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ふぇみんの書評

在日米軍 変貌する日米安保体制

梅林宏道 著

  • 在日米軍 変貌する日米安保体制
  • 梅林宏道 著
  • 岩波書店 880円
 著者は、核の傘に頼らない安全保障を目指す民間シンクタンク・ピースデポ顧問。日米安保と日本の防衛政策、在日米軍の活動、地位協定の不平等性、基地の環境汚染や騒音被害などをとりあげ、在日米軍の実態を明らかにする。  現在、米軍が国外に有する大型基地は36、うち13が日本にある。中でも横須賀を母港とする第7艦隊は、米軍にとって即戦攻撃力としての重要性が増大しており、さらに横田、嘉手納、三沢の空軍基地の重要性も不変と著者はいう。  在日米軍の行動の基本は「米本土防衛」であり、日本の防衛ではない。在日米軍の存在が中国や北朝鮮の軍拡を促進したと指摘。沖縄への海兵隊配備は「思いやり予算」など日本からの財政的支援が本質的理由だと、配備必要論を批判する。  在日米軍基地の現状を変えるにはどうしたらいいか。北東アジア非核地帯構想により、著者は在日米軍削減と地域の軍縮を展望する。市民も本書を使いこなしながら、変革を考えたい。(ね)

不寛容な時代のポピュリズム

森達也 著

  • 不寛容な時代のポピュリズム
  • 森達也 著
  • 青土社1700円
自らへの批判的な報道を「フェイクニュース」と政治家が断罪するこの時代、メディアと社会の関係をめぐりさまざまな議論が起きている。オウム真理教など幅広いテーマでドキュメンタリーを手がけてきた著者が、相撲から東日本大震災、地下鉄サリン事件など多様な切り口から、自らの経験を基にこの問題と格闘し、書き綴ってきた文章をまとめた一冊である。  「自分が現場に身を置くことで獲得した世界観を表明する」ことがドキュメンタリーであると考える著者は、私企業が営むメディアが「視聴率という民意の測定器」を基準にしている限り公共性や中立性はないと断言し、二項対立に単純化され、感情を刺激する情報の奔流が扁平な世相を形成しつつあることを浮かび上がらせようとする。  私たち自身も「一人ひとりがメディアに帰属している当事者」であるという著者の指摘は、賛否を含めて今の時代をどのように考え、向き合っていくのかを問いかけてくる。(ち)

ピネベルク、明日はどうする!?

ハンス・ファラダ 著 赤坂桃子 訳

  • ピネベルク、明日はどうする!?
  • ハンス・ファラダ 著 赤坂桃子 訳
  • みすず書房3600円
ドイツ・ワイマール時代末期に発表され、著者の名を一躍世に出したロングセラー小説が、別作品の映画化を機に翻訳された。労働者の失業増、インフレや庶民の貧困、労働運動の停滞を軸に、若い夫妻が時代の波に翻弄される。  夫のピネベルクは妊娠中の妻との生活を安定させるため懸命にもがくが、困難ばかりが押し寄せる。販売ノルマが課せられた職場では従業員の連帯がつぶされ、覇気も奪われていく。ピネベルクがもがくほど、給料やクビ切りへの恐怖など、暮らしも気持ちも踏みつけにされる様子に、読む側も感情が波立つ。  耐えきれず、「僕ら、すべてのことを黙ってのみこまなければならないの?」と怒る夫に、妻のエマは、そんな自分たちが踏みつけることができるのは自分たちより弱い人間だと答える。このエマの描かれ方―困難をかわし、仕事を探し、機を待つ生活力にも大いに共感する。  時代を超え、読み継がれる作品だ。(さ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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