(c)宇井眞紀子
核兵器をジェンダーのレンズで見てみたら何が見えるだろう―。これまで、核兵器の開発や保有は「男らしさ」と結び付けられ、男性支配的な場で意思決定が行われてきた。一方で一度核兵器が使われれば、ジェンダー不平等な社会の中で、結婚差別や経済的困窮、性と生殖の権利の剥奪等、より弱い立場の女性等のマイノリティに大きな被害をもたらす傾向がある。
ジェンダー視点から核兵器の議論に新たなナラティブを増やす活動をしている「GeNuine(ジェヌイン)」を共同で立ち上げたのが徳田悠希さんだ。 「ジェンダーは自分と社会の問題だけど、核兵器はどこか遠い問題。でもジェンダーのレンズで見直すことで、『自分と関係ないこと』から変わる可能性があるんです」
東京で生まれ育った徳田さんは、中学3年生の時に修学旅行で広島へ行き、初めて被爆者の話を聞いた。「そんな恐ろしいことが起こりうるのか」と思ったと同時に、「普通は話したくないトラウマをなぜ話してくれるのだろう」と思った。というのも、徳田さんは当時「デートDV」を受けていた。「トラウマ体験を語ることの難しさ。語ったとしても受け入れられるとも限らない不安」を経験していたのだ。それでも被爆者は証言をし、徳田さんたちに「核兵器がもう一度使われ、あなたも被爆する可能性がある。それを忘れないでほしい」と語ってくれた。「語る強さに勇気づけられたし、核兵器の問題は私たちの問題でもあると気がつきました」
何かしたいが何をしたら―。話せる友人もおらず、もどかしい気持ちで中学・高校を過ごすが、2017年には核兵器禁止条約(TPNW)が採択された。「核兵器のない世界を作ろうと世界の市民が後押ししました。世界はいい方向にいくかもしれないと
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