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教員給与削減の2つの方向

2006年6月18日掲載

 教員の給与削減の記事を見ると、あっと驚く。どうも2つの方向が検討されているようだ。
 ひとつは教員給与優遇策として1974年に成立した人材確保法案財源(当初は10%の上乗せだったが、現在は4%程度の上乗せ。「毒饅頭論」で有名。充分に毒がまわったということか。)を2%~4%削減する方向。
 もうひとつは教員給与から時間外手当支給を排除することを狙った「給特法」(教育職員の給与等に関する特別措置法)財源(教職調整額4%)を廃止し、教員にも時間外手当を導入するどうかの方向。限定4項目(1、生徒の実習に関する業務 2、学校行事に関する業務 3、教職員会議に関する業務 4、非常災害等やむを得ない必要な業務)に限って時間外勤務を容認、それ以外は超勤を命じないとされたが、実際には無限定な超過勤務が激増している。どっちが損か得かで文部科学省が政策立案の検討をしているという。教員の超過勤務実態を憂いての議論ではなく、財源をどう確保するのが得策かというあきれた論議だ。そのために40年間放置していた教員の勤務実態調査をするという。

*新聞記事を読んで気がつくのだが、記者は人材確保法と給特法が同じ4%の上乗せであるため、両法を混同しているのがおもしろい。(以下、新聞記事のため転載禁止)

教員給与の優遇見直しを指示 自民チームに中川政調会長
朝日新聞 2006年05月18日06時21分

 自民党の中川秀直政調会長は17日、歳出改革に関する党プロジェクトチーム(PT)主査の河村建夫元文科相に対し、公立小中学校の教員給与を一般の地方公務員より優遇している現行制度の見直しを指示した。優遇制度の根拠となる「人材確保法」の廃止も検討する。同法廃止による歳出削減は国と地方合わせて約2000億円になる見込み。6月中に策定する政府の「骨太の方針」に反映させることを目指す。

 人材確保法は故田中角栄元首相の指示で74年に成立した。財務省によると同法によって教員給与は、一般の地方公務員より平均して4%程度優遇されているという。

 同法の見直しについては、政府も昨年末に閣議決定した「行政改革の重要方針」に廃止も含めて見直す方針を盛り込んだ。自民党が足並みをそろえたことで現実味を帯びてきたが、文教族議員らの抵抗が予想される。

教員給与下げ幅、2~4%で調整 自民
朝日新聞 2006年05月29日16時37分

 自民党の「歳出改革に関するプロジェクトチーム(PT)」は5月25日、財政再建に向けた歳出削減策の一つとして、公立小中学校教員の給与水準を引き下げる方針を決めた。引き下げ幅は平均2~4%で調整しており、生徒・児童数の減少に伴う定員削減と合わせ、今後5年間で数千億円の人件費削減を目指す。

 教員の給与は「人材確保法」に基づいて一般の地方公務員より優遇されている。PT主査の河村建夫・元文部科学相は25日、「教職員給与の優遇幅を圧縮する方向。退職金や年金も今のままでいいのか」と述べ、給与の優遇を反映した退職金や年金の水準についても引き下げを検討する考えを示した。

◆教育など4分野の主な歳出削減項目
【教育】
・教職員の給与水準切り下げ
・学生を確保できない私学への助成カット
・国立大学への運営交付金削減
【政府の途上国援助(ODA)】
・無償援助から融資、債務免除への切り替え
・援助先の現地企業活用によるコスト削減
【防衛】
・談合防止措置による施設整備費削減
・陸海空自衛隊の共同調達によるコスト削減
【エネルギー】
・電源、石油の特別会計予算の見直し

公立校の教員給与、見直し 時間外の導入、能力型も検討
朝日新聞 2006年06月11日09時12分

 文部科学省は、公立学校の教員給与制度を、全面的に見直す方針を固めた。時間外手当の導入や、年功主義をやめて能力・業績を本格的に給与に反映させることなどを検討する。政府の歳出削減に対応すると同時に、教員評価制度と組み合わせメリハリのある処遇で教員の意欲を引き出すのがねらい。まずは今月末から勤務実態把握のため小中学校の教員約6万人を対象にした調査を開始。省内での作業後、財務省などと折衝し、年度内に結論を出す。

 見直しの対象は、公立の幼稚園や小、中、高、養護学校などの教員約100万人。

 政府の歳出改革に伴い昨年末、教員給与のあり方を検討することが閣議決定された。5月に成立した行革推進法でも、教員給与の見直しについて、08年4月をめどに制度改正することが規定されている。

 教員の給与は、74年に施行された人材確保法で一般の公務員より優遇するよう定められている。現状では、「時間外手当」に相当する「教職調整額」(基本給の4%)が、基本給の一部として、校長、教頭を除く全員に毎月支給されている。これを反映して、一般の公務員より、期末手当や退職金、年金などが上積みされている。

 単純比較は難しいものの、文科省は年齢や学歴が同一条件なら、一般の地方公務員(行政職)との差は月額で「2%程度」とみている。

 文科省は、教員それぞれで異なる残業時間を考えずに一律支給を続ければ、一般公務員との比較で公平性を欠くと判断。教職調整額を廃止して、時間外手当に切り替える方向で検討している。各教員の超過勤務時間を確定する方法として、タイムカードの導入などを想定している。

 教員の能力・業績も本格的に評価し、新たな職制の創設や、基本的に4級制となっている給与区分を細分化することなどで、早期昇給の処遇をする仕組みも検討している。

 文科省によると、教職調整額の総額は年間約1800億円。時間外手当を導入した場合、広島県の調査をもとに同省が試算すると、合計約3290億円増え、高校や養護学校なども含めると、さらに膨らむ。実際どの程度になるのか、文科省は今月から実施する勤務実態調査で把握する。

 今後、歳出額をどの程度削減するのかなどをめぐり、財務省などと厳しい折衝が必要になりそうだ。