1945年8月15日以降に生まれた、さまざまな世代の人に「あなたの〈戦争体験〉を聞かせてください。戦争を感じた体験はありますか?」というインタビューを重ねている。
私の父は16歳のとき、学徒動員先の軍需工場から帰省する途中、広島市内で被爆した。私の娘の通う小学校から頼まれて、父は初めて人前で被爆体験を語った。後日、子どもたちから感謝の気持ちを書いた手紙が届いた。その中に「あの日、あの場所に、落合さんがいたのですね」と、短いが、12歳の少年が、話を通して一つの“体験”をしたことを感じさせる手紙があった。
大学生になったその少年、澁谷龍之介さん(92年生まれ)を訪ねた。「覚えてない」と照れ笑い。インタビューを進めるうちに、高校入学時、友だちができずに「毎日が戦争だった」と言う。
続きは本紙で...
おちあい ゆりこ
写真家。「母の友」(福音館書店)に「戦争は知らないけれど」を連載中。著書(写真・文)に『絹ばあちゃんと90年の旅 幻の旧満州に生きて』(講談社)『働くこと育てること』(草土文化)ほか。これまでに「日本国ルーマニア人物語」「いのちつなぐ 戦争を経てきた人の肖像」などの写真展を開催