みんなが本気で命の持ち場につこう

「なめとこ山の熊のことならおもしろい…」、宮沢賢治作「なめとこ山の熊」の語りが、薩摩琵琶の響きに呼応しながらまると、一瞬にしてその虜になった。次々と脳裏を駆けめぐる映像。
10月22日、目黒の東京都庭園美術館ホールで開かれた「クラムボンの会」第26回公演―林洋子ひとり語り・宮沢賢治―。息をのんで聞き入った。余韻の中で命の輪廻の扉を感得した。
九州への出前公演を前にした自宅でのインタビューでも林さんは、薩摩琵琶を奏で、アイリッシュハープ、シタール(インドの代表的弦楽器)に触れ、賢治をタゴールを熱く語る。
玄関には公演用の大きな荷物。マネジャーを置かず何でも全部自分の手を使ってやるという。
「手作りの出前公演がクラムボンの基本です。じかに細かい打ち合わせをするので、行くまでには、旧知のような間柄になっています。現場では直接平場で、目と目を見合わす距離で全力投球、生の声で語ります。賢治はそのようにしてしか語れません。小さな調光機を操って照明をやるのは、みんな普通のお母さんだったり小・中学生だったり。それぞれの役をひとりで、責任を持ってやってもらうためリハーサルをしますが、やった後は、みんなの顔が生き生き輝いてます。その元気を貰って、私は帰って来るのです」
林さんが「クラムボンの会」を立ち上げ、出前公演を始めて今年で26年になる。公演回数は1400回を超える。1980年2月、アイリッシュハープと語りによる「よだかの星」「やまなし」を東京で初演以来、出前公演は口コミで全国に広がった。
「私を呼んでくれたのは、組織とか組合とかではなく、70年代を通ってきて、なにか自然との関係がおかしい、学校の教育も○×式で良いのだろうか?と考え始めたお母さんたちでした。 今もそうで、私の語りを聞いて新しく出会った人たちと何かやる、そういう人たちです。私たちはつながって生きるわけでしょう。私たちの世代が、すべてをめちゃめちゃにしていいのか。そういう問いを賢治は発している気がします。だからこそ、みんなが本気で命の持ち場につこうよって私は思っています。私の持ち場は語りです」
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