WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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インタビュー

絵本作家

バーサンスレン・ボロルマーさん

  • 2010.08.05
  • 聞き手:柏原登希子
  • 撮 影:落合由利子
  • 通 訳:津田紀子

ボロルマーさん

子どもを魅了する遊牧民の暮らし

 まんまるい男の子ジルが、まあるいお母さんのお腹の中から、まあるいおうちのゲル(モンゴルの伝統的な移動式住居)に生まれる。羊やラクダに囲まれて、大好きなかあさん、とうさん、じいちゃん、ばあちゃんとともに、季節ごとに土地から土地へと移動する。チロリシャンシャン ユラユラ ユラリ。ラクダの鈴を響かせながら…。
 ボロルマーさんが『ぼくのうちはゲル』(写真)で描いたのは、いたずらっこジル一家の遊牧民の暮らし。草原の草や羊の毛の一本一本、伝統的な髪型をしたかあさんの髪の毛や民族衣装の一つ一つ、ゲルの中の空気まで細密画のように丁寧に描き込まれている。その美しさとほっこりとした温かさ。遊牧民たちの穏やかで平和をたたえた目。どこかボロルマーさん自身を彷彿させる登場人物たち。これまでモンゴルをテーマにした数々の絵本を作ってきただけに、モンゴルに対する思いは人一倍だろうと思ったが…。
 「私がモンゴル育ちだからなのか何なのか…。でも、モンゴルの伝統的な遊牧の暮らしや文化、美しい衣装を子どもたちに知ってほしいとは思います」と、はにかむように笑い、全く気負いがない。
 「都会の生活はどこも似たり寄ったり。遊牧民の話はどこの国の子どもも面白く読んでくれると思います」

 モンゴルの首都ウランバートル育ち。約300万人のモンゴル人口のうち半分が暮らすという大都市で、「遊牧生活」とはほど遠い子ども時代を送った。「学校と家との往復で日本の子どもの暮らしとそんなに変わらない」とボロルマーさんは笑う。
 絵を習ったのは4歳の時。ものすごく泣き虫で人見知り、幼稚園にも行けないほどの子どもだったが、母はボロルマーさんがいろいろなものに描く絵を見て、「この子は絵が好きだ」と直感。4歳から地域の絵画教室に通わせ、ボロルマーさんも絵画教室には喜んで通った。
 モンゴルでは児童文学は多くあるが、絵本はまだ数少ない。そのため子どものころに絵本を読んでもらうということはなかった。が、「祖母と一緒に住んでいて、モンゴルの民話をたくさん語ってくれました。モンゴルには古くから語り継がれてきた口承文芸があるのです」。ボロルマーさんは遊牧民の心や知恵が詰まった民話を聞いては片っ端から絵にしていった。
 また遊牧生活を送る人口も減る中で、都市に住む人は休みになると田舎に遊牧生活を過ごしに行く。ボロルマーさん家族もよく田舎に行った。そこで動物と共存する遊牧民の生活に直接触れた。これらがボロルマーさんの着想の原点だ。


続きは本誌で...

Baasansuren Bolormaa

1982年モンゴル生まれ。2005年に『ぼくのうちはゲル』(石風社)が野間国際絵本原画コンクールでグランプリを受賞。日本、モンゴル、カナダで出版。ほか受賞多数。2008年より日本に留学。6月末『お月さまにいるのはだあれ?』刊行。
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