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プロの技術をNGO価格で提供する通訳
伊庭みか子さん
聞き手鈴木 京子
撮 影落合由利子
専門技術で運動をバックアップ
 「私、通訳はとても上手なんですよぉ?」
 真っ黒な老猫2匹と暮らす自宅を訪ねると、コーヒーポットを温めるためのろうそくに火をつけながら、伊庭さんが言った。
 その仕事ぶりを体験すれば、彼女が第一級の“プロ”であることはわかる。そのプロが、よくこんなにNGOの「仕事」をしているなあと、ずっと思っていた。しかも、通訳をしながら補足説明もできるほど、さまざまな分野の情報に詳しい。伊庭さんて、何者なんだろう…。


 30年前の就職氷河期、四大卒女子の募集はほぼ皆無だった。伊庭さんは、「世界中どこででも仕事ができて、能力主義で、男女の差別がなくて、一生食べていける技術」を冷静にリストアップした。和裁やエグゼクティブセクレタリー(上級秘書)などの候補の中から、習得するための時間と費用が「一番早くて安かった」同時通訳を選ぶ。
 自活を志すとき「手に職」をと考える人は多いが、実現は難しい。でも、伊庭さんは「大学のときのノートも筆箱もえんぴつもそのまま使えるわけよ」と、何とか就職した会社で働きながら、通訳学校に通った。2年後、会社を辞め、以来フリーランスで生きてきた。
 伊庭さんは「通訳は技術を要する肉体労働」という。
 「誰でもマラソンを走れるわけではないでしょ? 通訳も、英語と日本語ができれば必ずできるというわけではない。同時通訳は10秒後に話すことを聞きながら、10秒前に聞いたことを話す。しかも違う言語で。それは口と耳の訓練なの。同時通訳を丸一日やると、肩や首が鉛のようになるけれど、技術が身に付いていれば脳みそは全然凝りません(笑)」
 通訳の仕事は「何だか物足りないな」が最初の印象だった。国際会議の同時通訳や政府要人のアテンド(付き添い)もしたが、うわべの話ばかり。通訳はコミュニケーターといわれるが、そんな役割は感じなかった。
 一方、まだNGOという言葉もなかったころ、通訳や翻訳が必要となれば、政府でも企業でも市民団体でも区別なく、通訳者たちはかかわった。日本初の英語の同時通訳者の相馬雪香さんは伊庭さんの師であり、広島市長(取材時点)の秋葉忠利さんは先輩だった。相馬さんらがベトナム難民を助ける会を始めれば弟子として、秋葉さんがアメリカから若手ジャーナリストを広島に呼ぶ秋葉プロジェクトを始めれば後輩として、それを手伝った。
 また、アジアへ進出した日本企業の労働実態を告発した塩沢美代子さんがアジア女性労働者交流センターを立ち上げると、通訳や翻訳を一手に引き受けた。
 やがて、政府や企業の仕事と、市民団体のボランティアの両方をやりながら「市民団体はもったいない」と思うようになる。
 「多大な費用をかけて外国から人を招聘したり、国際会議に参加しても、資料の翻訳や通訳がアマチュアで不十分であれば100%の対費用効果は期待できない。市民団体はそこに気付いていない。『プロの仕事』は費用は5倍でも効果は10倍違うのに。一方、企業や政府はそれを熟知してプロを上手に使ってくれる」


続きは本紙で・・・

いば みかこ
 1954年千葉県生まれ。同時通訳、翻訳、国際会議などのコーディネーター。87年ごろより市民運動の翻訳や通訳などを中心に活動。93年にアジア農業女性ネットワークの立ち上げに参加。国内でも、進出企業問題を考える会などの立ち上げにかかわる。

「ごめんください」とは、ふぇみん1面のインタビュー記事です
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