日常性、ジェンダー、市民権、都市文明

 一 グローバリゼーションと対抗的ヘゲモニー
 はじめに/グローバリゼーションとは何か/対抗的ヘゲモニーの可能性

 二 グローバル資本主義の権力的秩序と性差別ーマリア・ミースに寄せて はじめに/市場のグローバリゼーションと戦争のグローバリゼーション/グローバリゼーションと性差別/グローバリゼーションと本源的蓄積/グローバル空間と帝国の権力

 三 グローバリゼーションとポストナショナルな市民権
 はじめにー個人の人権と国家主権との相克/近代的人権の成立/近代的人権の自己矛盾/グローバリゼーションと主権の多元化/市民権の脱国民国家化/国際主権レジームの成立と国民国家の自己矛盾/市民権とアイデンティティ/集団的成員権と個人のアイデンティティ形成/ディアスポラ・アイデンティティと市民権/市民権の断片化から多元化へーコスモポリタン市民憲章とラディカル市民権
に向かって

 四 グローバルな情報資本主義と都市文明の危機
 グローバル都市文明のパラドクス/情報経済の出現とグローバリゼーション/情報都市とフローの空間/グローバル化とローカル化/情報都市の根源的矛盾−フローの空間(ネット)と場所の空間(自我)との対抗/情報都市における矛盾の空間的発現/矛盾の制御調整としてのガヴァナンス

 付論 グローバリゼーションに関する断章−書評から
  S・サッセン『グローバリゼーションの時代』/D・ハーヴェイ『ポストモダニティの条件』/トムリンソン『グローバリゼーション』/E・バリバール『市民権の哲学』/伊豫谷登士翁『グローバリゼーションと移民』/J・アタリ『反グローバリズム』

U 空間の政治−ポストモダンの空間論

 はじめに 社会科学における空間論の台頭

 一 日常生活批判と都市論
 日常生活批判と空間論/都市論と空間論

 二 空間の生産の問題圏
 社会秩序の空間形成/マルクスの物神性批判と空間の科学批判/マルクスとニーチェとの出会いーロゴスとエロスの弁証法/空間認識の方法概念/空間と身体−リズム分析/空間の歴史認識−資本の本源的蓄積と空間/弁証法の空間化


 三 生きられる経験の収奪と空間の政治
 経済学の資本概念が忘却したものー生きられる身体のリズム分析/生きられる経験の収奪回路としての抽象空間/空間の政治−総過程的媒介としての空間/空間的身体の復権/都市への権利−生きられる空間への権利

V ポストモダンの社会像−ポストモダンにおける市民社会と社会主義

 一 ポストモダンの市民社会像
 はじめにー市民社会の復権か、市民社会の衰退か?/ブルジョア社会と市民社会ー平田市民社会論の二つのベクトル/ポストマルクス主義の政治と市民社会−社会的なるものの発生と政治/言説的調整の場としての市民社会/権力諸関係を編制する場としての市民社会/権力諸関係を再審する場としての市民社会/市民社会-国家のポストモダン的編制−ニコス・プーランザスの権威主義的国家論

 二 ポストモダンの社会主義像
 はじめに/市民社会と社会主義のポストモダン的展開/市民権論としての社会主義/空間の生産と社会主義/時間の解放と社会主義/個人の解放と労働社会の終焉

三 ポストモダンの時代認識と社会主義戦略
 はじめに/二〇世紀システムと社会主義−モダニズムの社会主義像/ポストモダニズムーモダニズムの危機/ポストモダンと社会主義戦略/結び

あとがき

参考文献

索引




 オルタナティブ・ソサエティ
 時間主権の回復
6

佐々木政憲/著 
本永惠子/装丁
46判・上製・264頁
定価:2500円+税
ISBNM4-7738-0219-7 

今こそ古典【ヘーゲル、マルクス、グラムシ】を読み込み、21世紀資本主義の批判的分析から、来るべき社会の構想へ!

本書の目次

第1章 労働社会の終焉
 はじめに
 1 「国民のサラリーマン化」
 2 国民的アイデンティティとしての「勤労」
 3 過剰労働社会としての20世紀資本主義
 4 カイシャ社会における労働と欲望の回路
 5 雇用の総入れ替えと労働社会の二極化
 6 労働運動の新しい潮流
 7 労働のトランス・ジェンダーな地平へ
 8 労働神話の再審と時間主権の回復
おわりに−時間主権の確立に向けて−
付論 人間らしさ、自分らしさを生かせる暮らし方・働き方

第2章 情報ネットワーク資本主義とシビル・ソリューション
 はじめに
 1 グローバル資本主義の現在
 2 生産資本循環の情報ネットワーク化
 3 ME革命からIT革命へ
 4 サイバー資本主義
 5 情報ネットワーク化と賃労働関係の危機
 6 社会的労働運動の再生
 7 労働における協力のネットワーク
 8 地域社会における協力のネットワーク
 結語にかえて−多元的市民社会の創造へ

第3章 ポスト・フォード主義と時間主権の回復−マルクスの自由時間論と現代
 はじめに
 1 自由時間の歴史理論
(1)「固定資本の発展」と「社会的個人」
(2)自由処分可能時間と過剰労働時間
(3)時間主権の回復とポスト資本主義
2 フォード主義と賃労働関係の変容
(1)労働と欲望の自由な主体としての賃労働者
(2)賃労働関係の変容と消費社会の誕生
(3)自由時間をめぐる社会闘争
(4)消費社会の展開と労働の変容
3 ポスト・フォード主義のオルタナティブ
(1)労働社会の危機
(2)過剰消費とエコロジー危機
(3)ワークシェアリングの射程
(4)市民社会の「アソシアシオン」 
付論 ワークシェアリングの政治哲学−D.メーダ『労働社会の終焉』を読む−

第4章 グローバル資本主義と市民社会
 1 グローバル資本主義と国家の変容
 2 「市場と国家」−「社会」の不在
 3 資本主義的市場経済と国民国家
 4 フォード主義的発展様式と福祉国家体制
 5 多層的な市場空間形成
 6 国家の分裂と市場の分裂
付論 20世紀資本主義を超える社会形成−高橋洋児・石塚良次『2001年の
事始め』を読む− 6 国家の分裂と市場の分裂

第5章 市民的ヘゲモニーと歴史的選択−グラムシの市民社会論と現代−
 はじめに
1 現代の「市民社会」概念
2 陣地戦の歴史認識と市民的ヘゲモニー
3 社会諸階級と資本蓄積
4 国家コーポラティズムと社会的ブロック形成
5 新たな歴史的選択と市民的ヘゲモニー
結語に代えて−現代のレギュラシオン社会へ
付論 現代市民社会と「政治」の復権−黒沢惟昭『疎外と教育の思想と哲学』を読む−

第6章 新しいソシエタル・パラダイムとしての現代市民社会
 1 市民社会の経験と概念
 2 国民統合のモメントとしての市民権
 3 グローバル経済と市民社会の再生
 4 市民的レギュラシオンとしての政治
 5 歴史形成の場としての市民社会
 6 オルタナティブ・エコノミーと現代市民社会
 結語にかえて−時間解放社会の確立へ
付論 多元的市民社会の世紀へ−斉藤日出治『国家を超える市民社会』を読む−