(c)落合由利子
東京・赤羽の商店街から少し外れた住宅地に、「青猫書房 子どもの本」の看板が出ている。店内にはグリム童話集や「ファーブル昆虫記」「赤ずきんちゃん」などお馴染みの児童書が。「子どもたちが連れ立って遊びに来てくれるかな?と期待しましたが、最近は外に出て遊ばないらしくて」と苦笑する店主の岩瀬惠子さん。とはいえ、子どもを連れて絵本を探しに来る親たちはいるし、絵本の読み聞かせでは膝に抱えた子どもと一緒に夢中になる父親も。
選書は、かつて勤務した図書館で身につけたものだ。 「ロングセラーや良書と評価されているものが中心だけど、迷いますよ。限られたスペースに何を置くか。私が好きでなくても、ほかの誰かには必要な本もあるかもしれない。だから苦渋の決断なのよ。だめな本なんてない。人間と同じでね」
団塊の世代のしっぽに生まれ、高校生で70年安保デモに参加、沖縄返還も肌で感じ、部落や在日外国人差別、水俣の支援にも関わっていく。 「同じ人間なのに生まれた場所や環境によって全然違う人生になる。知れば知るほどつらかったね、どの問題も」
おのずとエリートをつくる大学に批判的になった。 「何の苦労もせずに育った自分が後ろめたく、それが軛になって大学進学をやめました。自由を認めてくれる父から『好きなことをすればいい。だが、自分の足で立ってからやれ』と言われ、よし、働こうと」 公務員試験を受け、2年後、東京都港区の図書館に異動に。もともと本好きで中学時代から倉田百三、ヘルマン・ヘッセ、太宰治などを愛読。高校時代には弁当も図書室で食べたほど。
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