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比較と歴史から「家族」を考える
落合恵美子さん
聞き手大森順子
撮 影河 昭子
家族は市場化したほうがいいのか
 初めて落合恵美子さんの講演を聞いたのが、今から20年以上前。それからさらに10年以上たち、『21世紀家族へ 家族の戦後体制の見かた・超えかた』(有斐閣 1994年)に衝撃を受けた。そして、さらに5年後、ふぇみんのシンポジウムにゲストとして招いた。こうして、つねに落合恵美子という研究者の周辺で「家族」を考え続けてきた。あれからまた5年ほどがたち、「家族」の美化と強化が推し進められているように見えるこの時代に、この人の話が無性に聞きたくなった。


 「『美しい日本』の『美しい家族』とはどうだったか、ちょっと検証してみたいですね。今ここにある家族ではなくて、今ここにない家族を見ていく、そうするといろいろと見えてくるものがあるんです」。他の国や他の時代、過去を見ていくことで、「当たり前」が覆るのだという。
 「女はつくられるって、ボーボワールが言ったでしょう。家族だって、歴史的、社会的につくられるものにすぎないですね。今ここにある家族はこうだけれど、他の時代や場所で、つまり条件が違えば、どうでありえるのか。『比較と歴史』が私の考え方の基本です」
 過去との比較では、江戸時代の歴史人口学の観点で『徳川日本のライフコース―歴史人口学との対話』(編著、ミネルヴァ書房)を昨年出版した。「宗門改帳」という古文書の情報をコンピューター入力して数量分析し、徳川時代を生きた人々の人生や家族生活を再現したものだ。日本は離婚や再婚が多い社会だった。子どもを置いて出稼ぎに出る母親もいた。夫の家の寺に妻が入らない慣習もあったし、実子と同居する高齢者は半分くらいしかいなかった。日本の伝統は『美しい日本』派の人たちが思い込んでいるのとは、ずいぶん違ったようだ。
 また、昨年暮れに出版した『21世紀アジア家族』という本では、日本、韓国、中国、台湾、タイ、シンガポールを対象に、ジェンダーの比較研究を行った。家族社会学、ジェンダー論の研究者が11人、全員が女性で、アジア各地の家族と人々の暮らしをルポしたもの。それぞれのお国ぶりが生き生きと伝わってくる。
 「ご家族は何人ですか?」と聞いても、中国では「時によって違う」とか「土、日曜は30人」という答えが返ってくる。
 「中国には『差序格局』という言葉があってね。これは、池の中に石を投げると波紋が広がるように、関係の輪が広がるという意味。人間関係を表しているんです。中国はネットワーク社会、それが必要に応じて伸び縮みする。子どもを親元(祖父母)に預けっぱなし、というのもけっこうあって、『隔代家族』と呼ばれています」
 確かに、日本の家族では、家から出た人は別の家族を形成するとして切っていく。日本の家族のシステムは直系家族で、家から出た者を孤立させていく。
 一方、日本以外の国にあって日本にはないものがメイドさんだという。「今は欧米でもアジアでも、介護や共働きのために外国人メイドを雇うのが当たり前になっています。日本は世界的に見て特異な状態です」

続きは本紙で・・・

おちあい えみこ
 京都大学文学研究科教員。家族とジェンダーを中心に、歴史社会学および比較社会学的な方法から研究を進め、私たちが当たり前に思っていることが、近代という一つの時代に成立したものにすぎないことを論じてきた。著書に『近代家族とフェミニズム』(勁草書房)、『近代家族の曲り角』(角川書店)。

「ごめんください」とは、ふぇみん1面のインタビュー記事です
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