泣いて、ぶつかって、共に生きる
ケニアのストリートチルドレンを撮影したドキュメンタリー映画『チョコラ』が、5月より公開されている。
チョコラとは、「拾う」を意味するスワヒリ語。路上のクズ拾いで日銭を稼ぐストリートチルドレンを指す言葉でもある。
この子どもたちと共に生きる女性がいる。ケニア・ナイロビからほど近い町ティカにあるモヨ・チルドレン・センターを主宰する松下照美さんだ。映画の中にも路上の子どもたちとかかわる姿が映されている。
初めてアフリカを訪れたのは1994年。長く芸術活動や平和運動を共にした夫の急逝後に、知り合いを通じてウガンダの子どもの施設視察の話が舞い込んだ。陶芸家だった松下さんにアフリカやNGOについての知識はなかったが、何か惹かれるものを感じ、旅立った。
人生初の海外旅行だった。
「空港に着いた途端、黒い中に飛び込んだという感じ。初めて見る光景に圧倒されました」
トラックの荷台で揺られ、寒さに震えながら3日かけウガンダに到着。元ストリートにいた子どもたちと出会った。
夜、寝ていると、隣の部屋から、子どもたちのすすり泣きや、うなされる声が聞こえてきた。愛されること、安心を必要としているのだと感じた。
帰国の日が近づくにつれ、「この子たちと一緒に支え合ってやっていきたい」と思うようになった。
同じ時期に滞在していた今回の映画監督でもある小林茂さんらに相談した時は、無理だと言われた。すでに50歳に近づいていたこともある。それでも、気持ちは変わらなかった。
「とにかく、出会っちゃった、という感じなんですよ」
その後、数年の準備期間を経て、99年、ケニアにNGOモヨ・ホーム(現モヨ・チルドレン・センター)を設立。2000年、ティカに本拠地をおき、今年で9年になる。現在モヨでは、デイケアと宿泊施設を備える新たな拠点「子どもたちの家」運営、貧しい子どもたちへの学費支援、小学校の給食支援など、路上の子ども支援を行う。
続きは本誌で...