学校の外から

大阪府・市大一体化でトンデモ「教育学部」新設構想

2011年12月4日掲載

 12月3日の朝日新聞朝刊で「『教育学部を新設』府・市大一体化で 松井大阪府知事方針」と報道されていたのを読んで驚いた。

「教育学部を新設」 府・市大を一体化で 松井知事方針
(朝日新聞 12月3日)

 大阪府の松井一郎知事は2日夜、NHKの番組で、府立大と大阪市立大を将来は一体的に運営し、両大学にはない教育学部を新設する方針を示した。番組後、報道陣に教育学部の新設をめざす狙いについて「教育の質の向上。統合本部で議論する」と説明した。
 両大学には府市が年間で計200億円超の運営費交付金を支出。大阪維新の会はダブル選の公約で「大阪都公立大学法人」を設立し、両大学の学部を整理して一体運営するとしていた。

 すでに教員養成大学として大阪教育大学があるにも関わらず、あらたに「教育学部」を設置するとはどういう考えなのか疑問に思った。はたして大阪教育大学と協議した上での松井知事の方針なのだろうか。また、文部科学省の教員養成大学設置基準に合致するような計画なのだろうか。

 「教育学部設置構想」にそんな疑問を持っていたのだが、維新の会の教育基本条例策定者は新しい教育学部のイメージを次のように考えている、と知り合いから聞いた。以下、その要点である。

大阪都公立大に教育学部を作るのは、教員の養成が目的。

 現行、教員数が不足している中、これから校長に人事権を移行し、各校から増員要請が来ると、さらに数が足りなくなる。懲戒処分で減ることもある。大教大の卒業生だけでは絶対数も足りないし、大阪以外の府県に就職する可能性も高い。公立大では、「大阪の教育のためになる人材」を育成。教員免許を与え、教員採用試験に受からなくても、非常勤や学校サポートをするNPOのスタッフとして入ってもらえれば、安上がりで数をそろえられる。

 知り合いから維新の会の教育基本条例策定者の新設教育学部のイメージを聞いてとんでもない「教育大学設置構想」だと驚いた。要するに新しく大阪都公立大学に作る教育学部で大阪府内で働く、知事が設定する教育目標にかなった教育を実現する、できれば非常勤の教員を数多く養成する、という構想のようなのだ。このような一党派の恣意的な意図での教員養成を大阪府・市の予算でやらせていいものだろうかと思う。また、大阪府立大学、大阪市立大学の解体が今後進むことに反対していかなければならないと思った。

 もうひとつの情報では、教員の「心の病」を原因とする休職数が過去最多であったことについて松井知事が「家庭の事情に起因しての疾病」であると答えていることである。このような見識しかない知事が教員養成大学を設置し、教員養成をするとはトンデモナイ!ことである。(「登校拒否を克服する会」の府知事選中の公開質問状に答えてより)

【教員のうつなど精神疾患について】

Q「多くの教職員がストレスを抱え、2009年度の精神疾患の休職者数は17年連続の増加で過去最多を更新したと文部科学省の発表がありました。教職員の多忙や過労を減らし、子どもたちに行き届いた教育が保障されるためにも、国へのはたきかけと同時に、府独自の取り組みが必要だと思いますが、このことについてのお考えをお聞かせください。」

松井一郎より回答
「精神疾患で休職する大阪府の教員数は、全国最高水準にあります。ただ、その多くは家庭の事情に起因しての発病であると教育委員会から報告されています。すなわち、必ずしも職場環境としての学校が高ストレス、過重労働というわけではないと理解しています。しかしながら、1日の多くを過ごす職場の環境を維持向上させることは、子どもたちが良好な教育を受ける観点からも大切です。これからもメンタルヘルス対策を維持充実させていくべきと考えています。」

(松岡)