(C)宇井眞紀子
硫酸で顔を焼かれたパキスタンの女性、誘拐され強制結婚させられたキルギスの女性など、人権問題を柱に世界を取材する林典子さん。今年、過激派組織「イスラム国」(IS)から迫害を受けたイラクの少数民族、ヤズディの人たちを追った写真集『ヤズディの祈り』(赤々舎)と取材活動が評価され、「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」と「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」を受賞した。世界が注目するフォトジャーナリストの取材に緊張したが、その緊張も解きほぐれるほどの柔らかさで語ってくれた。
中学生のころから社会問題を扱ったドキュメンタリー映画が好きだったという林さんは、「紛争・平和構築学」を学ぶため、アメリカの大学に進学した。3年生の時、西アフリカのガンビア共和国に行き、新聞社で写真を撮るインターンをしたことが林さんのその後を決定づけた。
「当時のガンビアは独裁政権による厳しい報道規制があり、政府の汚職などを命がけで取材する新聞記者たちの姿に刺激を受けました。カメラが人に近づくツールになると気づき、世界で起きている問題を写真で伝えたいと思うようになりました」
ガンビアの記者の中には不慮の死を遂げた人、刺客に襲われ亡命した人も…。彼らの使命感に突き動かされ「なかなか報道されない社会に生きる人々の声を聞きたい、フォトジャーナリストになろう」と決めた。
パキスタンでは、恋愛のもつれや親族のいざこざで、恋人や夫に硫酸をかけられた女性を撮影した。硫酸で焼かれた顔、傷痕のすさまじさ…。傷や心の痛みが伝わる写真は見る者の心を揺さぶり、言葉を失わせる。
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