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ふぇみんの書評

ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート

ブレイディみかこ 著

  • ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート
  • ブレイディみかこ 著
  • 岩波書店1800円
  著者は在英20年の保育士で低所得者街で暮らす。2014年3月からEU離脱直後(2刷あとがき)までの「地べたからの」政治時評集には人々の息遣いが聞こえる。  欧州では、緊縮財政と新自由主義経済のなれの果てで、教育やセーフティネットが崩壊し、貧困、格差、非正規雇用が拡大。移民増加に伴う右傾化もあるが、反緊縮や新たな経済・社会戦略打ち出す「勝てる左派」が若者・労働者を席巻しているというのだ。労働党新党首ジェレミー・コービン、スコットランド国民党、スペインのポデモス、ギリシャの市民一揆…。もはや「左対右」でなく、「上対下」の時代と著者は言う。翻って日本の昨年の安保法反対運動は、「労働」に依拠しないが故にこれら左派とは違う、と著者。  日本も新自由主義が進み、ソーシャル・クレンジング(階級浄化)が隠される。私たちは新たな経済システムこそを明確にし、草の根から立ち上がる必要がある。そんな力強い希望が見える書。(登)

「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜

早川タダノリ 著

  • 「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜
  • 早川タダノリ 著
  • 青弓社1800円
外国人などが日本(人)をほめまくる“日本礼賛番組”が目につき、書店には“嫌韓反中本”とセットのように“日本人スゴイ本”が並ぶ昨今。本書は、1925~45年に刊行された“日本スゴイ本”から、「日本主義」「礼儀」「勤労」など、現代の“日本スゴイ”本にも登場するキーワードで選び、紹介したもの。自国礼賛のルーツを探り、戦時下のさまざまな言説を記し、資料的価値も高そうだ。  「日本人の底力・粘り強さは米食からくる」とか、「神の国には敗戦がない」など陳腐な言説から、現代でも通じそうな「礼儀正しく」「勤勉な」日本人論や、「女性の力」をコンセプトにした女性労働者向け自己啓発本まで多々あり、戦時下の自画自賛はすごかった。身勝手な基準で日本(人)を礼賛する本を玩味した記述に笑ってしまうのだが、著者は第1次安倍内閣が誕生してからこの20年、「日本人としての誇り」言説の急増を訴える。戦時下と酷似する状況に笑えなくなってしまう。(ぱ)

戦争とは何だろうか

西谷修 著

  • 戦争とは何だろうか
  • 西谷修 著
  • 筑摩書房820円
 平易な話し言葉で書かれた本書だが、問題はたやすくはない。  17世紀のウエストファリア体制から現代まで、主権国間の戦争からフランス革命後の国民軍の登場、国の社会・経済を巻き込んだ総力戦、そして、「相互確証破壊」という抑止論に基づく核の時代と冷戦、その中での植民地独立戦争へと、戦争の変化を概観する。  だが、9.11後、かつての国家間関係を前提とした国際法秩序は失効した。国際秩序を無視する「テロリズム」に対する「戦争」の発動は、「戦争」の概念を変え、「国家」のあり方をも変えた。  さらに、今や国家に最も影響力を持つのは、国民ではなく多国籍企業や投資ファンドだ。国家と国民の関係は大きく変わり、「経済的徴兵制」や軍事の「民営化」により、戦争の多くの部分は政治から経済の管轄へと移され、戦争の経済化が進んでいると指摘する。  私たちは、新たな認識で戦争の時代に抗わなければならないときにいる。(ね)
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