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高槻AETの闘いを追って

2017年5月3日掲載

(北大阪合同労働組合「北合同ニュース」から抜粋)

*2016年10月14日
大阪府労働委員会が高槻市の不当労働行為を認め、救済を命令
 2015年3月19日、高槻市教委は、各学校で1年間英語を教えてきたAET(英語指導助手)のひと達を卒業式に出させない措置を取りました。この件は大阪府労働委員会に持ち込まれ、審議を経て、10月14日付で「高槻市の行為は不当労働行為である」との、救済命令が出されました。
 この救済命令には、際だった特徴が2つあります。
 一つは、この卒業式前日、3月18日に開催された高槻市議会本会議での市側の発言(教育委員会幹部の答弁)そのものが、不当労働行為と認定されたことです。
  (以下6行、「命令書」3頁から抜粋) 
ウ、 平成27年3月18日の高槻市議会本会議場において、AETの卒業式についての質疑が行われた。この質疑において、市教委教育部長樽井弘三(以下「樽井部長」という)は、AETを卒業式に招待することが何らかの混乱を生じさせることになるという憂慮を完全に排除することはできず、卒業式への招待について慎重に対応するよう小学校校長らに指導助言することは当然のことと認識している旨答弁した。
 地方自治体の幹部が公然と違法行為を行ったことになります。
 二つ目は、「労働委員会に申し立て(*)を行ったこと」を理由にあげてこの卒業式から排除の措置が取られた、という点です。

*)労働委員会に申し立て・・(解説)

◆2015年3月、アシスタント・イングリッシュ・ティーチヤー(AET)・ スーパーバイザーのDさんと、高槻市の姉妹都市トゥーンバから都国際交流員としてやってきたAET達8名を解雇した事件。市は解雇理由を「H27年度は全て業者派遣とする為、AETとAETスーパーバイザーは不要」とした。
◆Dさんは、高槻市在職11年。日本の永住権も取得している。教育センターに出勤し、多くの学校現場に足を運ぶ毎日を送っていた。雇い主・高槻市教育委員会は、社会保険、厚生年金、介護保険など一切の福利厚生に加入せず、国・府市民税のみ源泉徴収していた。不当な扱いに気付いたDさんは待遇改善を求めが市教委は無視。10年を経てDさんは組合に入り、市教委へ 待遇 改善を求めた経緯がある。
◆AET8名は、市が指定したマンションに 住み続けていたが、劣悪な居住環境でトラブルが絶えなかった。病気になり 救急車で学校から運ばれたAETもいる。
◆AET(ゼネラルユニオン組合員)達とD組合員(北合同)は、3月11日付で、大阪府労働委員会へ不当労働行為(不当解雇)の訴えを起こした。少しでも法律を知っている経営者であれば、こんなことはまず行いませんし言いません。高槻市はよほど図太いのか、よほど法律に無知なのか、あるいはその両方なのでしょう。

*2016年11月15日
 府労委の救済命令決定に対し、高槻市当局は、大阪地方裁裁判所へ決定を取り消す裁判を提起しました。通常は、府労委の決定が不服な場合、中央労働委員会に「上訴」するのですが、それをすっ飛ばし司法判断を仰ぎました。
 
*2016年11月30日(高槻市議会本会議)
 府労委の上記「不当労働行為」認定に対し、高槻市がその取り消しを求めた「大阪地裁への訴訟提起市長専決処分」に議会同意を得る議案が出されました。
 反対意見は、高木議員、川口議員、北岡議員、吉田議員、4名の共産党議員合計8名。出た反対意見は「府労委に続き中労委という枠でなぜ続けないか」「労働委員会や裁判で争い続けるのは税金の無駄遣いではないのか」等、穏当な意見であったそうです。教育委員会は、これらに何一つまともに答えることができませんでしたが、結果は8対26で訴訟すること(賛成)になりました。

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 主観かもしれませんが、市は自分達から始めた争いに(訳のわからない)メンツをかけているような気がします。Dさんがプロデュースし、トゥーンバのAETのみなさんが活躍した楽しい英語の時間をなつかしく想い出します。彼らは職場の大事な仲間ではなかったでしょうか?私は彼らに何ができるのか、問い続ける日々です。これからも彼らのたたかいを追い続けたいと思います。
(長谷川)