WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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インタビュー

少女たちの声を伝える「VOICES」編集長

橘 ジュンさん

  • 2010.10.25
  • 聞き手:竹内絢
  • 撮 影:落合由利子

橘 ジュンさん

大人になるって悪くないよ

 「街を漂流してる女の子も、心が漂流してる女の子も、苦しみながら、必死に生きようとしてる。居場所っていうのかな、自分の生きる場所を探してる」
 橘ジュンさんはこれまで多くの10代から20代の女性たちとかかわり、話を聞いてきた。耳を塞ぎたくなるような現実。彼女たちが抱えるひりひりとした痛みを一緒に感じてきた。彼女たちの声をそのまま伝えたいと、2006年にフリーペーパー「VOICES」を自費出版で始め、夫であり写真家のケンさんと二人三脚で、必死にお金を工面しながら続けてきた。当初は、渋谷のセンター街や歌舞伎町にいる「派手な子」ばかりを取材していたが、見た目では分からない傷を負っている女の子たちの存在が気になるようになる。
 「腕やスカートの裾をまくると傷だらけの女の子がいる。家や学校では真面目だけど、自分を傷つけずにしか生きられない子たちの声こそ伝えなきゃ」

 今、ジュンさんのもとには全国各地からメールやブログへの書き込みを通じた「SOS」が届く。直接会って話を聞きたいと思うが、距離的、経済的な理由で会えないことも多い。1日にやりとりするメールは100通以上。
 この夏に出版した『漂流少女』を読んで連絡をくれる女の子もいる。この本に登場するアイさんは、ジュンさんにとって忘れられない、大切な人のひとり。昨年再会した時、アイさんは妊娠していた。生活のためにギリギリまで街に出ていた彼女に、「無事に出産を迎えよう」とジュンさんは言い続けた。出産後、母子共の生活はかなわず、子どもは乳児院に。
 「〝どうせ私は育てられないんだ〟って語ってそうな背中を見て、追いかけることもできなかった。ケンとふたりで女の子をサポートしていくのは、難しいと思った」
 アイさんと出会って、話を聞いて伝えることだけでなく、行き場のない女の子のために安心して過ごせる場所が欲しいと思い始めた。一度立ち止まって、本当はどうしたいのかを考えられる場所。夜中、繁華街をぶらぶらしている女の子たちが危険な目に遭ったり、一晩にして人生がころころ変わってしまうケースをいくつも見てきた。
 「セックスではない寄り添い方、求められ方があるんだよ、って伝えたい」。そうした思いがNPOやネットカフェの設立につながる。

 ジュンさんは「アウトロー的な生き方をしている、不器用な女の子たちが好き」という。「死」がすぐそばにある彼女たちに「大人になるってそんなに悪いことじゃないかも」と思ってもらえるような出会いをつくりたいと、活動を続けてきた。

続きは本誌で...


たちばな じゅん

1971年千葉県生まれ。ライター。2006年に「VOICES」を創刊、09年NPO法人「bond Project」を設立、2010年にネットカフェ「MELT」をオープン。著書に『漂流少女 夜の街に居場所を求めて』(太郎次郎社エディタス)など。
http://bondproject.jp/

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