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インタビュー

永山則夫、死刑に向き合うディレクター

堀川惠子さん

  • 2013.10.15
  • 聞き手…柏原登希子
  • 撮影…常見藤代

堀川惠子さん

ヒロシマ、死刑。頭から胸の距離

 永山則夫がくぐもった声でとつとつと話す。北海道・網走での冬に母親に置き去りにされたこと、母代わりの姉の精神の病、兄からの暴力、野垂れ死んだ父、自殺未遂を繰り返した末4人を射殺するに至る様子…。NHK「永山則夫 100時間の告白 封印された精神鑑定の真実」(2012年。石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞)で、「貧困による犯行」と思われていた連続射殺事件の永山(1997年死刑執行)の肉声は、私にとって歴史上の人物の内なる叫びを聞いた瞬間だった。  番組を作ったのは堀川惠子さん。私は期せずして堀川さんの番組を見ているが、いつもぐいっと引き込まれ、心を揺さぶられ、何かを突きつけられる。  「一人一人が考えないといけない重要なことに限って、ここ(頭)からここ(みぞおち)の距離感って埋めがたいものがありますよね」と堀川さん。ディレクターとして、自分の中の距離感を埋めるために材料を掘り起こし、その出合いと感動を作品に織り込む。近年のテーマは死刑だが、出発点はヒロシマだ。  大学卒業後、アナウンサーを目指して地元の広島テレビ放送を受けるも、試験の原稿に文句を言ったら、説得されて社初の女性記者に。広島県で生まれ育ったが「最初の3、4年は原爆から逃げていた」と堀川さん。学校で上から教えられる原爆被害と、父から勧められた本に書いてある日本軍の侵略加害。その2つをどう捉えたらいいのか分からないまま時が過ぎ、原爆を伝えることを躊躇していた。  ある時、一人の被爆者に出会う。かつて現在の平和記念公園に家があり、家族全員を失ったと、公園の中で笑顔で語るおじいさんに、「知識としての原爆がようやく胸におちた」。それからは被爆者の話をひたすら聞き、原爆の番組を量産した。  ところが全国放映を掛け合うと、統括者が「こんなもの誰も見ない」と一喝。「頭をがーんと殴られたみたいで。全国放映枠は深夜なので視聴者の7割は20代、30代。その人たちの心を掴まえないと」。そこで作ったのが、被爆者が登場しない原爆の作品(01年)。「折り鶴の少女」で知られる故・佐々木禎子さんの甥で、東京でバンドをやっている男性が、「禎子」を伝えるロックを作る活動を追った。高視聴率を取ったが、被爆者の実像を伝えたいと模索は続いた。 続きは本紙で...


ほりかわ けいこ

1969年広島県生まれ。2009年「死刑囚 永山則夫~」でギャラクシー賞大賞受賞、11年放送ウーマン賞受賞。『死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社)で講談社ノンフィクション賞、『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』(講談社)で新潮ドキュメント賞受賞。

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