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ふぇみんの書評

われらが胸の底

澤地久枝 落合恵子 著

  • われらが胸の底
  • 澤地久枝 落合恵子 著
  • かもがわ出版1700円
 1930年に生まれ、子ども時代が十五年戦争の時期とぴったり重なる澤地久枝と、敗戦の年に生まれた落合恵子。15歳違いの二人による対談。  満州で子ども時代を過ごし、敗戦を迎えた澤地の話から始まり、父親がいないことで「ふつうでない」とされた落合の話、戦争の時代のとくに無名の人たちへのこだわり、クレヨンハウスの立ち上げ、そして集会に出ながら並行して糠漬けを漬けることの意味など、二人がこれまで何を考え生きてきたかを中心に対談は進む。  最後は、次の世代にどうつなぐかという話へ。澤地は、戦争を知っている者として語り続ける以外にない、若い人は勉強して自分に何ができるか真剣に考えてほしいと熱く語る。落合は、若い世代が見ている景色を知りシェアすることで、大きく柔らかなネットワークへと広がる可能性を思う。  デモが日常になっている今、原点に戻り改めて、自分はどうするかを振り返ることができる。(m)

それでも飯舘村はそこにある 村出身記者が見つめた故郷の5年

大渡美咲 著

  • それでも飯舘村はそこにある 村出身記者が見つめた故郷の5年
  • 大渡美咲 著
  • 発行=産経新聞出版 発売=日本工業新聞社1300円
 故郷が災害で失われたら…。現実になった時の心の置き所や身の振り方を想像するのは難しい。  福島原発事故で全村民が避難を強いられた福島県飯舘村。村出身で新聞記者の著者は、事故後の4月初めから飯舘村を含む福島取材に向かった。「故郷を取材することになるとは」という言葉が本書の特徴を物語る。  著者は父親と共に、環境省から自宅の除染方法を、東電から賠償の評価を聞く。両親は悩んだ末に思い出詰まる家を解体し、福島市に新居を建てた。  村民に取材すれば、相手は幼い頃から見知った人が多い。心を許して語ってくれる。村の歴史に誇りを持つ人。東電からの賠償で村民に生じてしまった格差。中学の同級生と近況を伝え合って聞く、今の暮らしや将来への不安。帰る決心の人も、帰れないと言う人も。そんな苦しみも迷いも悔しさも同時に自身のものでもある。  村民がそれぞれの決断をしている姿がここにある。(三)

観察する男 映画を一本撮るときに、監督が考えること

想田和弘 著 ミシマ社 編

  • 観察する男 映画を一本撮るときに、監督が考えること
  • 想田和弘 著 ミシマ社 編
  • ミシマ社1800円
 『選挙』で知られる想田和弘監督の「観察映画」は、台本なし、ナレーションなし、BGMなし、あらかじめ設定するテーマもなし、監督が一人でカメラを回し、録音もする。ドキュメンタリーにも台本があり、予定調和的な映画を撮ることに疑問を感じた想田監督が編み出し、日本だけでなく、海外でも高い評価を受けている。  本書は、今春上映した『牡蠣工場』の製作過程を、想田監督その人に取材し観察した記録だ。想田監督がどのように思考し、悩み、どのようにして観察映画ができあがっていくのか、その過程が逐一記されていて観察映画ファンにはたまらない。観察映画を観たことがない人でも、緻密に作り上げていく様子にワクワクするに違いない。どの場面を残してどの場面をカットするかの葛藤や、カメラを回していると期せずしてすごい場面が撮れてしまう瞬間のドキドキ感が味わえる。  読後、もう一度『牡蠣工場』が観たくなった。(順)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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