- 武器輸出と日本企業
- 望月衣塑子 著
- KADOKAWA 800円
|
|
2014年に「防衛装備移転三原則」が制定され、「武器輸出」が実現化した。だが実は武器周辺の部品を含め日本の企業や研究者は半世紀以上も前から武器や部品の開発を行い、輸出絡みの事件も起きていた。新聞記者の著者は14年から、日本の武器輸出について、防衛省、三菱重工など武器製造企業、部品を製造する中小企業、さらに研究者を粘り強く取材した。
「三流官庁」だった防衛省は重要な政策決定への関与が増え、強気だ。加えて、高い技術力を持ち、武器輸出解禁を歓迎する大企業。
対して、下請けの中小企業からは、「テロの標的になりかねない」「武器製造に関わる覚悟がない」と、複雑で消極的な声も上がる。
米国では無人戦闘機の開発・利用が進む。一見兵士の心理的負担を減らしそうだが、実際には、無感覚で「ゾンビ」化する兵士が生まれているという。
武器輸出や軍産学の研究を見張る市民運動も立ち上がった。日本はどこへ向かうのか。(三)
新版 いのちの女たちへ とり乱しウーマン・リブ論
田中美津 著
|
- 新版 いのちの女たちへ とり乱しウーマン・リブ論
- 田中美津 著
- 発行 パンドラ 発売 現代書館3200円
|
|
1987年生まれの私がこの本に最初に出会ったのは10年ほど前。二度と経験できないのではと思えるほどの衝撃だった。
著者は1970年代を席巻したウーマン・リブ運動の担い手の一人で、これまで数多の女が手にしてきた『いのちの女たちへ』を全面改訂した新版だ。
綴られている言葉は、語られてから既に40年以上を経ている。それでも、男性との関係に違和感を抱えつつ毎日を過ごしていた私は、〈どこにもいない女〉と生身の〈ここにいる女〉との間で切り裂かれ取り乱している女は、自分だと思った。そして、自分の頭でものを考えずに来てしまったこと、女が自分の頭で考えることを許さない社会に生きていることを思い知り、愕然とした。
大学でかろうじて学ぶことのできるジェンダー論が「男女共同参画社会概論」だった私にとっても、本書はたくさんの気づきと元気を与えてくれる大切な一冊だ。(彩)
- 帝都東京を中国革命で歩く
- 譚璐美 著
- 白水社1800円
|
|
明治維新後、日本の近代化に学ぼうと来日した中国人留学生は、最盛期の1905年には1万人もいたという。留学生の中には、孫文、周恩来、蒋介石、魯迅…など大物がズラリ。東京の「早稲田」「本郷」「神田」を中心に、後にさまざまに活躍した人々の留学生時代の生活ぶりや、街の歴史を紹介している。
著者の父は中国で革命運動にのめり込み、軍事政変に巻き込まれ、日本に脱出し、日本の大学で学び、日本に暮らし続けた。中国近代史の著作も多い著者が、革命家たちのエピソードを披露する。
女性革命家・秋瑾は、親が決めた結婚相手とうまくいかず、夫も子どもも残して日本に留学。看護などを学ぶ一方、神楽坂の武術会で射撃の訓練をし、爆弾製造の技術を学んだという。革命家たちを支援した日本人の話も登場し、何かと摩擦の多い今の日中関係が何とも残念に思える。
古地図も掲載され、本書を持って散策も楽しめそうだ。(く)