(C) 落合由利子
映画監督、イギル・ボラさんの両親は耳が聞こえない。しかし手話でおしゃべりする二人は、なんとも賑やかだ。仲良く戯れ、笑い、ときに悩んで額を寄せ合う。ドキュメンタリー映画『きらめく拍手の音』はそんな両親への愛にあふれ、聞こえない世界を生き生きと発見させてくれる。
小さい頃から手話通訳で親を支えていたボラさん。さぞや大変だったろうという問いは、あっさり否定された。子どもには難しすぎる不動産屋との電話に四苦八苦、といった経験はあるものの、親を助けるのは自然なこと。親の障碍そのものを負担に感じたことはないという。
重荷は別のところにあった。それは「世の中の偏見や差別にぶち当たるとき」。例えば目の前で親を悪く言う人がいる。「私にしか聞こえない悪口を親に通訳するわけにもいかず、表情を動かさずじっと我慢して。それが子ども心につらかった」
「障碍者の子」というレッテルにも縛られた。「百点を採れば障碍者の娘なのに偉いね、と親子で褒められる。反対に一つでも間違ったことをすれば、やっぱり親が障碍者だから、と親子で叩かれる。いい子でいないと障碍者の子は生き残れない」。いい成績をとり、いつもニコニコして。「早く大人になったと思います。話し相手が同情しているか、戸惑っているか、優劣で見ているか。鋭く感じとり、どう対応するかも自然に身につけた。生き残らなきゃという気持ち。それが重荷でした」
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