学労ネット

休憩時間訴訟 準備書面(11)

2007年8月22日掲載



平成16年(行ウ)第50号 賃金等請求事件
原  告  松 岡   勲  外4名
被  告  大  阪  府  外8名

準備書面(11)

2007年8月3日

大阪地方裁判所 第5民事部合議1係御中

原告   松 岡   勲
原告   家 保 達 雄
原告   志 摩   覚
原告   末 広 淑 子
原告   長谷川 洋 子

 被告山口正孝校長の第15回口頭弁論(本人尋問)での虚偽の陳述について以下に述べる。

 被告山口校長は2007年5月16日の本人尋問において、研修問題に関わる虚偽の陳述を為した。(以下の引用は同日の「本人調書」からである。)

 被告山口校長は、自宅研修に関する原告尋問の「それ(自宅研修)は今もありますね」に対して、「今はやっていないということで」と答えた。再度の原告質問の「なくなったのですか、この法律は(被告山口校長はこの法律の名前を答えられなかったが「教育公務員特例法」のこと)」に対して、同被告は「法律はありますよ。研修という部分についての法律はありますよ。自宅研修の意味内容を言ったんですよ」と答えた。さらに原告が「自宅研修はなくなったのですか」と尋問すると、同被告は「はい」と答えている。(13頁)これに輪をかけて、被告代理人は「異議あり。あなたの特例法のその研修と自宅研修というのは同一であるという前提で本人が答えているとは思えないんです」「宅研とかいうことをあなたが言われて、その宅研そのものがいわゆる研修、あなたの使った研修と同一かどうかということを本人が何も言っていない」(13頁)と発言している。この被告山口校長の証言は虚偽の陳述である。
 「教員の研修権」は、教育公務員特例法第21条の趣旨と同法第22条第2項の規定によって保障されている。それは提訴当時と現在も変更はない。(2002年、2003年当時は第20条2項であったが、現在は繰り下がって、「第22条2項」になっているだけである。)

教育公務員特例法
(研修)
第21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
(研修の機会)
第22条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
(以下、略)

 2002年4月から公立学校での学校5日制の実施にともない、文部科学省や教育委員会は、長期休業中の教員の勤務場所を離れての研修の取り扱いについて、一層厳密な手続きを取ることを求めた。
 高槻市は、これにともない教育公務員特例法の規定に基づき、教員が研修を申請するとき、長期休業前に「研修承認願」(甲97号証)と「研修計画書」を提出し、長期休業終了後に「研修報告書」を提出することになった(甲98号証)。これは提訴当時と現在も変更はない。
 「研修承認願」の「研修場所(連絡先)」の欄には、「1自宅 2その他(   )連絡先(   )」と記入することになっており、自宅研修はなくなっていない。また、今年(2007年)5月22日に行われた原告の所属している組合との市教委交渉でも「自宅研修はなくなっていない」と教職員課長が確認している。このように「自宅研修がなくなった」という証言は虚偽である。
 また、裁判長の質問の「今はもうきちんとその事情を聞いて、本当に必要ないかどうかを吟味した上で許可するということですね」「当時は、そこまでの必要性とかは吟味されずに自宅研修をしてたということですかね」に対して、被告山口校長は「はい」と答えているが、これについても事実と相違し、虚偽の陳述である。(16頁)
 研修をとる教員は長期休業前に「研修承認願」と「研修計画書」を校長に提出しなければならないが、校長は上記諸書類を吟味し、承認を検討する。長期休業終了後には承認印を押す。原告長谷川は、2002年度、2003年度に被告山口校長へ、研修承認願、研修計画書、研修報告書を提出し、同被告はすべて承認した。2005年、原告長谷川は現職場(高槻市立南大冠小学校)の志賀前校長に「なぜあなたの研修は自宅でなければならないのか」と尋ねられた記憶があるが、同被告からは一度もなかった。同被告が、原告の研修承認願、研修計画書、研修報告書を吟味し、承認した故と判断できる。上記の裁判長への同被告の発言が虚偽でないとすれば、同被告は、原告の2002年度、2003年の研修計画等の書類を吟味していなかったことになり、職務怠慢を問われる。
 また、裁判長の尋問の「そうすると、運用として、校長が自宅研修を認めることはまずないと、そういうことでしょうか」に、被告山口校長が「はい」と答えたことは、虚偽の陳述である。なぜなら、原告らは(定年退職をした原告松岡を除く)2004年度以降も上記研修手続きにより自宅研修を受けているからである。

 原告らは、被告山口校長の陳述は「民事訴訟法第209条における虚偽の陳述」に当たり、「10万円以下の過料」に相当すると考える。

民事訴訟法(虚偽の陳述に対する過料)
第209条 宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、10万円以下の過料に処する。
(以下、略)

 以上のように、被告山口校長が、原告長谷川に係る「自宅研修」に関する問題で虚偽の陳述をしたことは明白である。すでに述べたように、原告長谷川は、長期休業中の研修を申請するにあたって、必要な手続を適正かつ十分に満たしており、その点、いささかの非も認められるものでないことは明らかである。したがって被告山口校長の陳述については、事実に反しているというだけではなく、虚偽の陳述によって、原告長谷川についての誤った心証形成を図ろうとする意図すら感じざるを得ないものとなっている。
 よって、原告らは、被告山口校長の研修問題についての陳述が虚偽であることから、同被告「本人調書」の該当部分(12頁2行目~16頁24行目)を削除するよう求めるものである。

以上