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休憩時間訴訟 準備書面(8)

2005年8月17日掲載

平成16年(行ウ)第50号 賃金等請求事件
原  告  松 岡   勲  外4名
被  告  大  阪  府  外8名

準備書面(8)

 2005年8月12日

大阪地方裁判所 第5民事部合議1係御中

原告   松 岡   勲

原告   家 保 達 雄

原告   志 摩   覚

原告   末 広 淑 子

原告   長谷川 洋 子


《被告大阪府の準備書面(6)への反論》

 被告の準備書面(6)の「1 はじめに」において、原告らの主張を「これまでの抽象的な法解釈等の論議に終始するものであり」と決めつけ、「原告らの勤務の実情に関する具体的な主張は、何らみられないままである」と論難する。
 しかし、原告らは、これまで、訴状(2004年4月21日)、陳述書(同年6月7日、8月11日、甲28号証)、甲1号証、準備書面(2)(2004年10月20日)、さらに、準備書面(4)(2005年3月7日)と準備書面(2)の添付資料1~4、甲61~65号証等において、被告への反論とともに現場の実情を具体的に述べてきた。(また、準備書面(7)(2005年8月1日)の9頁以降では、実情を基礎にした具体的な反論をした。)

 こうした、原告らの具体的な実態をふまえ、以下、反論する。

1 休憩時間について(一斉付与について)
 原告らは、一斉付与による休憩時間の割り振りを、「形式的」に与えられているので、一斉付与については、原告らの休憩時間と関連性はない。ただし、子どもの指導・授業の準備等から自由に休憩時間を利用できていないと主張している。

2 休憩時間の変更について
(1)被告は、市教委規則第4条(丙1)を引き、「校長は、学校運営上必要があると認める場合は、個々の教職員の申出があれば、当初割り振られた休憩時間を(当該日の)他の時間に変更することができると解すべきである」(同準備書面3頁15行)と述べる。
(2)しかし、こうした、当日の休憩時間も、日常的に校長が恣意的にできるとすると、逆に、年間の休憩時間の割り振りも無意味になる。こうした「変更がある」としてもそれは、緊急かつやむを得ない事態、あるいは行事等などで学校運営が通常とは異なる場合の「特段の事情のある場合」と理解するのが常識であり、日常的に休憩時間の利用が変更されるのは、著しく教職員の健康と福祉を阻害する。
(3)また、特段の事情もないのに、休憩時間と時刻が校長により(本件では、変更をそのつど校長より明示されていないまま)変更されるとすれば、原告らは計画的に休憩時間を自由に利用することはかなわず、休憩時間の不完全付与に当たると言わざるを得ない。前述したように、労働基準法は、最低基準であり、それを下回ることを、市教委規則をたてに「休憩時間は変更できる」とするのは間違いである。
(4)被告は「乙20」の解釈例規則を取り上げて、「休憩時間をその日の別の時間に振り替えることは労働基準法の規定に反することなく」と述べているが、この職種は来客当番の事例であり、「交代制」が明確に労使で合意(労基法36条の協定等で)され、明示命令がなされている場合と考えられる。これをもって原告らの、息つく暇もない長時間連続労働と比較するのは適当でない。
(5)また、「『相当の期間』の規定を根拠に、休憩時間の変更が『特段の事情』のある場合に限られるとするのは、全く根拠のない主張である」(被告準備書面(6)4頁4行)と述べるが、規定は「相当の期間」であり、「相当の時間」ではない。被告は「相当の期間」を故意に誤って解釈したものである。

3 「第2」の「反論」の項の主張への反論について(黙示の命令について)
(1)被告は、原告らの反論について、再度「個々の実情に関して、具体的な主張立証は未だみられない」と述べるが、前述したように、原告らは今まで縷々、現状を論述しており、このような論難は、あてはまらない。
(2)被告は、「なお、解釈例規(乙20)は、当初割り振られた休憩時間が相当以前に決められたものかどうかに関係なく、当初割り振られた休憩時間の振替が可能であることを示している」(本準備書面5頁9行)と述べる。
(3)しかし、被告のあげた解釈例規は、「昼食時間中の来客当番」の件であり、「当番」労働である。当然、相当前もって計画するのが普通であり、雇用者はそれを明確に確認し、他のいつの時間に休憩時間を利用できるのか指示しているはずである。当該日にいきなり割り振られるとは考えにくい。万が一、そのようなことがあれば、そのときは、特段の理由のある場合に限られよう。
(4)被告は「限定4業務に従事する場合で臨時かつ又は緊急にやむを得ない時に、休憩時間中に勤務を命じることは、法令上認められている」(被告準備書面(6)5頁13行)とのべるが、法令上は、原則として休憩時間中に勤務を命じることができないのである。原告らは、今回の争点である休憩時間について、児童生徒の生命に関わるような事態が起きたときまで、休憩時間を主張することは、当然であるが、考えてはいない。
(5)黙示の命令による労働時間を、原告らは「教職員が校長の指揮、命令下に拘束されている時間」と考えている。つまり、実際には、年度当初、あるいは、教育実施計画作成にあたり、明示の命令として、校長から「包括的な職務命令」が出されていると考える。
(6)原告らが具体的に述べてきているように、授業・生活指導・補充指導のように直接児童生徒と向き合う労働、その教育活動には不可欠・不可分なテスト作成・授業の準備等の労働、また、体育授業・作業活動における着替え・自己研修など労働力提供のための準備行為など、違いはあろうが、すべて労働時間である。現在は、割り振られた休憩時間にもそれに取り組まざるを得ないのである。したがって、被告らの休憩時間は命令下の労働時間である。
(7)それは、堺市教諭の過労死認定において、「自宅残業も公務」(甲25・26・32)と、大阪高裁が判示するように、原告らの休憩時間における労働も、労働時間である。

以上