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評価・育成システム(試行)の「育成シート」非公開決定の取り消し

2004年5月22日掲載

 非開示が決定され、十数名で意義申立中の昨年度評価・育成システム試行の「育成シート」について、「本件処分(注、非開示決定)を取り消し、非開示とした『育成シート』を開示する」という高槻市教育委員会の決定がありました。

 「育成シート」を1年目の試験的実施(2002年度)で開示させ、記述内容の一部訂正の獲得、2年目の試行(2003年度)では一度は非開示決定をしたけれど、それをくつがえして開示に変更、3年目の本格実施(2004年度)では大阪府教育委員会すでに開示の方向。これは教職員を評価する管理職にとってショックが大きいと思います。

 5月19日に今年度の評価・育成システム本格的実施に関する高槻市教委交渉があり、「府教委は今年度の『育成シート』を文書開示すると聞く。高槻市教委は一昨年度は文書開示をし、昨年度は非開示、今年度は開示することになると『みっともないことになる』けどどうすのか?」「昨年の市個人情報保護条例の改正で非開示決定を取り消すこともできることになっているが、どうするのか?」と問いただしたが、教職員課長補佐は「そいうこともあり、今、検討中です」と返答した。これはいけるなとの感触をもった。そして、5月19日付で「開示は5月20日以降」という決定。執拗にこだわってきた「育成シート」の開示の決定は気持ちよいものだ!

 この決定により、大阪府教委の文書開示の動きも加速されるだろうし(大阪府個人情報保護条例では府職員は開示請求できないことになっており、今年度に「文書開示」にするには「条例の改正」作業が必要で検討中とのことだ)、高槻市の教職員が昨年度分の「育成シート」をこれから「開示請求」すればかならず開示されるということだ。「育成シート」が今年度の本格実施でも開示されるわけで、管理職は「恣意的なこと」「批判にたえないこと」を書きにくくなるので、このシステムの形骸化がさらに進むと思われる。久方ぶりの快挙だったので、とってもうれしく思いました。



高教職第111-1号
平成16年5月19日

高槻市教育委員会
教育長 立石 博幸



異議申立てに対する決定について(通知)



 平成16年4月13日付けで提起された自己情報の非開示決定に係る異議申立てについては、平成16年5月19日高教職第111-1号により決定したので、決定書の謄本を送付いたします。
 なお、下記のとおり開示することとしたので併せて通知いたします。








1. 請求に係る自己情報の記録内容
平成15年度に実施された「教職員の評価・育成システの試行実施」の中の自己の「育成シート」

2. 開示日    平成16年5月20日(木)以降

3. 開示の場所  情報公開コーナー(総合センター1階)

4. 担当課 学校教育部教職員課(電話674-7633)



高教職第111-1号
平成16年5月19日

異議申立人様

高槻市教育委員会
教育長 立石 博幸


決   定   書



 異議申立人から平成16年4月13日付けで提起された、高槻市個人情報保護条例(昭和61年高槻市条例第41号。以下「条例」という。)第18条第1項の規定による自己情報の非開示決定処分(以下「本件処分」という。)に対する異議申立について、次のとおり決定する。



主       文



 本件処分を取り消し、非開示とした「育成シート」を開示する。



理       由



1 事実
 本件異議申立てに至る経過は、平成15年度に実施された「教職員の評価・育成システムの試行実施」に関し、異議申立人から平成16年2月18日付けで自己の「育成シート」(以下「本件シート」という。)の開示請求がなされ、これに対し、本件シートを開示することは、「評価者の公正かつ適切な評価を阻害するとともに、開示することにより、公正かつ適切な人事管理の執行の妨げになる」とし、条例第13条第3項第4号に該当するとして、平成16年3月3日付けで、本件処分を行ったものであり、異議申立人はこれを不服として本件異議申立書を提出したものである。

2 異議申立ての趣旨及び理由要旨
(1)異議申立ての趣旨
 異議申立てに係る処分を取り消し、当該情報の全部開示を求める。

(2)異議申立ての理由要旨
 平成15年度の試行実施においては、校長による「開示面談」で当該情報は口頭開示され、高槻市教育委員会による「評価に関する苦情相談」も行われており、「評価者の公正かつ適切な評価を阻害するとともに、開示することにより、公正かつ適切な人事管理の執行の妨げになる」とは言えない。

3 決定の理由
(1)大阪府教育委員会は、教職員の評価・育成システム(以下「本システム」という。)の定着を図るため、平成14年度の「試験的実施」を経て、平成15年度は「試行実施」と位置付け、本システムを実施した。この平成15年度のシステムは、「教職員の意欲・資質能力の向上、学校の活性化をめざした評価・育成システムの本格実施に準じて」実施し、教育委員会が定める「教職員の評価・育成システム試行実施要綱」及び「教職員の評価・育成システム試行実施の運用」に示す学校及び教職員を対象とし、評価結果の開示方法は、口頭による開示とされたところである(平成15年度育成者マニュアル)。
 これを受け、本市教育委員会は「平成15年度高槻市立学校「教職員の評価・育成システム」試行実施要綱」及び同試行実施の「運用」を定め、同運用(第5条第2項④)において、教職員(校長を除く)に対する評価結果の開示は、口頭によるものとした。
(2)その後、大阪府教育委員会は、平成16年度から本システムを本格的に実施するに当たり、本年4月16日開催の同委員会会議において、従前の「府費負担教職員の勤務評定に関する規則(昭和33年大阪府教育委員会規則第10号)」を廃止し、次の規則及び要領を制定した。
ア 府費負担教職員の評価・育成システムの実施に関する規則(平成16年大阪府教育委員会規則第13号)
イ 評価・育成システム実施要領
 本規則(第7条)は、「評価の結果は、職員本人に開示する」と規定し、その開示は「評価・育成シートの記載内容を開示する」(同要領第7)ことにより行うものとしており、これによりシートそのものが本人に開示されることとなった。
(3)本規則(第1条)は、「職員の意欲・資質能力の向上、教育活動等の充実及び学校の活性化に資することを目的」として、本システムの実施に関して必要な事項を定めるとしており、同第7条に基づくシートの本人開示はこの目的に資するものとなる。平成15年度の試行実施の段階においては、この本人開示は口頭によるものに止まっていたが、平成16年度からの本格実施に至り、シートそのものを本人開示することとなった。本件処分は平成15年度の試行実施に係るものであるが、平成15年度の試行実施シートは、平成16年度の規則シートと同一様式のものであり、本格実施に準じて作成された本シートの開示においても、規則シートの開示と同様の目的に資することができると考えられる。
 従って、異議申立人の本件シートを開示しても、本件処分において非開示の理由とした「評価者の公正かつ適切な評価を阻害するとともに、開示することにより、公正かつ適切な人事管理の執行の妨げになる」ことがないと判断される。

 よって、本件異議申立てには理由があるので、行政不服審査法第47条第3項の規定により、主文のとおり決定する。





    この謄本は、決定書の原本と相違ないことを証明します。
          平成16年5月19日
          高槻市教育委員会
          教育長  立石博幸