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ふぇみんの書評

ルポ 沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実

阿部岳 著

    ルポ 沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実
  • 阿部岳 著
  • 朝日新聞出版1400円
 2007年から米軍のヘリパッド建設のため豊かな自然の破壊が続く、沖縄・高江。さらなる暴挙が国によって行われた。2016年7月11日未明のこと。前日の参院選で沖縄は基地建設に反対する候補が勝ったにもかかわらず、国と防衛省は高江に資材を搬入、工事が強行された。そんな無法状態の高江を取材・報道した、〈政権の敵〉沖縄タイムス記者によるルポだ。  東京出身の著者は、ヨソ者へ突きつけられる厳しい視線に自らを置き、また沖縄を差別し続ける本土への怒りを募らせる。何のために報道するのか。「有権者に権力に対する判断材料を提供すること。それができるのは記者だ」という信念を貫く。高江で記者が警察に拘束・排除された事態を批判。名護市のオスプレイ墜落事故も住民からいち早く知らせを受け、警察より先に現場に急行した。緊迫した空気が読み取れる。  「きょうの沖縄は、あすの本土である」。迫り来る社会を見据え、何をすべきか考えたい。(三)

教誨師 関口亮共とBC級戦犯 シンガポール・チャンギー刑務所 一九四六-一九四七

布川玲子、伊藤京子 編著

  • 教誨師 関口亮共とBC級戦犯 シンガポール・チャンギー刑務所 一九四六-一九四七
  • 布川玲子、伊藤京子 編著
  • 日本評論社2300円
太平洋戦争のBC級戦犯たちが多数処刑された、シンガポールのチャンギー刑務所。ここで教誨師の任務に当たった関口亮共は、死刑囚を見送り、日本に帰還してからは預かった遺書を遺族に届ける仕事を続けた。関口が住職を務めた神奈川・明長寺の本堂から、チャンギー関連の文書が見つかり、彼の孫(伊藤)と関口の小学校教員時代の教え子(布川)が、文書を整理し、公開したのが本書だ。  寺で発見されたのは、関口の文書、減刑され生還した死刑囚の手記、遺族からの礼状などだ。死刑囚や遺族に親身に寄り添った関口の人柄や生き方、刑務所の過酷な状況、朝鮮半島出身者の苦悩などが浮かび上がる。遺族の手紙には、夫や息子を失った悲しみ、世間の噂による苦しみ、納得いかない処刑などの葛藤が綴られ、胸が痛む。本書はBC級戦犯の検証や戦後処理の課題を投げかける貴重な資料である。(ぱ)

原爆死の真実 きのこ雲の下で起きていたこと

NHKスペシャル取材班 著

  • 原爆死の真実 きのこ雲の下で起きていたこと
  • NHKスペシャル取材班 著
  • 岩波書店2000円
2015年8月6日に放映されたNHKスペシャル「きのこ雲の下で何が起きていたのか」。広島原爆投下後3時間に中国新聞社カメラマンが御幸橋で撮った2枚の写真を手がかりに、そこに写る被爆者や当日御幸橋を通った被爆者31人の証言を元にCGで映像に再現し、被爆者の経験や被爆による死のあり様に肉薄した番組は衝撃的だった。本書は、取材の裏側や制作者の思いなどがつづられる。  番組では、被爆者の火傷が原爆特有で人間が感じる最も強い痛みであり、6日の死亡者は勤労動員の12~13歳の子どもが一番多いことも明らかにした。制作者を駆り立てたのは、被爆者らが一様に口にする「地獄」を伝えたいという執念。それは制作者が被爆者一人一人と向き合い、彼らの覚悟、後悔、葛藤、伝わらないもどかしさを余すところなく受け取ったからだ。  番組は若い人に反響があった。被爆者の地獄を真に感じるなら日本政府が支持する「核抑止論」の発想は生まれないはずだ。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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