
髪の毛がついたヘアブラシ、使いかけの口紅、かすかに人間の体型が残るガードル、乳房の上の火傷の痕…。
凝視せざるをえないほど、見る者に迫る数々の写真…。東京都写真美術館で開催中の「石内都 Mother's展」は、石内さんの母親の遺品と亡くなる少し前に撮影した身体の写真展である。
会場に入ると、ガードルやシュミーズなど下着を撮った作品が目につく。生々しい感じはないが、皮膚のような下着には着ていた人の魂が宿っているような強い印象を受ける。
石内さんの母親が亡くなったのは、今から6年前。60代のときの大火傷の際の輸血でC型肝炎を患い、84歳のとき、肝臓がんで急死した。遺品がなかなか捨てられずに撮り始めた写真は、やがて展覧会や作品集として発表される。
2005年、世界有数の美術展であるヴェネツィア・ビエンナーレの日本館招待作家になった石内さんは、これらの写真を出品し、大好評を博した。今回の写真展は、未発表の作品と映像を加え再構成した、マザーズシリーズの完全版だ。
このシリーズの紹介文には、「母親との確執が深かった」という説明がつく。
「美男子で社交的な父と正反対の、地味で控えめな母に私は若いころから反発していたんです。…でも、ふつう母親って、娘にとってはうっとうしいものでしょ?」と石内さんはいう。
「今みたいな友達親子っていうのは私にはわからない。親から離れたいと思ったときに人は成長するんじゃないかしら」
海外でのマザーズの展覧会で、母娘の葛藤を語る女性たちを見て「母娘の確執というのは世界共通の普遍的なテーマなのだとますます思った」という。
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