インディオの声に耳を澄ます

南研子さんがアマゾンと出会ったのは1989年。一本の電話がきっかけだった。
「アメリカ人の友人に『明日から5日間、アマゾンの長老たちが来日するのだが、手伝ってもらえないか』と言われ、軽い気持ちで引き受けたのが、人生を変える運命の出会いでした」
来日したのは、「アマゾンの森を守ろう」という世界キャンペーンツアー。イギリスの歌手・スティングとアマゾンの長老たちが、世界の国々を回って訴えた。
長老たちと行動を共にし、別れ際に「アマゾンの現実を多くの人に伝えてほしい」という無言のメッセージを受け取った南さんは、すぐに行動を開始した。
「熱帯森林保護団体(RFJ)」というNGOを立ち上げ、以来17年間に21回、アマゾンのジャングルでインディオの人たちと暮らす生活を続けている。
「私って人生に対して軽いタイプなのね。出会いと直感を大事にして、考えるより先に行動してしまう(笑)」
パートナーのフォーク歌手、南正人さんは「アマゾンを取るか、家庭を選ぶか」と迫り、「アマゾン」と答えた研子さんに、「そこまで真剣だったら経済的に応援する」と言った。
RFJのスタッフ、白石絢子さんは、去年が2回目のアマゾンだった。
「アマゾンから帰って知り合いに写真を見せたら『この人たちは何の職業なの?』と聞かれ、『人間』という答えしか出てこなかった。『何してきたの?』という問いへの答えは『生きてた』。職業=人間でいいんだとわかって、すごく気持ちがラクになりました」と話す。
トイレになる茂みを探し、飢えを満たし、激しい寒暖差から身を守る中での「生きる」という実感。南さんは九死に一生の経験もした。
「雨期のシングー川で、ボートが遭難。水も食料も底をつき、『女ばかりの無謀なNGO、アマゾンに死す』という新聞見出しまで浮かびました(笑)」。無事救助されたが、アマゾンでの経験から、「自然との共生なんておこがましい」と言う。
「人間は自然に服従するしかないんです。自然の掟(この星に生きるための法則)から人類が逸脱してしまったことが、今私たちが抱えるさまざまな問題の根源だと思います。だからこそ、今も地球の鼓動に耳を澄まして生きているインディオの人たちから学ぶことは多い」
カヤポ族の族長・ラオーニさんは、ローマ法王との会見で「お前がアマゾンにキリスト教を持ち込んだばかりにたくさんの同胞が殺された。なぜそんなことをした!」と激怒したという。
南さんは言う。「ラオーニは決してあきらめない。それは、地球の酸素の3分の1を生み出すアマゾンの森が死んだら、自分たちだけでなく、お前たちも死ぬということを知っているからです」
アマゾンの地にも、貨幣経済の波が押し寄せている。
白石さんは、親しくなったカヤポ族の青年と語り合った。
「彼は、『ここには、何もない。服も、レストランも、車もない』と言います。日本の都会で暮らす私にとっては、星も森も川もあり、子どもたちの無邪気な笑顔があり、いじめも自殺もない暮らしなのに…」
続きは本紙で・・・