貧困クライシス 国民総「最底辺」社会
藤田孝典 著
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- 貧困クライシス 国民総「最底辺」社会
- 藤田孝典 著
- 毎日新聞出版900円
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生活困窮者やホームレス状態にある人の支援に携わる著者が、今、日本社会のあらゆる世代に広がる困窮や生活実態から、私たちがすべきことを提案する。
若者たちの多くは過重な奨学金を抱える。だがアルバイト先では長時間の過重労働が横行し、心身共に疲労困憊しても「辞めたら人間のクズ」と脅され退職できない。雇用形態による格差は深刻だ、非正規雇用のまま40代を迎える人は今や1000万人を超える。シングルマザーや単身女性、高齢者の生活苦も深刻だ。なのに、この社会は声を上ることを許さない。
しかし社会保障制度や支援は知っておくだけでも安心できる。本書では制度上の手当や年金、民間も含めたさまざまな支援を紹介するほか、有休を取ることや労組加入など、自身の権利をちゃんと使うことも伝え、最低賃金1500円に向け選挙で声を上げようとも提案する。仲間はいる、限界まで我慢せず助けを求めていいという言葉に大きくうなずいた。(梅)
これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地
沖縄タイムス社編集局 編著
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- これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地
- 沖縄タイムス社編集局 編著
- 高文研1700円
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沖縄に関心がある人には「今さら」だろうが、本土の多くの人にとっては「今なお」「今こそ」必要な内容をわかりやすく解説した新聞連載のまとめ。〈抑止力としての海兵隊〉〈普天間基地返還のための辺野古移設〉〈基地依存の沖縄経済〉などは、知らないことからくる事実誤認だ。〈反対運動の資金源は中国〉〈日当をもらっての座り込み〉など、悪質なデマまで流布される。
無知からの脱却に不可欠な書だが、なぜ人はいとも簡単にだまされ、操られてしまうのか。薄々感づいてはいたが、公には認めることのできなかった沖縄に対する不条理な押しつけ、偏見、蔑視、差別意識、後ろめたさを誤魔化すための正当化。だから人は意図的な情報取捨選択をする。都合の悪いものは見たくない、信じたくない。心理学用語でいう「恒常性バイアス」に、人間の弱さが見え隠れする。ウソを見抜く目と真実から目をそらさない勇気が求められている。沖縄だけでなく、あなた自身のためにも。(た)
- あなたの隣の放射能汚染ゴミ
- まさのあつこ 著
- 集英社740円
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福島原発事故の放射能が飛来していなくても、放射能汚染は他人事ではなくなる。放射能汚染ゴミの公共事業利用によって…。その事実と問題点をジャーナリストが解き明かす。
環境省は8000Bq/㎏以下の放射性セシウムを含む除染の副産物(汚染土)を、全国の道路や線路の盛土、防潮堤・海岸防災林・土地造成工事の公共事業で再利用できる方針を出した。どこで、どんな議論の下、誰が8000Bqという基準を決めたのか。汚染ゴミの処理の仕方、ずさんな管理と危険性、加えて8000Bq を超え10万Bqまでの指定廃棄物をめぐる恐ろしい現状も示す。
なぜ再利用なのか。それは国の「帰還政策」と深く関わる。住民の避難指示を解除するために、除染をして空間線量を年間20㍉Sv以下に下げつづけるには、除染は必要不可欠だ。
この国の凝り固まった政策にストップをかけられるのは誰か… 「自治」の力だ、と例を示す。今、声を上げなくてはならない。(三)