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ふぇみんの書評

あそびの生まれる場所 「お客様」時代の公共マネジメント

西川正 著

  • あそびの生まれる場所 「お客様」時代の公共マネジメント
  • 西川正 著
  • ころから1800円
 息苦しいのは政治情勢のせいだけか。禁止事項だらけの公園や児童館、保育園をめぐる保護者や近隣の苦情…。子どもの落書きや落葉焚きが町から消え、親は有料遊び場で子どもを遊ばせる。  学童指導員などを経て、遊びのあふれる町の仕掛けづくりをする著者の、町を「私たちのだいじな町」にするヒントが満載の書だ。  町から遊びが消えたのは「サービス産業化」で「お客様」にされることと、さまざまなニーズの「制度化」だとする。そこで著者は、遊びを生みだす手法を紹介。例えば埼玉県全域に広がった「ヤキイモタイム」、道路を封鎖した「らくがきタイム」…誰も「お客様」にしない、苦情を対話の契機にし、「責任」問題は不安要素を徹底解剖して共に考える。そこに「公共」が発生し、皆にとって大事な場所となる。まさに民主主義の学校!  今度の夏祭り、仲間を募ってワクワクすることをやりたいと心から思える。全国の遊びあふれる場所の紹介も読み応えあり。(登)

「你好」羽根つき餃子とともに 二つの祖国に生きて

石井克則 著

  • 「你好」羽根つき餃子とともに 二つの祖国に生きて
  • 石井克則 著
  • 三一書房1500円
首都圏にある餃子の人気店「?好(ニーハオ)」店主・八木功さんの半生を記す書。日本人の父と中国人の母との間に生まれ、幼少時より満州にいた功さんは敗戦時の混乱で父と別れ、貧困と飢餓の中、中国人の養親に育てられ生き延びる。差別に耐えた文革時代を経て功さんが実父と再会を果たすのは三十数年後。40代で帰国して日本での生活が始まった矢先、不慮の事故で息子をなくしてしまう。  その後、夜間学校で会った支援者らの後押しで、「?好」を開店、名物「羽根つき餃子」を考案した。  庶民のための低価格を貫き通し、80歳を過ぎても厨房に立つ功さんにとって、昨今の尖閣諸島問題や歴史認識の違いに揺れる日中関係を見ることは、自身が翻弄された時代が再び巡るかのようにつらいことなのだろう。それだけに、「どんな時代でも戦争は絶対にやらないほうがいい」という言葉は重い。自らの父を戦争で失ったという著者もまた、共感を込めて功さんの思いを追う。(梅)

自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために

川村湊 著

  • 自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために
  • 雨宮処凛 著
  • 七つ森書館1500円
非正規雇用など、若者の労働・生活の実態や、貧困を「自己責任」とバッシングする社会への批判を書き続けてきた著者。「マガジン9」での連載をまとめた本書も、「相模原事件」や「電通過労死事件」、小田原市役所の「保護なめんなジャンパー事件」などから、若者の生きづらさや、社会の“弱者”叩きに鋭く迫る。  “(この10年は)「自己責任の線引き」が「非正規は自己責任だと思ってたけど、そうでもないかもしない」程度にずれただけ”という著者。生産性があるか否かで人が値踏みされている状況は悲しいほどに変わっていない。  しかし、世界の若者が東京に集まり、平和デモやスカイプでつながり連帯する行動が共感を広げていることも紹介(呼びかけは「素人の乱」の松本哉さんなど)。集会のフライヤーは「アジア各地の大バカたちが東京に集結!」だそうで、何とも楽しそう! 社会を変えるには「連帯」と「楽しい文化革命」がカギになるかもと思った。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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