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ふぇみんの書評

実録証言 大刀洗さくら弾機事件 朝鮮人特攻隊員処刑の闇

林えいだい 著

  • 実録証言 大刀洗さくら弾機事件 朝鮮人特攻隊員処刑の闇
  • 林えいだい 著
  • 新評論2500円
1945年5月23日、福岡の大刀洗飛行場で、特攻専用重爆撃機の「さくら弾機」が炎上した。放火による事件とされ、その日のうちに憲兵隊が、同機で出撃を命じられていた山本辰雄伍長を逮捕。同年8月、山本は銃殺刑に処された。10年以上この放火事件を追っている著者が、新証言を含め、事件や山本を知る人たちからの生の声をまとめたのが本書だ。  山本は創氏改名した朝鮮人だった。証言から浮かび上がるのは、山本が朝鮮人というだけで証拠もないまま罪を着せられたのではないかという疑問だ。著者は「冤罪」の証拠を探し、「山本伍長の無念を晴らしたい」との思いで多くの証言を集める。証言からは、さくら弾機が欠陥機であり、燃料不足だった戦争末期には訓練もさせないまま突撃させていた事実も明らかに…。朝鮮人への差別、死を強要される兵士…愚かで恐ろしい国の過ちをえぐり出す。がんで入院中も戦争や民族差別の闇を書き続けた著者。気迫の一冊だ。(よ)

冠村随筆(クァンチョンスピル)

緒李文求 著 安宇植 訳 川村湊 校閲

  • 冠村随筆(クァンチョンスピル)
  • 李文求 著 安宇植 訳 川村湊 校閲
  • ンパクト出版会 2500円
 李文求(イムング)(1941~2003)は韓国では文学好きな人たちの間で知られた作家で、タイトルに使われている冠村(クァンチョン)は忠清南道にある小さな村、筆者の生まれ故郷である。ソウルに暮らす筆者が30代になって訪れた故郷は、近代化され大きく変わっていた。子どもの頃はノイバラの茂み、ミソサザイの声、古いかまどから立ち上る煙…心を包んでくれるような風景があったのに。  懐かしい人びとと過ごした子ども時代を追想する中で、次第に作家が故郷を失った理由が明かされていく。戦争だ。朝鮮戦争は、厳格だったが尊敬していた祖父も、父も、弟をも奪い、家を壊し、村を荒らした。静かに語られる随筆の中に、ひとつの村が見舞われた壮絶な受難の歴史がある。そのころ日本はといえば、隣の国の戦争で特需景気にうかれていた。朝鮮の人びとの悲しみをどれだけ想像できただろうか。知らなかったあの時代の空白を埋めるためにも、読んでみたい。(室)

魚と日本人 食と職の経済学

濱田武士 著

  • 魚と日本人 食と職の経済学
  • 濱田武士 著
  • 岩波書店820円
  日本中の漁港を訪ねる漁業経済学者の著者は、町から鮮魚店が消えていくことを嘆く。そこで、「魚食」文化を育んだ職能を「魚職」と名付け、食べる人、売る人、消費地で卸す人、産地でさばく人、漁る人に分けて、考察した。  現代は魚職に大きな変化があった。大企業が地球規模で漁業を展開し、マグロやサーモンのような輸入品が増えた。市場ではセリが減り、量販店による市場外流通が幅をきかせ、加工品や輸出入も増加。東京・豊洲市場の、工場と見まがう建物を見ると、変化も想像に難くない。食べ方の変化も大きい。鮮度を求めるが丸魚はおろせない、ゴミが出るから嫌、という消費者…。  しかし、悪いことばかりではない。魚職の腕は尊重され、魚食と魚職が互いに敬意を持ち、人と資源の持続可能な漁業を求めていこうと説く。  堅苦しくなく、関心ある章から読み進められる。スーパーや産直市場で魚を見る目が変わるだろう。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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