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ふぇみんの書評

日本の女性議員 どうすれば増えるのか

三浦まり 編著

  • 日本の女性議員 どうすれば増えるのか
  • 三浦まり 編著
  • 朝日新聞出版1600円
「女性の議員を増やす!」という決然たる意志が立ち上ってくる。ただし政治学、社会学、女性学などの専門家である執筆者らはあくまで客観的に、なぜ女性議員が少ないのか、それはどういう状況をもたらすか、増えると政治はどう変わるかを明らかにする。  根強い性別役割分業意識や、現職有利、男性有利の小選挙区制度など女性議員を阻む壁、現在顕著な、要職に就いても政党の影響下にあるために「女性差別の解消」に向かわない議員の姿勢も指摘される。そこから多様な価値観を政治の場にもたらすためには、クオータ制などの制度的推進や、市民社会の諸相とのネットワークが重要だという提言が説得力をもつ。  「女性」という切り口で、共産党から自民党にいたる議員たちを分析・評価していることも本書の特徴だ。かつて男女共同参画社会基本法やDV防止法といった法整備に向けて会派を超えて進んだ女性たちのsisterhoodに、いまの停滞を打ち破る可能性を見る。(ま)

いのちを“つくって”もいいですか? 生命科学のジレンマを考える哲学講義

島薗進 著

  • いのちを“つくって”もいいですか? 生命科学のジレンマを考える哲学講義
  • 島薗進 著
  • NHK出版1300円
 iPS細胞による再生医療や遺伝子治療などのバイオテクノロジーはますます発展するだろう。技術は治療のためだけでなく、身体改造、デザイナー・ベビーなど、「エンハンスメント(増強)」と呼ばれる、人々の欲求・欲望を満たすための医療へも拡大されている。宗教学者の著者は、出生前診断や「脳死」臓器移植などの技術が生命観や死生観を変化させ、優劣や格差を生み出し、将来社会に与える影響に警鐘を鳴らす。  本書では中絶に寛容だった日本の歴史も例にしながら、西洋の倫理とは異なる観点を探る。アジアでも特異な日本の宗教文化―厳しい環境の中でいのちの連続性を求める「つながりのなかのいのち」の思想がエンハンスメントに歯止めをかける一つの鍵だという。他者や環境との関係性を自覚しながら「個としてのいのち」も「つながりのいのち」も尊ぶべきという見解は、胸にストンと落ちた。(く) 

日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学

里山社 編

  • 日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学
  • 里山社 編
  • 里山社3500円
 新潟水俣病発生の地の生活を描いた『阿賀に生きる』などのドキュメンタリー映画作品を監督した、故佐藤真のエッセイ・評論とともに、家族や仕事仲間、友人ら32人の書き下ろし原稿を収録。  『阿賀に生きる』撮影の裏話はやはり興味深い。佐藤らスタッフは「阿賀に生きる人々にとって、川との生活と川への思いが中心である以上、新潟水俣病の被害と闘いは、いつも生活の一部でしかない」と考え、現地の人々とともに酒を飲み、田んぼを手伝い、時にはスタッフ同士でケンカをしながらも阿賀の日常を描いたことが回想される。  49歳で亡くなった佐藤を、映画作家・想田和弘は「佐藤真は僕の中で今でも生きている」と語る。一方、劇作家・平田オリザは「福島の現実を、佐藤真がどう切り取るかを知りたいと切実に思う」とその不在を惜しむ。  「不在」である佐藤の存在は、縁ある人々の中では忘れがたいものであるようだ。(タ)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 加入者名:婦人民主クラブ
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