ロベルトの妻として、ピアニストとして多忙な日々を送り、7人の子どもたちを育てているクララのところに現れた14歳年下のヨハネス。ヨハネスとクララは互いの才能を認め合い惹かれ合う。一方、ロベルトはヨハネスを自身の音楽の理解者であり、後継者だと世の中に送り出す。強いクララに甘える2人の男たち。クララとロベルトの愛、クララとヨハネスの愛、ロベルトとヨハネスの愛、3人の複雑な愛の形が描かれ、その中から美しい音楽が生まれた。ロマンチックなストーリーだ。
だが、映画は献身的に男性を支えた女性を強調しているわけではない。クララの葛藤や苦悩が描かれる。作曲に専念したくても、妻・母の役割から逃れられない。夫の持病である頭痛が悪化し、夫の代わりに楽団の指揮をするが、「女性の指揮など前代未聞だ」と楽団員から突っぱねられる。それでもクララは見事に指揮をこなす。夫の死後は、一人で生きていくことを選び、ピアニストとして活躍し、夫の作品や著作を出版する。
「クララが生きた時代は女性の制約が大きかった。ですが、現代でも、女性はまだまだ能力を十分に発揮することができない社会であると思うのです」
夫の曲を演奏したクララが聴衆から拍手喝采を浴びるが、夫はそれを喜ばない。このシーンにクララの葛藤を入れた。ヘルマさんは「私が愛した男性たちも、私が成功を収めることを受け入れなかった」と言う。
「ドイツでは女性が首相になりましたが社会は変わったでしょうか。女性が持っている素質や力が世の中で重視されず、効果を発揮していない状況を示したかったのです」