WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

3.11と心の災害 福島にみるストレス症候群

蟻塚亮二、須藤康弘 著

  • 3.11と心の災害 福島にみるストレス症候群
  • 蟻塚亮二、須藤康弘 著
  • 大月書店1800円
 福島原発事故により精神科4病院が閉鎖した浜通りで、2012年、心療クリニックが開設された。著者の蟻塚は精神科医として沖縄で沖縄戦体験者のPTSDに取り組み、2013年、クリニックに赴任。須藤は、その副院長を務める。  本書で重要なのは、原発避難者を「帰る土地と生業を失った『国内発の難民』」ととらえた点だ。その精神的苦痛は、過去の日本のどの災害よりも高いという。  避難者は、原発事故によってもたらされた不幸を悲しみ、受け入れて(悲哀の仕事)、人生の再スタートを切ることができるが、それには原発事故によって引き起こされたすべてを東電と国が謝罪し、清算し、賠償することが、「事故収拾への基本姿勢」だと指摘する。  「生きるための秘訣はあきらめないこと」。そのために痛手と向き合うことだ。だが、被災者だけに担わせることはできない。今、国は東京オリンピックに邁進しているが、東電と国は事故と被災者に向き合え!と痛切に思う。(ね)

エデとウンク 1930年 ベルリンの物語

アレクス・ウェディング 著 金子マーティン 訳

  • エデとウンク 1930年 ベルリンの物語
  • アレクス・ウェディング 著 金子マーティン 訳
  • 影書房1800円
 本書は1931年にベルリンで刊行された児童文学だが、「スィンティ」(=ジプシー)に好意的とみなされナチスに焚書にされた。  ワイマール共和国時代の末期、失業者が増え社会が重苦しい空気に覆われてきたベルリンで、ドイツ人の少年エデは、公園で寒さに震えるスィンティの少女ウンクと出会う。エデは好奇心と不安にドキドキしながら、「きみって、ほんとうのジプシーなの?」と尋ねるが、家馬車で暮らすウンク家族とすぐに親しくなる。父親が“首切り”に遭い、エデは新聞配達で家族を助けようと、姉と画策する。「共産主義者」のスパイや労働活動家も子どもの目を通して描く。  訳者による、エデとウンクのその後の運命とスィンティの解説が本書の特徴だ。戦争中、多くのスィンティが「劣等人種」として絶滅収容所で殺されていった史実が、物語と絡んで浮き上がる。スィンティ差別は消えず今に至ることが、私たちの身の回りにある「ヘイト」とつながり、示唆に富む。(三)

男子問題の時代 ? 錯綜するジェンダーと教育のポリティクス

多賀太 著

  • 男子問題の時代 ? 錯綜するジェンダーと教育のポリティクス
  • 多賀太 著
  • 学文社2200円
 日本でも青年期の「ふがいない男子」を嘆く声が目立つが、西洋では青年期男子の自立問題が常識化し、学齢期男子の学業不振等が論争になっているという。「厄介者の男子」批判から、男子支援教育を行う独・豪の事例までを紹介。  圧倒的男性優位・支配の社会にもかかわらず、「男の生きづらさ」が盛んに語られる日本の矛盾。生きづらさの原因は、過労など「支配のコスト」、負け組では結婚もできないなど「男としての剥奪感」、扶養に加えて家事育児もという「役割期待の増大」だ。男性支配を無理に維持しようして「支配のコスト」が増大しているという。  男性優位社会にあっても「男らしさ」に適応できない男子たち。彼らの「被害者」性を可視化するには、男女の平均的な違いを前提にした男性優位/女性劣位という構図だけでなく、男性集団内部の多様性と不平等という多角的な視点が必要だと著者はいう。  男性論のほか、ジェンダー教育論も視界を広げてくれる。(道)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ