WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

新聞記者

望月衣塑子 著

    新聞記者
  • 望月衣塑子 著
  • KADOKAWA800円
著者は、あの無表情の菅官房長官を定例記者会見で苛立たさせたことで知られる東京新聞記者。なれ合いを糺し、連発する鋭い質問に官邸はおののくも、多くの市民は声援を送ったに違いない。  新人時代は1枚ずつパズルをはめるように事実を明らかにする汚職事件等の取材に精を出した。出産後は集中的課題を見つけ、武器輸出問題に取り組む。そして加計問題で時の人、前川喜平元文科事務次官にインタビューし、直後の記者会見で官房長官を追及。同じ日、詩織さんに性暴力被害の話も聞いている。なんてタフなんだ。  しぶとい取材に、警察・検察・官邸からもマークされる。なれ合いはメディアの自殺行為だからと対象に食らいつく著者に、記者クラブ内には反発も起きた。読んでいて苦々しい部分だ。だが、権力が隠したいことを明るみに出すのが記者の役目と考える著者に、社内外の一部の同業者が次第に後押するようになる。メディアの変化に期待したい。(三)

永山則夫の罪と罰 せめて二十歳のその日まで

井口時男 著

  • 永山則夫の罪と罰 せめて二十歳のその日まで
  • 井口時男 著
  • コールサック社1500円
1968年、19歳の時に4人をピストルで射殺し、97年に死刑執行された永山則夫。本書は、文芸評論家の著者が、文学者としての永山を論じ、30年以上にわたる彼に関する論考などをまとめたもの。著者にとって、拘置所で面会もした永山は特別な作家であり、思い入れを交えながら誠実に永山に迫り、彼の生を支えた言葉を語る。  獄中で永山は言葉を獲得し、ドストエフスキーやマルクスなどの本を貪り、手記『無知の涙』や小説『木橋』などを表現力豊かに綴っていく。自伝小説を執筆するのは、81年の高裁の無期懲役判決から90年の死刑確定までの、生き延びる希望が見えた期間という指摘を、改めて心にとめたい。永山が自伝小説を書き続けていたら、純真なる無辜の自分ではなく、邪悪な意思と化した自己に向き合わねばならなくなっただろうと著者はいう。永山は自身の犯行を書いていない。死刑によって、事件の深層は閉ざされ、稀有な作家を失ったことが残念でならない。(り)

「韓国からの通信」の時代 韓国・危機の15年を日韓ジャーナリズムはいかにたたかったか

池明観 著

  • 「韓国からの通信」の時代 韓国・危機の15年を日韓ジャーナリズムはいかにたたかったか
  • 池明観 著
  • 影書房4200円
1987年6月の韓国民主化から30年の年、韓国の市民は「キャンドルデモ」を展開、朴槿恵政権を退場させ、文在寅政権を誕生させた。本書が総括するのは、これの“源流”とも言うべき、72年から80年5月光州事件を経て87年6月抗争にいたる「韓国民主化の時代」。この時代を、韓国の評論家である著者は「日韓の歴史にとって共通の戦いを戦いながら北東アジアの平和を求めた初めての歴史であった」と言う。軍事独裁を終わらせるため日韓市民は連帯した。市民の闘いはジャーナリズムを鼓舞。「東亜日報」は検閲に「自由言論実践宣言」で抗し、日本の雑誌「世界」は“T・K生”(=池明観)の「韓国からの通信」を掲載し、「朝日新聞」も独裁の実態を暴露した。  だが今、「嫌韓」と「反日」の応酬が日韓市民を隔てる。あの時代の連帯を、今日、東アジアの平和実現のためにどう活かし、継承すべきか、著者は問いかける。(ひ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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