(C) 谷口紀子
「阪神淡路大震災の借上復興住宅問題について、一人でも多くの人に知ってほしいです。大きなことはできないけれど、23歳の私だからこそ、伝えられることがあるのかなって、思えるようになりました」
兵庫県で医療生協職員として働く市川英恵さんは、今年の春、阪神淡路大震災後に建てられた借上復興住宅の被災者たちが退去を迫られていることを、エッセイ風の文章と、同世代の芸大生の描いた漫画で伝える著書『22歳が見た、聞いた、考えた 「被災者のニーズ」と「居住の権利」』を出版した。
市川さんは、兵庫県姫路市生まれ。阪神淡路大震災当時は1歳だった。「姫路は被害が小さかったし、物心ついた頃には、神戸の復興も進んでいましたから、震災の傷跡を実感することは、あまりなかったです」。大学では、ボランティアサークルに所属。「借上復興住宅の入居者たちが、入居から20年のタイミングで、退去を迫られている」と教えてくれたのは、サークルの先輩だ。
阪神淡路大震災当時、被害が甚大であったために、自治体が建設する復興公営住宅の供給が追い付かなくなった。そこで、民間などの住宅を自治体が借り上げ、公営住宅として被災者に提供したのが、借上復興住宅だ。自治体が建てた復興公営住宅であれば退去の期限はないが、借上復興住宅は、自治体が民間から20年の期限で借り上げたものだった。しかし入居時、期限についての十分な説明はされず、2010年頃から、借上復興住宅の居住者のもとに、退去を求める〝お知らせ〟が届くようになり、問題が表面化。公営住宅は基本的に、自力では住宅の取得が難しい人に提供される。借上復興住宅の入居者も、ほとんどが低所得者だ。80代以上で、要介護認定を受けている人も多い。「自分のおばあちゃんと同じくらいか、それより上の人たちが、住み慣れた家からの引っ越しを迫られているなんてと、驚きました」
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