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ふぇみんの書評

保護者はなぜ「いじめ」から遠ざけられるのか

平墳雅弘 著

  • 保護者はなぜ「いじめ」から遠ざけられるのか
  • 平墳雅弘 著
  • 太郎次郎社エディタス1400円
 いじめを苦に自殺する子どもが後を絶たない。そうなって初めて学校が「荒れていた」ことを親や近隣住民は知り、学校の形式的な調査・謝罪を経て、「いじめは絶対許さない」という紋切り型の管理的指導が繰り返される。遺族を含め保護者は、一貫して蚊帳の外だ。本書は、小・中学校の教諭を30年以上勤めた著者が、長年の実践を通して得た、いじめが生まれにくくする学校改革の書である。  いじめは「荒れた学校」で起こると著者。一見授業崩壊していなくても子どもの心が「荒れている」場合も。そこで保護者や地域の人々が授業やトラブル対処などの学校運営に参加して、子どもの要求に応えられるようにし、いじめの兆しがあれば、子どもを権利主体とした子どもの権利条約を生かし、「子ども裁判」を行う。トラブル当事者と子ども裁判員が話し合い、反省方法も子ども自身が考える。教師が議題になることも。  目から鱗。さまざまな実例を知り、実践したいと思った。(登)

PTAという国家装置

岩竹美加子 著

  • PTAという国家装置
  • 岩竹美加子 著
  • 青弓社2000円
自らもPTAを経験した著者によるPTA研究書。PTAという巨大な組織は母たちの日常に執拗に絡みつく。加入は任意と言いながらほぼ強制、平日昼間に時間をとられ、活動は教育費援助名目の「ベルマーク集め」など、今時あり得ない苦痛なアナログ作業が多い。旧態依然が続くのはなぜ? 本書を読むとその謎が解ける。前身は戦前の「母の会」。奉仕と修養を求めた理念が戦後も踏襲され、「地域」と連携し、より強化された。背後には教育委員会、行き着くところは国家である。  会合は議論の場ではない。連絡、報告、確認をすることにより「個人の主張」を抑える仕組みなのだ。母たちは「地域ぐるみ」の体制によっていわば監視下に置かれ、「昔はあった家族や隣近所の絆が薄くなった」という言説、地域規範、家族規範がそれを後押しする。怖~い!  やめたくてもやめられないPTAの正体、やっぱり知れば知るほど面白い。ぜひ御一読を。(梅)

銀幕のキノコ雲 映画はいかに「原子力/核」を描いてきたか

川村湊 著

  • 銀幕のキノコ雲 映画はいかに「原子力/核」を描いてきたか
  • 川村湊 著
  • インパクト出版会2500円
映画は原子力・核をどのように描いてきたか。視聴可能な映画すべてを鑑賞したという著者。その数400本余り。そこから何が見えてきたのか。  日米の原爆の扱い方を比較し、日本では原爆イコール絶対悪としているのに対し、アメリカ映画では原爆が日本の敗戦を早めたという認識。それにより報復を恐れ、米国で核戦争映画が生まれたと著者はみる。  今村昌平監督の『黒い雨』については、小説『黒い雨』では強調されていない外見的な被害を強調し、「小説を超えられなかった」と批判。教育的、あるいはメロドラマ的な被爆者の扱いは、原爆への関心低下につながる。  著者は、地球に対する放射能汚染の加害者、「カバクシャ」という概念を提起する。原発関係のドキュメンタリーでは秀作が数々生まれているが、福島原発事故後の日本のフィクションで、それに値するものはないと厳しい。本質をぐさりとえぐる映画が見たい。(矢)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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