学労ネット

「君が代」不起立を唯一の理由とした再任用取消の撤回を求める裁判

2017年5月3日掲載

いよいよ 5月10日が判決!
学校労働者ネットワーク・高槻(山田 肇)

証人尋問で「君が代」不起立による再任用取消の不当性が明らかとなる

 2012年3月の卒業式での「君が代」不起立を唯一の理由とした再任用取消の撤回を求める裁判の証人尋問が昨年2回あり、11月15日は、当時の高槻市教委・教育指導課長の有馬氏と府教委の大崎氏・田井氏への尋問、11月24日は本人尋問でした。有馬氏への尋問では、学校労働者ネットワーク・高槻の組合員4名に対してのみに狙い撃ちで職務命令が出されたことや、他の組合に所属している教職員に関しては、卒業式の「君が代」で起立すると言明しなくとも、職務命令を出していないことが明らかになりました。私も有馬氏に質問し、希望の杜施設内学級での私の勤務は「熱心であった」という証言を得ました。つまり、山田は「熱心」に勤務し「勤務実績は良好」であったのに、「君が代」不起立のみをもって「勤務実績が良好でない」として合格していた再任用を取り消されたことを、有馬氏は証言したことになります。 
 府教委の大崎氏・田井氏への尋問では、今後の卒業式・入学式の「君が代」で起立斉唱すると誓約しないかぎり、つまり、「君が代」の「踏み絵」を踏まないかぎり、府教委は再任用しないことが明らかとなりました。これは、「君が代」不起立だけで「勤務実績が良好でない」と判断し、再任用を取り消したのは裁量権の逸脱濫用で違法だとした昨年の東京地裁・高裁の判決に大きく反することを府教委がやってきたことを、府教委自らが認めたということです。

 私への本人尋問では「日の丸」「君が代」に反対する理由を整理して言うとどうなりますか・・・という質問が永嶋弁護士からありました。その質問に対して、私は「『日の丸』『君が代』は侵略戦争の旗と歌です。『日の丸』の旗を掲げ『君が代』を歌うことは、日本がやった侵略戦争が間違っていなかった、正しかったことになります。子どもたちに、いいか悪いか、自分の頭で考えるようにと言ってきたのに、間違ったことを正しいとすることはできません。教育の根本に反することはできないという教師の良心から『日の丸』『君が代』に反対してきました。これが一つめの理由です。
 二つめの理由は、戦前の教師は、『日の丸』や『君が代』、教育勅語や修身で子どもたちを天皇の兵士として教育し、教え子を戦場に送り出しました。『日の丸』を掲げ『君が代』を歌うことは、教え子を戦場に送ることにつながります。教え子を戦場に送らないという教師の良心として、『日の丸』『君が代』に反対してきました」と答えました。
 そして、最後に、私の処分は取り消されているのに、職務命令違反の「処分事由」は残ると言って、再任用取消は撤回されていないことの不当性、また、私の37年間の教育活動や、希望の杜・施設内学級での7年間の“学校をつくる”取り組み、それらの「勤務実績」について何ら考慮せずに、「君が代」で立つか座るかで「勤務実績」を判断し、「君が代」不起立のみで「勤務実績が良好でない」として、再任用を取り消されたことの不当性を訴えました。

内藤裁判長は文書提出命令の申立を却下し、2月9日、強引に結審

 私の再任用はいったん合格していたのに、「君が代」不起立の処分の後、取り消されました。それを再任用審査会で決めました。その時の「審査基準」を情報開示で請求すると、真っ黒黒すけの墨ぬりでした。飲酒運転や体罰で戒告の場合は再任用審査会に上程されず一括合格なのに、また、飲酒運転で停職3ヶ月の教員も再任用されているのに、しかし、「君が代」不起立で戒告の場合は再任用審査会に上げられ、二度と「君が代」で不起立しないという「踏み絵」を踏まないと再任用されない。いったい、どんな「審査基準」で再任用を決めているのか?「君が代」不起立者だけ、その思想を問題にして差別的に取り扱っているのではないか?府教委が隠す「審査基準」を明らかにして裁判せよと裁判所に文書提出命令の申立をしましたが、大阪地裁・内藤裁判長は却下しました。私たちは高裁に即時抗告しましたが、それも却下。次は最高裁に特別抗告します。その過程にあるのだから、2月9日で結審ではなく、もっと弁論をという申立を弁護士さんがして下さいました。(これが弁論をという第1の主張)

 結審せずに弁論をという理由は、まだあります。この間、明らかとなった次の事実からです。府立高校教員のAさんは、「君が代」で2回不起立し、2回戒告処分を受けました。そして、今年3月定年退職を迎え、再任用を申し込みました。しかし、府教委は校長に命じて、今後の卒業式の「君が代」の起立斉唱をふくむ職務命令に従うかどうか、彼らの言う「意向確認」、事実は「踏み絵」を踏むかどうかを迫りました。それも、「はい」か「いいえ」で答えよ!と。
 「君が代」で立つか座るかを聞くことは、「思想・良心」に関わる質問であり、差別選考につながる、「違反質問」です。(大阪府労働局・ハローワーク発行のパンフ「公正な採用選考のために」参考)それゆえ、Aさんは、「生徒の就職の面接でも、このような質問には答えないように指導しているので、答えることはできない」と答えました。そして、Aさんはこの「意向確認」の実施について、大阪府商工労働部労政課に訴えました。大阪府商工労働部労政課は、2月8日、Aさんに対する質問を「違反質問」と捉え、府教委教職員人事課に対し、「改善要請」を行いました。それゆえ、弁護士さんは、この大阪府商工労働部の「改善要請」も証拠として提出するので、裁判の審理の対象とし、結審ではなく、さらなる弁論期日をと主張して下さいました。(これが弁論をという第2の主張)
 これら二つの主張から結審ではなく弁論期日をという申立を却下し、内藤裁判長は2月9日で結審とし、「判決は5月10日1時10分」と告げるや、そそくさと法廷から消えました。いったい、どんな判決を出すつもりなのか?
 しかし、いかなる判決を出されようと、『「君が代」不起立は思想・良心の核心の表出』です。どこまでも闘います。ご支援をお願いいたします。