心に寄り添い、笑いを引き出す

「笑い療法士」をご存じだろうか。
笑いによって、病を持つ人の自己治癒力を高め、健康な人の発病予防をサポートする専門職≠ナ、その養成と認定を行っている「癒しの環境研究会」の代表世話人が、高柳和江さんだ。
1994年に立ち上げた同研究会で、さまざまな業種や立場の人たちとともに、患者に安心感を与え自己治癒力をサポートする病院環境の研究や話し合いを始めた高柳さんは、医者としての経験や実験から、笑いには痛みを緩和したり免疫力を高めたりする効果があるという確証があった。高柳さんから「1日5回笑って、1日5回感動する」という「処方せん」を受け取った悪性リンパ腫の医師が、1年後、腫瘍が消えたという検査所見のコピーを送ってきたこともあった。
けれど、あるとき、高柳さんから「笑うこと」を勧められた入院患者は、病室のみんなが病気で苦しんでいるのに自分だけ笑えないし笑うネタもない、と言った。
笑いが身体にいいことはよく知られていても、病気という苦しみを抱え、笑える状況にない人もいる。「それなら、その人のために、その人の笑いを引き出す療法士を派遣しよう、そう考えたの」
同研究会による「笑い療法士養成」が、たった4行の新聞記事で報じられると、あっという間に900件の問い合わせが寄せられ、2005年10月、厳しい講習会と審査を経て、49人の笑い療法士が誕生した。
笑いを引き出す―これが笑い療法の重要なポイントだ。笑い療法士は、面白いことを言ったり芸を見せたりはしない。変装もなしだ。
でも、どうしたら、ふさぎ込んだ人に笑ってもらえるの?
「このインタビューが始まってから、何回笑った? 『こんにちは』と言っただけでも笑ったでしょ? 人が笑うためにまず必要なのは、安全で安心できる環境です。笑い療法士とは、一緒にいてそういう環境を提供できる人」
笑わせてやろうと思うのではなく、人の心に寄り添う。それが「自分のためではなく、人のために笑いを実行する」ということ。そして、それは「人間としての自信がないとできない」と高柳さんは言う。「だから、笑い療法士は鍛錬が必要なの」
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