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「心の病」での休職教員、4000人を越える

2006年12月17日掲載

 教育基本法改悪の報道に埋もれてあまり目立ちませんでしたが、毎年公表される「教育職員に係る懲戒処分等の状況について」(昨年度分)が公表されました。注意すべき問題だと思いますので、紹介します。(一作)<新聞記事は転載禁止>

このうち、以下の分はPDFで掲載しましたのでご覧ください。

 >>>懲戒処分等の状況一覧(平成17年度)

 >>>分限処分の状況一覧(平成17年度)

 >>>分限処分(病気休職者を除く)の状況一覧(平成17年度)

 >>>病気休職者等の推移(平成8年年度~平成17年度)


 また、「懲戒処分に関する処分基準の作成及び懲戒処分の公表に関する取組状況について」も掲載されています。

 教職員の休職者数・精神性疾患休職者数が懲戒処分の統計と一緒に発表されるのをいつも不思議に思っていたが、病気休職は分限処分に扱われるからだと分かる。この統計と文科省の「人事行政状況調査について」とを併せて読むと教職員の置かれている職場環境のさまざまな問題が浮き彫りになると思う。

「心の病」での休職教員、4000人を超える
(読売新聞 2006年12月16日)

 うつ病などの精神性疾患で昨年度に休職した公立学校の教員は過去最多の4178人となり、初めて4000人を超えたことが15日、文部科学省のまとめでわかった。

 前年度の3559人から一気に619人増え、13年連続の増加となった。文科省では「保護者や子供、同僚との人間関係に悩む教員が増えている。相談体制を充実させたい」としている。

 精神性疾患で休職した教員の数は、1111人だった1992年度以降、毎年増え続けている。昨年度は病気休職者に占める割合も59・5%と過去最高となった。東京都教職員互助会「三楽病院」の中島一憲・精神神経科部長は「学校は今、慢性疲労状態。肉体的な疲れにストレスが加わり、だれもがうつ状態になりかねない」と警告している。同病院には、昨年度の1年間に、約450人の教師が精神的なストレスを訴えて訪れたという。

 一方、昨年度にわいせつ行為やセクハラで懲戒処分を受けた教員は124人で、6年連続で100人を超えた。このうち警察からの連絡で発覚したケースが37人に上った。また、児童生徒の個人情報を不適切に取り扱ったとして処分を受けた教員数を今回初めて集計したところ、自宅にパソコンを持ち帰ってデータを流出させたなどとして228人が処分されていたことが分かった。

教職員処分4000人超 「信頼回復」遠く
(産経新聞 2006年12月16日19:54)

 平成17年度に懲戒処分や訓告などの処分を受けた教職員が前年度比385人増の4086人に上り、過去10年間で3番目に多かったことが15日、文部科学省のまとめで分かった。このうち、交通事故での処分は218人増の2406人となり過去最多。「公費の不正執行や手当の不正受給」を原因とする懲戒処分者(35人)も、大阪府教委で大量処分があった影響を受けて過去10年間で最も多かった。

 監督責任を問われた校長や教頭らは919人に上り、処分者数の総計は5005人となった。このうち、法令違反に問われて懲戒処分となったのは、監督責任を問われた68人も含めると、計1323人に上った。

交通事故最多 金絡みも増加

 交通事故で処分を受けた2406人のうち、懲戒処分は4分の1にあたる616人。飲酒運転が119人と2割を占め、全員が減給以上の厳しい処分となった。懲戒処分者数が160人で全国最多の北海道教委は「スピード違反30キロ以上で戒告、40キロ以上で減給と厳しく処分しているため」と話す。

 公費や手当の不正執行・受給も相次いだ。大阪府では、マイカーや自転車で出勤していたのに電車の定期代を請求し、計640万円を不正受給したとして、府立養護学校の教職員19人が戒告処分を受けた。茨城県では教職員住宅の自治会費約290万円を不正流用、栃木県では部活動の交通費など約23万円を着服したとして、それぞれ教職員が懲戒免職となった。

 児童生徒の成績が入ったパソコンを盗まれたり、ファイル交換ソフト「ウィニー」でネット上に個人情報を流出させた「個人情報の不適切な取り扱い」での処分者も228人に上った。

 一方、病気休職者は7017人で12年連続で過去最多記録を更新した。このうち6割を占める精神性疾患が初めて4000人の大台を突破し4178人で、13年連続最多となった。

 高倉翔・明海大学長(教育行政学)の話「教員は揺るぎない信頼確保が求められており、処分数が高水準なのは言語道断だ。教員は専門性、適格性、信頼性の3点が求められるが、近年は保護者の目も厳しくなり、信頼性の比重が高まっている。教員の自律性や規範意識を高める制度設計が必要だ。教員免許更新制を導入する際には、時代に応じた資質のリニューアルにとどまるのではなく、踏み込んだ対応が求められる」