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ふぇみんの書評

暗い時代の人々

森まゆみ 著

  • 暗い時代の人々
  • 森まゆみ 著
  • 亜紀書房1700円
 満州事変から敗戦までの「暗い時代の人々」を描く。治安維持法があり、ファシズムと戦争が大手を振った暗い時代に、ほのかな光を発する生き方に人が集い、筋を通した9人について、存命の関係者にも話を聞き書き上げた。  国会で大陸政策批判の反軍演説をした斎藤隆夫、弾圧に負けず論を曲げない山川菊栄、ナチスの台頭をベルリンで見た竹久夢二、女性社会主義団体「赤瀾会」創設の久津見房子、偽装転向の哲学者・古在由重、「文化学院」の西村伊作などが続く。私が引きつけられたのは、反ファシズム統一戦線の新聞「土曜日」と、土曜日を支えた俳優・斎藤雷太郎の喫茶店「フランソア」。映画や音楽・美術評の中に時事ネタを加える土曜日に、ミニコミ人でもある著者の共感的挿話が好ましい。  迫り来る「暗い時代」にどう立ち向かうか、「お上」に睨まれようとも市民的不服従…といった固いことばかりではない、権力におもねらない生き方に、心躍る。(三)

シャルリ・エブド事件を読み解く 世界の自由思想家たちがフランス版9.11を問う

ケヴィン・バレット 編著 板垣雄三 監訳

  • シャルリ・エブド事件を読み解く 世界の自由思想家たちがフランス版9.11を問う
  • ケヴィン・バレット 編著 板垣雄三 監訳
  • 第三書館3500円
2015年1月、仏風刺週刊紙シャルリ・エブド事務所を「イスラム過激派」が襲撃した。「私はシャルリ」と300万人のデモが行われた。本書は米国市民でイスラム研究者の編者ほか22人の論考集。  22人は社会的立場、宗教、民族、思想信条も多種多様だが、共通するのは、イスラムへのヘイトスピーチを容認していた仏の「表現の自由」の欺瞞性と、事件が「偽旗作戦」という認識。「イスラム=テロ」を一層強化したこの事件で誰が得をしたのか。ある著者は事件が起きたタイミング(仏のパレスチナ承認、NATO脱退表明など)や犯人をめぐる不可解な事実から、米やイスラエルなどの諜報機関が仕組んだと指摘。嘘と謀略の歴史は、ケネディ大統領暗殺事件、9.11にもつながり、ISも「対テロ戦争」のために米が創設した…。  本書を「陰謀論」と切り捨てられるか。操られず、自己を取り戻すために本書と格闘したい。(登)

「旅する蝶」のように ある原発離散家族の物語

岩真千 著

  • 「旅する蝶」のように ある原発離散家族の物語
  • 岩真千 著
  • リべルタ出版1700円
2011年の東日本大震災当時、栃木県宇都宮市で暮らしていた著者は、原発事故による放射能汚染から逃れるため、3歳の娘と身重の妻を連れて家を出た。原発周辺住民が避難を始めた3月15日のことだ。避難先は沖縄の著者の両親の家。著者だけ仕事のために栃木に戻り、5年半に及ぶ別居生活が続いた。本書はその記録だ。  家族を被ばくから守らねばという著者の決断は当然ともいえる。しかし、事故から1カ月もたつと、「冷静になれ」「風評被害だ」という声が大きくなり、自主避難者は町を捨てた人間として疎まれるようになる。一方、沖縄にあるのは基地と隣り合わせの厳しい現実。妻からは、子育ても介護もしない夫への罵詈雑言が続く。そんな中で、子どもたち(5年の間に2人になる)の成長は希望だ。  とはいえ、私たちはいまだ壮大な人体実験にさらされている。何が、誰が、正しいのか。それぞれが最善の選択をしていくしかないことを教えられた。(矢)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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