琉球独立への本標 この111冊に見る日本の非道
宮平真弥 著
|
- 琉球独立への本標 この111冊に見る日本の非道
- 宮平真弥 著
- 一葉社1800円
|
|
本書は、沖縄を考える111冊の書評集だ。多くの人に読んでほしいと思った文献の紹介と「本土」の人たちに知ってほしい事実を分かりやすく提示するのが目的。
第1章は「歴史・事実・現況」として、沖縄の領土、民族、性暴力犯罪、辺野古などをテーマに、第2章は『転換期の日本へ』『沖縄自立の経済学』など5冊を題材に、加えて関連書籍を紹介し、解説する。第3章は、スペイン・カタルーニャの独立運動を取り上げる。
著者は、沖縄側から米軍基地を誘致したことは一度もなく、沖縄に基地を集中させる政策を進めてきたのは歴代の日本政府であり、選挙で表された「本土」有権者の民意だと断ずる。その解決策として、基地を自分の問題として実感するために、「本土」に基地を移設し、「安保反対そして安保破棄を求めるほうが良い」と雨宮昭一の論をひく。
声高に「本土」を非難するのではなく、書物を丁寧に読み解きながらの論考が展開される。まずはこの本を読み込みたい。(ね)
ノーノー・ボーイ
ジョン・オカダ 著 川井龍介 訳
|
- ノーノー・ボーイ
- ジョン・オカダ 著 川井龍介 訳
- 旬報社2500円
|
|
第2次大戦中の米国で、「敵性外国人」として収容所に入れられた日系人男子に対し、志願兵を募るため米国政府が質問状を出した。その中の、戦闘義務と米国への忠誠に関する2つの問いにノーと答えた者は「ノーノー・ボーイ」と呼ばれ、異端扱いされた。
著者も日系2世で、第2次大戦の従軍経験を持つ。唯一の著作(小説)である本書を1957年に出版。長く忘れられた作品だったが、著者死後の70年代、白人の文学しか評価されなかった時代に、米国の非白人による文学を希求していた若者たちにより“発見”された。戦争で傷ついた日系の若者たちの米社会への同化と逡巡が、共感を持って描かれる。
主人公は「ノーノー・ボーイ」のイチロー。徴兵も拒否したため2年間を刑務所で暮らし、シアトルの両親の元に戻る。従軍して足を失った親友、やり場のない怒りを爆発させる日系の友人たちが重苦しい。黒人差別やトランプによる移民排斥と重なり、今日的な意味がある。(三)
逆うらみの人生 死刑囚・孫斗八の生涯
丸山友岐子 著 辛淑玉 解説
|
- 逆うらみの人生 死刑囚・孫斗八の生涯
- 丸山友岐子 著 辛淑玉 解説
- インパクト出版会1800円
|
|
強盗殺人の罪で1963年に死刑を執行された孫斗八は、獄中で法律を学び、監獄の人権や囚人の待遇改善、死刑執行処分取消請求などの訴訟を起こしていた。孫と交流があった著者(文筆家・故人)のルポ(本書)は、68年以降、5つ目の出版社からの刊行だ。
「(文章は)自己陶酔的」と解説は辛口だが、著者の感情がほとばしる文章に引きこまれる。「孫が悔い改めることを拒否した死刑囚だからこそ彼に近づいた」著者は、孫に対し、「卑劣」「エゴイスティック」と容赦ない。(在日朝鮮人1世であった孫の)「背景にある歴史・社会・経済のファクターは描き切れていない」(解説)かもしれないが、何人であろうと、極悪人であろう(実際にはいない)と、孫や彼の支援者、著者を通し、“人間扱い”や生を願う死刑囚の叫びや、監獄行政、死刑制度の欺瞞がみえる。反省して殺されること(死刑執行)を拒み、日本社会の歪みと死に物狂いで闘った死刑囚を描いた非凡なルポだ。(ん)