学校から

教科書問題の情報公開・審査請求の結果(大阪府・高槻市)

2018年11月6日掲載

 これまで教科書問題に関して、部分公開(大阪府教委)、あるいは文書不存在(高槻市)で公開がされなかったため、2件の審査請求(異議申立)をしたが、その審査請求に対して、情報公開審査会の答申と教育員会の裁決が出たのでその報告をします。

 まず教科書採択不正問題につい、私の公開請求に対しての大阪府教委の部分公開決定への審査請求の結果です。大阪府情報公開審査会の答申(3月30日)は「本件審査請求の対象となった行政文書の部分公開決定において、公開しないこととした、調査等の対象となった者の氏名及びこれらを特定し得る次の事項、「所属学校名」、「事件発生及び経過に係る月日」「現職位」、「採択に関与する具体的立場」のうち、大阪府情報公開審査会が「公開すべきと判断した部分」について、公開する。」というものであった。答申は基本的に当局(府教委)の決定を容認したもので、一部公開された個人情報はあまり意味のないものだった。教科書採択に関わっての金品の収賄事件と言えるこの事案について、審査会の答申はその腐敗した教職員と教科書会社の関係にメスを入れないものであり、府教委は答申に基づき裁決(5月1日)をしたものであった。この決定に対して審査請求人として強く怒りを感じた。
 しかしながら、情報公開において部分公開された文書を詳細に分析することによっても、その収賄の構造が以下の様に明確になり、審査請求は意義があった。
1)教科書会社と教員の関係、金品の授受の動きが具体的に明らかになった。
2)府教委に処分を受けた教員が採択に関与するどの立場にあったか(調査員、選定委員)、また教科においてどのような有力な立場にいたか、校長で採択に関与した者がいたこと等が浮かびあがった。
3)教科書採択の責任者である教育長が教科書の見本本(白表紙本)を教科書会社から提供を受け、教科会社と応接していたことが露見した。そのうち育鵬社の白表紙本の提供を受けた教育長(摂津市、貝塚市)の特定ができた。
 以上のように情報公開及び審査請求はやって見て、今まで影に隠れて見えなかった部分を白日のもとにさらすという意義が大いにあった。

 もう一つの審査請求は、2017年の小学校道徳教科書採択に関わって、採決に向けての教育委員の学習会である教育委員協議会(連絡会)議事録の公開請求に対して、市教委が文書不存在を理由に非公開決定をしたものである。元々この案件は教科書問題を考える北摂市民ネットワークの公開質問状に対して、高槻市教委が議事録が存在すること、請求があれば公開すると回答したことに始まっている。(この回答に関して、私の公開請求があった時、市教委は会議録が存在せずとする「謝罪文」を寄こしている。)そのため本件は文書不存在に異議申立し、あらたに文書作成し、公開すべきとしたものである。
 審査会の答申(8月27日)は、本件文書の存否と公開請求の対象となる公文書の範囲について次のように見解を述べる。本件文書の存否について答申は、「教育委員会における連絡会の位置づけやその内容のほか、特定団体からのアンケートに対し、議事録を作成しているとした当初の回答を誤りだとして、事務処理ミス等報告書を作成し、市ホームページで公表した事実も勘案すれば、連絡会の議事録を作成していないという処分庁の主張も首肯できる。」とする。また公文書の範囲について答申は、「条例上の公開請求制度は、公開請求の時点で処分庁が現に保有している公文書を、そのままの形で公開することを求める権利を認めるものと解すべきなのであって、処分庁に対し、公開請求の内容に合致する文書を新たに作成して公開することを求める権利まで認めるものではないのであるから、公開請求に係る公文書を保有していないとして本件決定を行った処分庁の対応は、その限りにおいて妥当である。」とする。このように答申は当局(市教委)の答弁を全面的に容認した。答申の末尾には、「なお、本件審査請求が本件決定を不服としてなされたものである以上、当審査会は審査庁の諮問に基づき、本件決定の違法性及び不当性を審査するのであるのであるから、審査請求人の求めに対し、任意の対応として文書を作成すべきか否かを判断することは、当審査会の職掌ではない。」とまで書く。以前教科書採択過程が採択まで「全面非公開」であった状況に対し、高槻市の審査会が「全面公開」答申(2012年7月14日)を出したが、その審査会と同じ審査会とは思われない。その後、当局は答申を受け、裁決(9月19日)を行った
 以上の様に高槻の審査請求は不調に終わったが、公開請求と審査請求の過程で市教委当局とのやりとりが出き、教育委員連絡会が定例教育委員会議の後に設定され、事務連絡しか行われておらず、他市では取り組まれている採択に向けての教育委員の学習会が高槻市では行われていない実態が明らかになった。つまり教育委員の教科書に関する学習が個人に任されており、採択のために教育委員の学習会が行われておらず、高槻のの教科書採択が市教委事務局主導で行われてきたという悪しき実態が明らかになった。他市では(特に大阪市教委では)、今回問題になった教育委員協議会の議事メモが公開されているので、ねばり強く公開を迫って行く必要があると考える。
(松岡)