大阪市のビジネス街の一角に位置する大阪府立労働センター(愛称エル・おおさか)。その4階に社会・労働関連の書籍や資料をそろえた大阪産業労働資料館「エル・ライブラリー」はある。閲覧座席数わずか8席の小さな民間図書館。「日本一貧乏な図書館」とキャッチフレーズをつけたのは、館長である谷合佳代子さんだ。
最初から貧乏だったわけではない。もともと谷合さんが働いていたのは公益財団法人大阪社会運動協会(社運協)。大学で歴史学を学び、大学院受験を目指していた谷合さんに「勉強にもなるから」と、研究室の先輩が勧めてくれたのだった。社運協は1978年の設立以来、大阪府・市の補助金によって『大阪社会労働運動史』の編纂と資料収集を行っていた。見よう見まねで情報の収集・整理や編集をやってみると面白く、そのまま働き続ける道を選んだ。
『運動史』の編纂を全8巻で終え、2000年からは大阪府の委託を受けて大阪府労働情報総合プラザの運営を担う。この間、谷合さんは2人の子どもを出産、子育てもしながら自費で大学に通い、司書の資格を取得した。大阪府から引き継いだ労働情報総合プラザは、丁寧なレファレンス(情報照会)と社運協から引き継いだ豊富な資料によって、利用者は4倍増、経費は40%以上を削減するなど順調な運営だった。
「しかし08年、橋下徹府知事の誕生とともに状況は一変する。「すべての補助金をゼロベースで見直す」と宣言した橋下知事は、真っ先に労働情報総合プラザの廃止を決めた。それは年間3200万円の予算のうち、2200万円を突然失うことだった(残りは労働組合からのカンパ)。
民間図書館として続けるか、閉館するか…。当時4人いた役職員のうち、谷合さんと、現在は館長補佐を務める千本沢子さんが給料大幅カットを承知で引き継ぐことになった。「1人暮らしで最低限の給料が必要な1人については、転職先を紹介して辞めてもらいました。私と千本は夫がいるので、飢え死にはしないだろうと」
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