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~裁判長のあたまんなか-はじめに結論有りき~北九州ココロ裁判判決一部勝訴!

2005年5月3日掲載

ココロ裁判の判決前日より福岡にわが全学労組の仲間たちが結集し、新鮮な魚とおいしいお酒で前祝いをした上で、4月26日の判決当日となりました。100名を越える傍聴者が参集し、傍聴は抽選となりました。運良く私と長谷川さんは抽選に当たり、福岡地裁301号法廷に入りました。

 ついに判決の言い渡しです。「被告北九州教育委員会が・・」と裁判長の声が大法廷に響く。「被告」から始まるときは「勝訴」です。(僕らの裁判の判決のために覚えときましょう)原告3名4件の「減給処分の取り消し」です。「やった!」場内はどよめき、大きな拍手が響きました。

 しかし、「原告らのその余の請求は棄却」と続き、そのあと、判決要旨の説明となり、「一部勝訴」であることが明らかになりました。

 帰ってきて、判決文を入手し、読みながら裁判長の頭のなかを想像しました。裁判長は「減給処分の取り消し」と「その余の請求は却下」という結論が先にあり、そこから「つじつまあわせ」で文章を書いているのだなと確信しました。(一定評価できる)「前段」と(それを否定して、被告側に組する)「後段」とを「しかし」でつないで「意味不明」の展開をするレトリックが随所に見られます。判決文にはこの国の裁判の「悪意」と裁判長の「保身」を感じました。ココロ裁判の判決の場に居合わせ、心して私たちの裁判をすすめていこうと覚悟ができました。

(松岡)



判決についてはすみたにさんの簡潔にして、要を得た評価で紹介にかえます。



学習指導要領を振りかざす教育行政に「歯止め」

ー指導という名の「不当な支配」を批判した福岡地裁判決ー



 この判決は、学習指導要領を振りかざして教育を「支配」する教育行政への「歯止め」となるという点で、大きな意義があります。

◆画期的な勝訴判決!!

 一度お役所が出した処分の取り消しを求める訴訟というのは、そもそもかなり困難なものです。特に、「日の丸・君が代」関係はなおさらです。

 あまりに行政の手続きがずさんな場合には取り消しというケースもありますが、今回は裁量権の逸脱として取り消されています。これは画期的です。

◆学習指導要領は大綱的基準に過ぎず、卒業式の細目に渡っての拘束力を持たない

 学習指導要領の拘束力を一定認めるとしても、では、いったいどこまでが許されるのか、という問題があります。久留米市・町田市の「君が代」声量問題にしても、結局、市教委の唯一の論拠は「学習指導要領」しかありません。各地で教育行政は、学習指導要領を果てしなく拡大解釈・適用してどこまでも強制を進めようとしてきました。

 本判決は、学習指導要領は大綱的基準であるとした上で、卒業式の細目にわたっての拘束力を持つものではないとの判断を示しています。これは、都教委の10.23通達(新実施指針)などを批判する内容となっています。

◆教育委員会の「指導」は校長への「不当な支配」に当たる

 教育委員会による指導は、国歌斉唱の方法を提示するにとどまらず、実施状況を監督するものであり、校長は従わざるを得ないという事実上の拘束を受けていたとし、このことは教育基本法10条1項の「不当な支配」に当たるとしています。

 東京都教育委員会は、事細かな実施指針を出すだけでなく、「祝意を表するため」と称して、各学校に指導主事を派遣し、校長・教職員を監視してきました。また、ここ数年、都教委は「校長のリーダーシップ」などと称して「校長権限強化」を進めてきました。しかし、その本質は、「職務命令書を出さなかった校長は呼びつけてわびさせるべき」という米長教育委員の発言に象徴されるように、上意下達の構造をつくりあげ、都教委の恣意を現場の末端まで貫徹させるためのものです。

 このような状況の中、校長への「不当な支配」を指摘したことは、重要な意味を持ちます。そして、このことは「日の丸・君が代」問題のみにとどまりません。

 近年、都教委は「改革」と称して、お仕着せの「特色」を各校に押し付け、次々と指導やら調査やらを現場におろしてきます。こういう状況への「歯止め」としての意味を持ちます。

◆減給処分は、著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱

 東京都では、同様の「服務事故」を起こすと、処分が加重されてきました。(公には言わないものの)「3回でクビ」などと教員たちを脅してきました。再雇用の人は、事実上の「クビ」となっています。一回ただ黙って座っていたというだけで、教職員としての全てが否定されるという理不尽なことが起こっています。

 現職教員へは、減給6ヶ月まで出されており、次は停職ではないかと懸念されています。このような状況の中、減給取消しの判決は画期的です。

 以上のように、ココロ裁判の原告らが切り開いてきた成果を共有し、この判決をそれぞれの現場で活かしていければと思います。

>>>ココロ裁判判決要旨 
http://blog.livedoor.jp/suruke/archives/20092664.html