すべてを内包する「現代の土偶」を
金明和さんのつくる土偶は魅力的だ。丸いおなかにどっしりとしたお尻、乳房は豊かに垂れている。どんなフェミニストかと思いきや、「いやあ、まだいろんなことに気付いたばっかりで」と笑う。
在日コリアン2世の両親のもとに生まれ、5人姉妹の長女として育った。5歳までは叔父やいとこも一緒に暮らす大家族だった。朝鮮学校に通ったこともあり、濃密な在日コミュニティーのなかで愛情に包まれて育った。「むしろ〝男を手のひらで上手に転がすのが女の値打ち〟という価値観をすんなり受け入れていました」
朝鮮大学校で美術を学び、朝鮮学校の美術講師になる。絵を描くのが得意な家族が多く、子どもの頃から芸術は身近にあった。25歳で小学校時代から顔見知りだった男性と結婚、2人の子どもを産んだ。「その頃は表現よりも技術的なことばかり意識していました」
ターニングポイントは重なり合うようにやってきた。病を得て仕事を辞めた父が急激に衰えていく姿や、父が亡くなった数時間後に起きた東日本大震災の凄まじい被害。目の前にある父の死とテレビ画面に映し出される多くの人の死が重なり、自分に突きつけられた気がした。「遠い存在だった〝死〟をすごく身近に感じました。自分のすぐ隣に生や死があるんだと」
同時に、出産や育児を経て、表現を通じて子どもたちと向き合う面白さに目覚めていく手応えもあった。しかし夫は、母や妻であることを最優先してほしいという思いを押し出してくる。求めるものがずれ始めた夫婦間に葛藤が生まれた。「ここ数年はけんかの繰り返しでした」
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