学校の外から

埼玉・通知表(票)に愛国心 45校

2006年5月26日掲載

(NET21より転載)
 24日衆院特別委員会では、愛国心の評価について「評価は不要」の小泉首相と、「意欲・態度を総合的に評価する」と小坂文部科学大臣の答弁が食い違った。

 その愛国心の評価だが、埼玉県教育局の調査で県内小学校45校で通知票に「愛国心」を盛り込んでいたことを公表した。
 以下各紙報道。(斎藤紀代美)<新聞記事のため転載禁止>

埼玉新聞 2006.5.25
県内公立小学校
通知表に「愛国心」
県北の45校、3段階評価

 小学6年生の通知表の社会科の評価項目に「国を愛する」を盛り込んでいる県内の公立小学校が3市2町45校に上ることが県教育局の調べで24日、分かった。

 県教育局は5月中旬、市町村教委(さいたま市除く)に愛国心の表現である「自国を愛し」「国を愛し」を評価項目に入れている小学校があるか聞き取り調査を実施した。通知表は各学校ごとに作成するため「すべての小学校を把握したとはいえない」(県教育局)としている。

 3市2町は行田市、鴻巣市、深谷市、寄居町、騎西町。行田、鴻巣、騎西の3市町は全小学校で実施している。残りの2市町は一部の学校の採用だった。

 45校では小6社会科の「関心・意欲・態度」をみる評価項目の中に「自国を愛し」「国を愛し」などの文言を入れて、3段階で評価。ある小学校では「歴史、政治に関心をもって意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚をもとうとする」としている。

 義務教育指導課によると、2002年度から学習指導要領の社会科の目標に「国を愛する心情を育てる」と明記されたことから、これらの学校が同様の文言を盛り込んだという。

 島村和男教育長は24日の定例会見で『愛国心』のみではなく、意欲や関心を含めて評価している」と話した。また24日から衆院で審議入りした教育基本法改正案については「今後重視すべき理念を明確化するものとして審議は重要」とした。

 通知表の「愛国心」評価をめぐっては、一部の有識者などから「内面をどう評価するのか」『愛国心』の基準は誰が決めるのか」などの批判がある。

朝日新聞 2006.5.25 埼玉版
県内小学校
45校、通知表に「愛国心」評価

 教育基本法改正案をめぐる衆院特別委員会の質疑が始まった24日、島村和男教育長は定例記者会見で現在、県内3市2町の45校で、愛国心の評価を通知票に盛り込んでいると公表した。03年の調査より8校増えたという。

 県教育局が先週、調査したところ、通知票に愛国心を評価する観点があるのは行田、鴻巣、深谷の3市と寄居、騎西の2町にある45小学校。いずれも小学校6年の社会科で、通知票の観点の内容は、各学校の校長が決めている。

 行田市の小学校では社会科の4観点の一つに、「我が国の歴史と政治及び国際社会での日本の役割に関心をもって意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚をもとうとする」がある。3つの学期でA~Cの3段階で評価する。

 朝日新聞の03年の調査では、埼玉県内の熊谷、行田、川里、騎西の2市2町の37小学校が採用し、福岡県(67校)に次いで多かった。熊谷市はその後、取りやめた。

 島村教育長は「(『国を愛する心情』は)今の学習指導要領に記載され、教育基本法の理念にあがるべきだと思う。どう表現するかは議論が必要だ」と語った。

毎日新聞 2006.5.25 埼玉版
県調査 「国や日本愛する心情」項目
通知表記載45校

 6年生の社会科の評価に、国や日本を愛する心情を含む項目を設け通知表に記載する小学校が、鴻巣市など県内3市2町で計45校あることが、県教育局のまとめで分かった。教育基本法改正案をめぐる「愛国心」論議の高まりを受け、同局が調査した。

 調査によると、何らかの表現で国を愛する心情を盛り込んでいたのは、鴻巣市が19校。他の市町は行田市16▽深谷市2▽騎西町5▽寄居町3。

 通知表の書式は各学校が定めている。行田市のある小学校では「我が国の歴史と政治及び国際社会での日本の役割に関心を持って意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚をもとうとする」という観点項目を3段階評価していた。

 国を愛する心情の育成は、02年度から始まった新学習指導要領で社会科の目標に明記されており、同局義務教育指導課は「(愛国心の明記)目標の具現化ということだろうが、原則的には各校の判断」としている。

 県の調査の対象外だったさいたま市は「各校に一任しており、把握していない」(市教委指導1課)としている。

埼玉県・愛国心通知表続報(1)

2006年6月2日掲載

(NET21より転載)

5月25日の新聞報道から1日経て愛国心の通知表は45校からさらに増加しています。各社報道の数値が51校、52校と異なるので県教育局義務教育指導課に26日に問い合わせたところ、25日報道後も、訂正や追加などの報告が市町村教委から入って来ており、数値はまだ流動的という返事でした。本日のTBSサンデーモーニングではこの問題を取り上げ、愛国心の評価はして欲しくないという鴻巣市の母親たちの声を放映し、問題だというコメンテイターの論調でした。
斎藤紀代美

<愛国心>通知表評価項目に 埼玉で52小学校、愛知も

 「国を大切にする」などの「愛国心」表記を通知表の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が埼玉県で52校に上り、岩手、茨城、愛知県にもあることが毎日新聞の全国調査で分かった。教育基本法改正案を巡る国会審議で、小泉純一郎首相は「愛国心があるか
どうか、そんな評価は必要ない」と答弁したが、学校現場は既に評価へ踏み出し、全国に広がる気配だ。
【まとめ・井上英介、高山純二、高本耕太】

 埼玉県内の52校の所在地は▽鴻巣市▽行田市▽熊谷市▽深谷市▽騎西町▽寄居町。茨城県内は常陸大宮市と牛久市、阿見町、愛知県は北名古屋市、岩手県では大船渡市と釜石市で「愛国心」を盛り込む事例があったが、各県での総数は不明だ。
 「愛国心」表記の通知表が見られるようになったのは、学習指導要領が02年度に改定され、小学6年社会科に「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする」などの目標が設定されて以降といわれる。
 埼玉県行田市では市立小全16校中14校が、現行学習指導要領の施行と同時に、通知表の6年生社会科の観点別評価項目の一つに盛り込んだ。実際の記載は「わが国の歴史と政治、および国際社会での日本の役割に関心を持って意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚を持とうとする」。担任が3段階で絶対評価する。
 現行指導要領は、小6社会科の学習目標のひとつに「国を愛する心情を育てるようにする」とうたっている。通知表は校長の権限で作られ、学校ごとに異なるが、14校は事前に定めたひな型に沿って同一の表現にした。ある校長は「愛国心というより学習の意欲や
態度を評価する項目だ。指導要領にも沿っており、問題はない」と説明する。
 だが、52校の中には削除を検討している学校もあり、校長たちの足並みはそろっていない。
 寄居町のある小学校の通知表の記載は「我が国の歴史に関心を持ち、それを意欲的に調べることを通して、歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を持とうとする」。
 これについて、昨年7月赴任した現校長は「前校長が作ったので経緯は分からないが、どういうことを『国を愛する心情』というのか判断が難しい。あいまいな部分は分かりやすく変える」と語り、現在作成中の06年度の通知表で「愛国心」を削除する考えだ。
 通知表の「愛国心」評価を巡っては、福岡市では02年度に市立小の約半数にあたる69校で実施したが、市民団体が反発し、03年度から削除された。
 国会では24日に福岡市の事例が取り上げられ、小泉首相は評価の必要性を強く否定。小坂憲次文部科学相も、野党側の「内心の自由を侵害する」との追及に「子どもの内心に立ち入って(愛国心があるかどうか)評価するものではない」と慎重な答弁を繰り返した。 全国調査では、福岡市のほか、福井県内でも「愛国心」評価が一時期実施されていたことが分かった。他の都道府県は「把握していない」「調査していない」などと回答した。

 ▽大田尭・東京大名誉教授(教育学) 一番の問題は、学習指導要領が「国を愛する心情を育てる」ことを目標に挙げている点だ。愛国の情は個々人で違っていてもよく、評価するのは不自然。心情を画一評価することは内心の自由を侵すことになり、内面の画一化につながる恐れもある。教育基本法が改正されると、愛国への心情評価が合理化されるのではないか。

埼玉新聞 2006.5.26
熊谷も6校 県内51校に
 「愛国心」通知表

 県教育局は25日、小学6年生の通知表の社会科に評価項目に「国を愛する」を盛り込んでいる小学校が、熊谷市内で新たに6校あることを明らかにした。これで「愛国心」評価をしている県内の小学校は分かっていなるだけで計51校となった。
 同局は今月中旬、愛国心の評価を通知表に盛り込んでいるかについて70市町村教委(さいたま市を除く)を調査。通知表は各校で作成するため、熊谷市教委が「把握してない」と回答したのを「なし」と判断していた。
 24日の教育長定例会見で、同局が行田、鴻巣、深谷の3市と寄居、騎西の2町の45小学校が愛国心の評価を通知表に盛り込んでいると公表したため、熊谷市があらためて調査したところ、6校あることが判明した。

埼玉県・愛国心通知表続報(2)

2006年6月10日掲載

(NET21より転載)

 愛国心通知表で「愛国心」の項目は必要ないと小泉首相。あの上田知事ですら「私が教師だったら評価に困る」と発言。
 連日のように教育基本法検討委員会で質疑が行われている「愛国心」問題ですが、評価項目が「愛国心」だけではないという言い逃れ、通知表を規制しないという人権感覚の欠如した文科大臣や教育局長の国会答弁。
 今でもこんな状態ですから、教育基本法改正案が具現化されたらと考えると…その先が容易に想像ができます。この時機に評価問題が出てきたのはむしろ良かったのかも知れません。多くの親たちが真剣に考えてくれるといいなと思っています。
 埼玉新聞報道をお伝えします。高橋哲哉さんのコメントが掲載されています。(斎藤)

埼玉新聞 2006年6月6日 1面
全県調査を実施
県教育局「愛国心」評価で
 
 県内六市町の小学校で愛国心の評価が通知表に盛り込まれていることを受けて、県教育局が「自国を愛し」などの表現を使用している小学校の全県調査を実施していることが5日、分かった。
 国会での教育基本法改正案の議論でも話題を呼び、小泉首相は「愛国心」の評価項目を設けるべきではないとの考えを示している。
 同局は先月24日、「愛国心」評価を実施している公立小学校は四十五校あると公表したが、その後、熊谷市にもあることが分かり、数字を訂正。「愛国心」評価が大きな話題にもなり、同局として正確な数字を把握するため調査を実施することになった。
 同局義務教育指導課は5日、全70市町村教委(さいたま市除く)に調査を依頼。調査内容は、小6の社会科で「自国を愛する」などの評価項目を使用している学校数と、いつごろから評価を実施しているか―など。調査の締め切りは六月中旬。
 同課によると、先月末時点で行田、鴻巣、深谷、熊谷、寄居、騎西の六市町の約50校で評価項目に「愛国心」が盛り込まれているという。

今はあえて削らない
通知表項目で行田市教育長

 教育基本法改正案に関連して、県内の50以上の小学校が、六学年社会科通知表の評価項目に“愛国心”を盛り込んでいるのが明らかになった問題について、行田市の津田馨教育長は5日の同市定例会見で、「自国を愛する」という文言は内心を評価するものではないとした上で、通知表評価項目から削除する意向のないことを表明した。
 同市の市内14小学校が「自国を愛する」の観点評価を取り入れている理由について、文科省の学習指導要領の評価目標や、県の評価基準を受けたものだと説明。
 「現場は、市で作った年間評価計画に基づき、学習意欲や提出物で評価している」と述べ、自分の国を愛することを必ずしも強制するものではなく、内心を評価するものでもないと強調した。
 また、“愛国心”の文言の見直しを検討している市町がある一方で同市は「(愛国心の表記を)この時期にあえて外すことで、今まで愛国心を評価してきたのか、ということになってしまう。今は削除する予定はない」と語った。

通知表表現は規制設けない
文科相

 小坂憲次文部科学相は5日の衆院教育基本法特別委員会で、行田市の小学校の通知表の評価項目に「自国を愛し」などの表記があることについて「通知表の表現は学校長に委ねられている。表現を個別に審査し、認可するなどの規制を設けるつもりはない」と述べ、「愛国心」にまつわる表現があっても規制しない考えを示した。
 文科相は「『我が国と郷土を愛するとともに』などとする評価項目を書くことは否定しないが、内心を評価することがあってはならないことを指導する」と重ねて強調した。
 社民党の保坂展人氏が行田市の公立小学校の通知表で「わが国の歴史と政治及び国際社会での日本の役割に関心を持って意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚を持とうとする」とした評価項目の是非をただしたのに対する答弁。
 これに関連し、文科省の銭谷真美初等中等教育局長は「市に事情を聴いたが、『意欲的にわが国の歴史を調べるなど関心や態度の評価であって、自国を愛する心を持っているかどうかの評価ではない』との返事だった。それで結構だと思っている」と述べ、問題ないとの認識を示した。


埼玉新聞 2006年6月6日 2面
どうなる通知表「愛国心」評価
本年度の評価項目作成が大詰め

 心の内面をどう評価するのか―。衆院教育基本法特別委で審議中の教育基本法改正案は、次期国会への継続審議となった。争点となった“愛国心”問題について小泉純一郎首相は1日、「(評価に)愛国心の項目の必要はない」と答弁。上田清司知事も「もしも私が教師だったら評価に困る」と語った。県内では県北を中心に小学校6年生の社会科で“愛国心”をどう評価してきたのか。本年度の通知表の評価項目を決める作業が大詰めを迎えている中、各学校の対応を探った。

「基準なく評価できない」
 県の調べでは、県内で6学年の通知表に“愛国心”の文言を盛り込んでいる小学校は5月末現在、鴻巣市で19校、行田市で14校、深谷市6校、熊谷市5校、騎西町4校、寄居町3校、4市2町で50校以上にのぼった。(さいたま市は未調査)
 行田市では2002年度の学習指導要領改定時、各学校の教師でつくる「通知表改定委員会」がモデル案を作成。「わが国の歴史と政治及び国際社会での日本の役割に関心をもって意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚を持とうとする」 という。
 表現を、社会科の4つの観点評価項目のひとつに盛り込んだ。“愛国心”の評価基準について、同市内のある校長は、愛国心の部分ではなく前文の、日本や世界の歴史について意欲的に調べているかを評価基準としていると語り、「教師は子どもの授業態度や作文などの提出物で判断するしかない」と現場の気持を代弁した。
 別の学校のベテラン男性教諭は「多くの教師は『自国を愛し』の部分で評価はしてい
ない。明確な判断基準もないので事実上無視している」と話した。評価項目に“愛国心”の文言があるもの、実際的には評価していないようだ。

現場は見直しを含め検討へ
 各学校は、例年5月末から学年別や教科部会ごとに話し合いを持って評価基準を決めている。6月末には通知表の印刷を終えなければ学期末に間に合わない。埼玉新聞社の調べによると、同市で作成が進む06年度通知表の評価項目に“愛国心”を「昨年と同様に盛り込む」としたのは6校、「現行のままか見直しかを含め検討中」が7校だった。
 通知表は本来、各学校の裁量で作られるものだが、他校との足並みをそろえたいという学校側の意向がうかがえる。また、6学年担任教諭の総意として、表記を削除する意向を持つ学校が1校あった。
 こうした表記の見直しを検討する動きは他市町村でも広がっている。騎西町教委は「教師も成績の付け方の判断に苦しんでいるほか、誤解が生じている」として、「国を愛する心情」という表現を一学期の通知表から変更する考えを示した。昨年の1市2町合併後、本年度から市内の全19校で統一の通知表を使用する鴻巣市は、小中学校と教頭らによる「通知表検討委員会」が会合を開き、「国を愛し」の部分を具体的で分かやすい表現にするよう検討している。市教委も校長会に見直しを働き掛けるという。
(1面参照)

個人で形が違う
 高橋哲哉東京大大学院教授(哲学)の話
 愛国心を通知表の評価項目に盛り込むのは、現行の憲法、教育基本法に照らして「内心の自由」を侵害する恐れがある。愛国心の形は個人で違う。
 例えば、自国の戦争を支持するのが愛国心という人もいれば反対するのが愛国心だという人もいる。大きな見解が分かれているのが実態だ。だが、評価に盛り込まれれば、子どもは上から押し付けられた「愛国心」を持とうとして振る舞うだろう。「愛国心そのもので評価していないので問題ない」という現場もあると思うが、今後、政治や行政が強い態度に出た場合、評価をやらざるを得なくなる。また、外国籍の子どもが県内にもいることを考えれば、どうやって「愛国心」を教えるのか。日本人と同じ基準では無理がある。

埼玉県・愛国心通知表続報(3)

2006年6月28日掲載

NET21より転載)

 埼玉県教育局の調べで、愛国心通知表は15市町村66校に増えた。鴻巣市は校長研究協議会で19校すべて、削除することを決めた。さいたま市6校も削除すると報道している。
 削除は当然ながら、削除すればそれでいいという問題ではない。「心のノート」や扶桑社の公民教科書「国を愛することは、国旗・国歌を尊重する態度につながる」の記述のように、「愛国心」の指導・強制がどのように行われるか危惧される。子どもの内心の自由、一人ひとりが異なるアイデンティテイの権利を守るためにも、教育基本法「改正」案を廃案に! 
(斎藤紀代美)

◆埼玉新聞 2006.6.15 一面
鴻巣の小学校 “愛国心”全校削除へ
     通知表評価を見直し
 
 通知表の“愛国心”問題をめぐり、評価項目の見直しを検討していた鴻巣市で14日、市内小中学校の「校長研究協議会」が開かれ、19小学校のすべての通知表から「国を愛し」という表記を削除することを決めた。

校長研究協で合意
 国会での教育基本法改正案の流れや報道を受け、同協議会では「国を愛し」(6学年社会科)の文言が評価項目として適切かどうかをあらためて検討。日本の文化や歴史について指導し、その学習プロセスを評価することは大切だとしたものの、愛国心を評価するのは難しいという意見で一致した。同じ理由で、5学年社会科の「(略)国土への愛情をもとうとする」という部分も削除することにを決めた。
 同市教委によると、通知表に統一性を持たせるため、様式は市内共通。現行の評価項目は、2002年の学習指導要領改定を前に、校長や教頭でつくる通知表検討委員会が話し合って決めた。観点評価に「我が国の歴史と政治及び国際社会における役割に関心をもち、意欲的に調べることを通して、国を愛し、国際社会に生きる自覚をもとうとする」との項目があり、ABCの3段階で評価していた。変更後は「(略)関心を持ち、意欲的に調べようとする」という表記にする。
 鈴木賢一教育長は「通知表は最終的に保護者の手に渡るもの。学校での子どもの学習生活、授業内容が保護者に正しく伝わるよう、分かりやすい表現に見直した」とコメントした。

15市町村66校に項目
  「国を愛する信情」などを通知表の評価項目に盛り込んでいる県内公立小学校(さいたま市を除く)が8市6町の60校に上ることが県教育局の調べで14日、分かった。同局は先月末、「愛国心」の項目があるのは6市町50校前後としていたが、正確な数字を把握するため、あらためて全県調査を実施していた。前回の調査で把握できなかった8市町12校が新たに判明した。
 さいたま市でも6小学校が「愛国心」を評価項目に盛り込んでおり、これでは県内では15市町の計66校あることになる。
 同局義務教育指導課は今月9日、さいたま市を除く70市町村教委に2005年度の小学6年生の通知表項目を調べるよう依頼。調査の結果「国を愛する信情」「国を愛し」などを盛り込んでいたのは▽鴻巣市16▽行田14▽深谷6▽熊谷5▽騎西4▽寄居3▽上尾、幸手、吉川、杉戸いずれも2▽長瀞、羽生、白岡、鷺宮はいずれも1校の8市6町の60校。ほとんどの学校っが学習指導要領が改定された02年度から導入した。

◆朝日新聞 2006.6.15 埼玉版
通知表に「愛国心」、新たに12校

 県教育局は14日、05年度の通知表に「愛国心」の表現を盛り込んだ小学校が新たに4市4町で12校あったと発表した。県内では9市6町の66校で導入されていたことになる。(以下略)

◆朝日新聞 2006.6.15 夕刊
鴻巣の16小学校 愛国心評価削除

 通知表での「愛国心」の評価について、埼玉県鴻巣市にある小学校19校のうち16校が1学期の通知表から削除することが15日、わかった。市教委によると、現行の評価項目から「国を愛し、国際社会に生きる自覚をもとうとする」を削除する。市教委は「学習の過程を重視し、保護者に評価の仕方がわかりやすく伝わるようにした」と説明している。

◆朝日新聞 2006.6.13 埼玉版
愛国心評価6校削除へ
さいたま市教育長「内心立ち入らぬべき」
 
 通知表での「愛国心」の評価に関し、さいたま市は12日、市内の6小学校で評価項目があり、いずれも削除することを明らかにした。同市議会一般質問で藤間文隆教育長が述べたもので「内心の自由に立ち入っての評価はすべきではない」と説明している。
 市教委によると、愛国心の記載が報道で取り上げられたため、今月、全100校に電話で調査した。浦和区で2校、桜、南、中央、岩槻で各1校ずつが昨年度取り入れたが、各校の判断で1学期から取りやめる。
 記載があった小学校では、社会科で「歴史や政治について進んで調べ、国を愛する気持を持とうとする」などの項目があった。よくできる▽できる▽もう少し、などの3段階で評価していた。
 市教委は「この項目は、どれだけ郷土の歴史を勉強したかを評価するためのもので、内心を評価する意図はない。それなのに保護者に誤解されるのは本意ではない」とし、「各校で分かりやすい表現にしてもらいたい」と話している。
 相川宗一市長は2日の定例会見で「愛国心があるからマルで、なければバツだという決め方はおかしい」として、各校での実態を把握したいと話していた。

………………
※さいたま市教委に問い合わせしたところ、学校名が判明しました。( )内は校長名
浦和区  常盤小(後藤武)、針谷小(高橋正)
桜区    土合小(?)
南区    大谷場小(斎藤一男)、
中央区  下落合小(小山勝)
岩槻区  岩槻小(蓮尾英二)