生きているたった一人を大切に
1954年、福島県川俣町で生まれ東京で育つ。学童クラブ指導員をしながら、著書『負けるな子どもたち!』(径書房)や個人通信で平和、環境、人権などの問題を発信。山登りや自然、絵を描くのが好き。ブログhttp://lumokurago.exblog.jp/
日本人が生涯でがんに罹患する確率は、男性54%、女性41%という(国立がん研究センター統計)。つまり、2人に1人の確率で、一生のうちのある日、がんと診断される日を迎える。
その「ありふれた病気」を人々は恐れる。
「マスコミによって『がん=壮絶な闘い+死』というイメージが刷り込まれているからでしょう。でも、壮絶な闘いは実は『意味のない治療との闘い』であって、いらぬ治療さえしなければ、亡くなる直前まで普通に生活できる穏やかな病気です」と渡辺容子さんは言う。
渡辺さんは、1994年、「ふぇみん」に掲載された乳がんの記事をきっかけに、自己検診で5ミリのしこりを右乳房に発見した。すぐに医療機関を受診したが、その後6年間放置し、2000年に術前化学療法と乳房温存療法を受けた。
乳がん治療の根拠や成果とされているデータの実態、専門家へのインタビューなどを、自身の治療経過に沿ってまとめたのが『乳がん 後悔しない治療 よりよく生きるための選択』(径書房)だ。がんをはじめとする日本の医療について深く学んだ結果、渡辺さんは「常識が覆されるという経験」をした。「真実を知って自分で判断してほしい」という思いと、「がんになってもよりよく生きることはできる」というメッセージを込めた本だ。
「よりよく生きる」とは、がんを克服することではない。なぜなら「本物のがんは治らない」ことこそが、覆した常識の先で渡辺さんが得た真実だから。
「まず、早期発見・治療で寿命が延びたという医学的証拠はないのです。さらに日本では乳がん治療のうち、科学的根拠に則ったものがわずか5%という調査もある。もはや医療はビジネスで、原子力ムラと同じ構図の〝抗がん剤ワールド〟さえある。不安をあおられ、無駄なお金を使わされている」
続きは本誌で...