しょうがない、で済ませない仲間を
武隈さんの仕事をひと言で説明するのは難しい。「映画の中でいろんな仕掛けをするんです。コンピューターで昔の里山風景を作ったり、雪を降らせたり」。人気のあるエンターテインメント系の映画にも関わっている。そんなデジタル最先端の仕事をしている彼女が、デモに家族で参加したり地域で活動を始めるようになったのは? 足元のリアルな社会の矛盾を、自ら変えたいと思ったきっかけを知りたくて話を聞いた。
「3・11と原発事故で、じっとしていられなくなりましたね。うちも当時6歳と4歳の子どもがいたので、すぐ富山の私の親の家に行かせて、はやる気持ちで仕事を仕上げて、東北行かなきゃ、でした」
宮城・石巻で泥かきをしたけれど、きりがなくてうちのめされ、「自分にできるのは、生活や子育ての中でじっくり何かを育てていくことじゃないか、と思った」
原発は怖いからイヤ、というだけではなく、誰かを犠牲にしなくても成り立つ社会をつくれないものか、まず周囲の親たちと確かめ合いたかった。
そこで地元で親たちと子どもたちの遊び場を作ったり、原発を学ぶ映画の上映会を開いてみた。上映会が縁で鎌仲ひとみ監督とも知り合い、映画『小さき声のカノン』でも、冒頭に出てくるアニメを作成した。
すべて初めての経験。福島の子どもたちの保養プロジェクトにも関わった。その行動力はどこから来るのだろうか。
「10代の頃からひとりで海外へ出かけていましたね。バックパッカーで東欧を旅したときに、ポーランドで出会った人々は、自分たちは遅れている、アメリカに憧れると言っていたけれど、美術や映画がタダで観られて、お金はなくても人の心がゆったりして、私はこういう生活もあるんだと思った」
続きは本紙で...
たけくま よしこ
1976年、富山県生まれ。大学で美術・デザインを学び、都内映像会社勤務を経てフリーランスの映像クリエイターに。東京都世田谷区内で「憲法カフェ」を開くなど、親たちが政治や社会を語れる場をつくっている。