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ふぇみんの書評

新共謀罪の恐怖 危険な平成の治安維持法

平岡秀夫、海渡雄一 著

  • 新共謀罪の恐怖 危険な平成の治安維持法
  • 平岡秀夫、海渡雄一 著
  • 緑風出版1800円
「共謀罪」法案を巡り国会は審議真っ只中。激しい論戦が繰り広げられている。共謀罪は、監視社会をもたらし市民を萎縮させると警鐘をならす元法相と日弁連委員の両弁護士がタッグを組み、成立阻止の解決策を示すのが本書。  オリンピックのテロ対策に必要だとして「テロ等準備罪」と名称を変えて再登場したが、政府が創設の根拠にする「国際犯罪防止条約」はテロ対策を目的としたものではないことや、話し合うことを処罰する危険な本質は何も変わっていないことなど、条約の制定過程や過去廃案になった時の国会審議の資料を調査、分析し明らかにする。  政府の狙いはどこにあるのか。被害が起きた犯罪を罰してきた日本の刑法体系に反し、盗聴、密告、自白偏重による捜査手法を助長させ、政府に都合の悪い団体を恣意的に弾圧できる現代版治安維持法だという。「共謀罪創設問題」の本質を見失うなと警告する。4度目の廃案に追い込むための手引書でもある。(圭)

フクシマ6年後 消されゆく被害 歪められたチェルノブイリ・データ

日野行介、尾松亮 著

  • フクシマ6年後 消されゆく被害 歪められたチェルノブイリ・データ
  • 日野行介、尾松亮 著
  • 人文書院1800円
福島で多発する甲状腺がんは、被曝の影響ではないか。この問いは「チェルノブイリの知見」により否定される。曰く、福島では「被曝線量がはるかに少ない、がん発見までの期間が短い、事故当時5歳以下からの発見がない」。本当にそうか。毎日新聞記者と、チェルノブイリ法を日本に紹介、子ども被災者支援法策定に携わったロシア研究者が、日本政府がチェルノブイリ原発事故の知見をどう扱ったのかを追及した。  政府は確信犯的に情報操作を行い、本来政策に生かされるべき知見を歪め、葬った。この事実を著者らは調査と取材で明らかにする。被害の巨大さ、影響の長さから、責任を負うのは国家のはずだが、政府は賠償を東電に、被災者対策は自治体に丸投げだ。原発事故後の被災者対策はこの国の民主主義を歪めつつあると日野さんはいう。  チェルノブイリ被災地で30年後の今も続く、放射線防護教育や特別健康診断などについての尾松さんの現地報告も貴重だ。(き)

ルポ 思想としての朝鮮籍

中村一成 著

  • ルポ 思想としての朝鮮籍
  • 中村一成 著
  • 岩波書店2000円
誤解する人も多い「朝鮮籍」。これは、敗戦後の日本が植民地出身者を無権利化するために考え出した「地域の総称」で「国籍」ではない。韓国が建国され「韓国籍」に変更する人はいたが、本書は「朝鮮籍」で生きた6人のルポだ。  作家、民族教育者、在日朝鮮人被爆者救済を求める運動家など、著名人の彼・彼女らは、植民地時代に日本で生まれ、どの人生も壮絶だった。日本人からの差別、国家による弾圧、教育・就職における不平等、貧困…。凄まじい体験を著者がしっかりと受けとめる。両者の気迫の言葉は、加害側の日本人の私の胸に突き刺さる。政治家が堂々とヘイトスピーチをする、現在まで続く日本社会の歪みを感じずにはいられない。  金石範は「私はあくまで統一祖国を求める。実現すればそこの国籍をとり、国民となる。ただしそのとき、私はもはや民族主義者ではない」という。6人がそれぞれ「朝鮮籍」への思いを語る。そのこだわりは重く深い。(く)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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