(C)布田直志
現代アートの国際展覧会「ヨコハマトリエンナーレ2017」(8月4日~11月5日)に、瀬尾夏美さんは岩手・陸前高田をテーマにした絵画とテキストからなる「二重のまち」を出品した。1988年生まれの最年少アーティストだ。
陸前高田は、津波で流されたかつての市街地に山を崩した土を盛る工事が進んでいる。2011年3月末、初めて陸前高田を訪ね、その後、街の人々の思いを聞き取り、スケッチを重ねてきた瀬尾さんは、盛り土の上に築かれる街と土の下に息づく二層の街を想像する。「二〇三一年、どこかで誰かが見るかもしれない風景」として、二重のまちの人の営みを幻想的な筆づかいの絵と語りで描き出す。津波を体験した人、思いを遺しながら亡くなった人、津波を知らない世代がつながっていく。
東日本大震災が起きたのは、大学の卒業式を間近に控えた春休み。大学院で油絵を学ぶことが決まっていた。テレビやSNSから東北の惨状が流れてくる。「『壊滅』『未曽有』といった報道で使われる大きな言葉と、映像に写る普通のおじいちゃん、おばあちゃんとのずれ。現地のぐちゃぐちゃな風景と東京は電車が動いているというずれ。それを体感的につなぎ直しておかないと、もう絵が描けないと思った」
続きは本紙で...