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変形労働時間制2020年度めどに実施! 「教員の働き方改革」は究極のペテン?(定期交渉要求書) 

2019年01月02日掲載

<はじめに>
 変形労働時間制が再来年度本格実施されると新聞発表があった。長時間労働の解決は、教員増でも、給特法廃止でもなかった。
 「変形制」とは、繁忙期の(例えば)月火木金曜に1時間ずつ就業時間を延ばす。その場合、終業は18時15分。超過した分を閑散期に振り替えるというものだ。閑散期とは長期休業の事。夏休みには研究会、プール指導や部活動がある事を文科省は知らないのだろうか?交渉の席で文科省側は「各地教委の判断で」と回答したが、上意下達の嘘まみれの中で、どのように教員の健康・生活を守るのか、高槻市教委の真意を正したい。
 以下、2019年度への対市要求書です。

要  求  書

2018年12月 3日
高槻市長   濱田 剛史 様
高槻市教育委員会
教育長    樽井 弘三 様
                           学校労働者ネットワーク・高槻
                             執行委員長  松岡  勲
 
 2019年度の教育予算に関わる要求事項とともに、労働条件に関わる要求事項を提出し、市教委交渉を申し入れますので、要求内容を検討の上、文書での回答をお願いします。


A.地方公務員法55条(交渉)に基づき、誠意と責任を持って交渉を履行されたい。
B.勤務時間短縮に伴う制度変更について
(1)市教委は、時短制度の遵守、追求のため学校の業務を削減する行程を作るプロジェクトチームを市教委各課を広く横断する形で立ち上げられよ。この取り組みがどこまで進んでいるのか、進捗状況を述べられよ。
 ①市教委は、市下小中学校の超過勤務時間80時間、100時間越えのケース を正しく把握されよ。また、校長も正確に把握し対応するよう指導されよ。
 
 ②また、8月30日の交渉の場で「昨年度(2017年度)の出退勤システム の集約結果を11月以降に出す」と市教委は明言した。その集約結果と今後の 展望を示されよ。
 
 ③同システムは、適正な勤務時間に向けての一歩ではあ るが、休憩時間が含まれていない。取得できなかった休 憩時間を、超過勤務として算定するシステムに改良され よ。

(2)8月30日の交渉の場で、市教委は、時短に向けての業務削減の第一歩を示された。その後の進捗状況、課題等を示されよ。

(3)市教委は、学校内の業務削減に向けて、業務削減基準を作られよ。

(4)文科省は今、公立学校の教職員の労働時間を年単位で管理する「変形労働時間制」を導入する方針を固めている。春先、繁忙期の勤務時間の上限を10時間に延長するものだ。高槻市にあてはめると、勤務開始8時半―終了19時15分となる(休憩時間1時間)。超勤80時間、100時間越えをこのような形で減らすのは本末転倒であり、教職員の健康は逆に脅威にさらされることになり、断固反対する。市教委の見解を示されよ。

C.再雇用制度について
(1)再任用制度について2018年1月31日の交渉で確認された以下の点について再確認されたい。
 ①非勤務日に行事等が行われた場合は、再任用職員には出勤の義務がないこと を所属職員に周知徹底し、再任用職員が職場の同僚に気兼ねしないですむよう 「適切な配慮」のもとに学校運営をするよう管理職を指導すること。

 ②非勤務日に再任用職員が勤務せざるを得ず、振替が授業時間にかかる場合は、 充分な補充態勢をとるよう管理職を指導すること。

 ③非勤務日に勤務して「公務災害」に該当する事由が惹起した場合、身分上通 常の職員と同じ扱いである事を確認すること。

 ④再任用短時間勤務職員が「介護休暇」や「病気休暇(休職)」を取得する場 合、身分上通常の職員と同扱いである事を確認すること。

 ⑤「週23時間15分勤務を希望する再任用職員は、原則3日間勤務である。4  日間勤務については、本人の了解が大前提であり、強制はない。」ことを校長 に指導すること。
(2)再任用制度のルール作りについて
 ①再任用職員の配置においては、再任用希望者の意向・希望を正確に把握し、 本人の希望を最大限尊重すること。
ア.希望する勤務時間・勤務曜日
イ.希望する学校名(現任校での任用希望の有無)
ウ.今後取り組みたい職務内容、具体的な教育実践内容
エ.希望調査にあたっては、すべての職務内容を事前に周知すること。

 ②再任用者への、市独自の「意向調査」内容を充実させるとともに、校長への ヒヤリングにおいては、より正確にきめ細やかに聞き取りをされたい。

 ③再任用希望者(新規・更新)の意向に基づき、在任校と配置校の校長間のて いねいなすり合わせがなされるよう、指導されよ。

 ④再任用短時間勤務職員は、「再任用制度について」(平成26年10月1日 付)において、「4職務内容等」の項に『短時間勤務職員は担任等の常勤を前 提とした業務は担えない』に基づき、今後も原則に沿った配置を維持されたい。
 ⑤2018年度の人事日程の情報を提供されたい。

(3)免許更新制について
 ①退職者等非在職者が更新費用や更新講習の煩わしさから教員免許状を失効  し、人材確保が困難になる事態が起こっている。65歳の時点での失効が急増 する今後、高槻市下の学校においても深刻な事態になると予想されるが、この ことをどのように考えるのかお聞かせ願いたい。

(4)再任用職員の個別の問題については組合と協議すること。

D.労働安全衛生法の実施及び休憩の保障と勤務実態調査関係
(1)2018年度の産業医の健康相談の実績データを示されたい。学校長は毎月の80時間以上超勤の教員を把握し、翌月市教委に報告し、医師との面接を希望する者を市教委に報告すること。

(2)2018年夏の交渉で、市教委は調査機関から返信されるストレスチェックの「集団分析」について「集団分析を生かせるよう、校長会で話す」と積極的な回答をしたが、その後各校で集団分析の「活用」はどのように進んでいるか。

(3)労働安全衛生法改正後、一度はその実施を約束しながら、市教委は労働安全衛生組織を設置していない。これは労働安全衛生法違反であり、早急に労働安全衛生組織を確立されたい。

E. 評価育成システム関係
(1)評価育成システムは、教職員の自主性やモチベーションを下げ、ひとを育てるべき教育に悪影響を及ぼす。また授業アンケートは、高槻市保護条例・学習指導要領(中学校)にも違反している。評価育成システムに引き続き断固反対する。

(2)授業アンケート改悪について
 現場の声や現場の状況からみれば、教員の授業力向上は、授業アンケートをやらなくても改善することが可能である。また、授業アンケートを廃止すれば、準備や集計等にかかる時間をなくすことでき、業務削減となる。市教委は、市教委の主体性を持って「授業アンケート廃止」を府教委にあげ、業務削減の一端となるようにされよ。

(3)評価は、勤務時間内の事由のみであることを確認されよ。

(4)評価育成システムに関わって問題が生じた場合、随時組合と協議をすること。

F.勤務場所を離れた研修について
教育公務員特例法22条2項の「勤務場所を離れた研修」について、長期休業中において今後も変更がないことを確認されたい。また、それ以外においても変更がないことを確認されたい。

G.週休日服務の振替に関して
 2004年度大阪府「週休日における教職員の教育活動等に係る服務の取り扱いについて」の通知の運用については、2017年1月31日の交渉の場で確認された、以下の(1)~(6)までの再確認をされたい。(7)については、今年度11月より実施されている出退勤調査(「週休日に行われた教育活動等」も勤務時間としてカウントする)との整合性において、確認されたい。

(1)業務の拡大につながらないこと。

(2)一方的に命じるものではなく、参加者の同意が必要であること。

(3)「週休日に行われた教育活動等」については、別の日に振り替えられねばならないこと。

(4)「週休日における教育活動等に係る実施報告書」の作成・管理の徹底をはかり、事前に振替日程の設定が確実に為されること。

(5)対象となるのは教職員(講師も含む)であり、非常勤講師も含めて、この制度を管理職に都合良く利用させてはならないこと。

(6)これに関わる服務が週休日(非勤務日)においてである以上、「評価・育成システム」の「評価」対象ではなく、システムとは無関係であること。

(7)「週休日に行われた教育活動等」は、2016年度11月より実施されている出退勤調査において「勤務時間」としてカウントすることになっている。従って当該日には出退勤調査に打刻し、出勤簿に捺印すること。

H.宿泊を伴う学校行事に関わる勤務時間の割り振りについて
(1)1泊2日の宿泊行事の「勤務の割振り変更」は、1日の「勤務を要しない日」と1回の「半日勤務日」とする(合計は1.5日)。さらに場合によっては2日の「勤務を要しない日」の割振り変更もあり、という前回の確認を再確認されたい。
(2)市教委は、各校で休憩時間を明示するよう校長会で周知しているという事であったが、実際に各校でどのように明示されたか等については把握していないというのは、無責任である。以下の点について、責任をもって把握されたい。

(休憩時間について)
 ① 休憩時間の明示は書面で出さなければならないことを校長に指示し、各校 の明示方法を確認すること。

 ② 休憩時間の明示内容を把握し、どの時間に当てたのか明らかにすること。

 ③ 休憩時間の取得状況を把握すること。取得できなかった場合の措置につい ても把握すること。

(勤務時間の割振りについて)
 ④ 別の勤務日への割振り変更の取得状況を確認すること。

(3)「勤務時間の割振りに関する実態調査」を実施し、労基法違反の勤務実態がないか精査すること。

(4)児童生徒の安全確保を第一に、労働基準法に基づく適法な休憩時間を付与するために交代勤務が可能な引率人員の増員をはかること。

I.学校警備員の配置について
学校警備員配置に対する2019年度の方針を明らかにされたい。また、夏休み5日間の水泳指導日の配置を確認されたい。

J.夏期休業中の勤務について
教職員の夏期休業中の勤務については、従来からの市教委回答「格段の理由が無く勤務を強制すべきものではない。また、『日直・宿直』の復活ではない。」を再確認されたい。

K.施設一体型小中一貫校について
 ①前回の交渉では、平成28年度に答申が出て以来、研究・視察をしているが 進捗はない、という回答であった。施設一体型小中一貫校について、現在の進 捗状況を述べられよ。また各職場で情報を共有できるようにされよ。

 ②同一貫校によって、勤務条件の変更を伴う場合は、組合との協議なしに導入 を進めないこと。

L.日の丸常時掲揚について
 高槻市教委は、日の丸常時掲揚に際し、「そこにポールがあるから(揚げる)」と言った。では、「そこにあった」ブロック塀に対して、高槻市教委は何をしたのか?危険性を指摘されながら法定点検をすり抜け、かけがえのない児童の命を奪う結果を招いた。法的根拠のない日の丸常時掲揚を行う一方、児童の命を守る法定点検を無視するという市教委の根本的欠陥は、許されるべきではない。
 ただちに小学校での日の丸常時掲揚をやめること。

M.学校環境衛生について
 高槻市内の教育関係諸施設において、安全な環境が整えられているのか、次の点についてデータ等を示して明らかにされたい。
(1)2018年度に校舎の老朽化対策がなされた学校名と、2019年度の計画を示されたい。また、ブロック塀事故後、老朽化対策の見直しはあるのかお聞かせ願いたい。

(2)少人数授業教室、家庭科室等の特別教室に、エアコンを設置されたい。また、2019年度理科室へのエアコン設置計画を明らかにされよ。

(3)特別支援教育関係
・プレイルームにエアコンを設置されたい。
・必要な学校にエレベーターを設置されたい。

N.休養室関係
(1)職員の健康を守るため、エアコン未設置 の休養室に早急にエアコンを設置すること。

(2)更衣室を男女別完全別室に改善されたい。
 休養室は、体操服に着替えたり洗濯したりする所ではない。休養ができなければ役目を果たしている事にならない。また、教員の健康を守るために学校の施設を改善するのが教育委員会の仕事ではないか。その仕事に真摯に取り組まれる事を強く要求する。

O.組合事務所
 組合結成以来、長年に亘り組合事務所の貸与を求めてきたが、未だ具体的措置がない。他組合同様に組合事務所を至急貸与されたい。こ の市教委の対応は組合差別と考える。

P.その他

以上
<おわりに>
○ 免許更新制は終わった?
 私の年齢から免(長谷川)許更新制が始まった。不条理最悪の一言だ。◆先月11月、全学労組は文科省と交渉を行った。免許更新制も項目の一つだった。やけに愛想の良い官僚がやってきた。免許更新しなくても3年間は仮免で良いと言う。「勿論その間に講習を受けて頂きます」「じゃ、3年になる直前に辞めて、もう一度働き始めるって事は可能?」「・・できます。」「エーッ!?」◆ブラック企業である公立学校は人手不足が続く。東京都は講師を配置した上で教員がまだ200名足りないという。(高槻市も産休講師が見つからず、2クラス 教えている担任がいる。)圧倒的な教師不足の中、「免許がないとダメ」と言える状況ではない訳だ。官僚のニコニコ顔の背景はこういう事だった。もう終わってる、免許更新制。◆66歳になったら再度講習を受けねばならなのかと思っていたが、誰が受けるか!と嘯き議員会館を後にした。(長谷川)