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ふぇみんの書評

原発棄民 フクシマ5年後の真実

日野行介 著

  • 原発棄民 フクシマ5年後の真実
  • 日野行介 著
  • 毎日新聞出版1400円
著者は毎日新聞記者として、これまで福島原発事故に関して『県民健康管理調査の闇』『被災者支援政策の闇』の2冊で世に問うてきた。本書では、原発避難者への住宅支援をテーマに、情報公開を求め、時には夜討ち朝駆けの直接取材でその内実を明らかにした。  原発避難者への住宅支援は、2017年3月をもって打ち切りとされている。自主避難者への住宅支援の総額は約80億円だという。除染にかかる6500億円余と比べれば、打ち切りの理由は金額ではない。「ただ普通に暮らしたい」という避難者の思いは無視されている。  著者は取材を通して、国や東電の無責任ぶりを明らかにし、「(避難者を)応急仮設住宅から退去させ、原発避難をとにかく終わらせるのが政府の真意だ」と断ずる。  「『五輪』や『自立』を名目にして、一方的に原発避難を終わらせること」が復興と言えるのか。  『原発棄民』は厳しいタイトルだが、「今はこれしかない」と著者はいう。(ね)

釜ヶ崎から 貧困と野宿の日本

生田武志 著

  • 釜ヶ崎から 貧困と野宿の日本
  • 生田武志 著
  • 筑摩書房 900円
 「釜ヶ崎」には社会におけるあらゆる「困難」がある。高齢化を迎えた日雇い労働者と大阪・釜ヶ崎の現状、人間が孤立した時に直面させられる過酷な状況、「使えない」制度の非情。著者は釜ヶ崎と周辺のまちを歩き、野宿する人々と出会い、生き延びるための手がかりを一緒に探す。  次々と新たに展開していく貧困のありように無力感が増す。ネットカフェで夜を過ごす若者たちはホームレスでありながらホームレスとして姿を現さないため、支援につながれない。高齢の女性野宿者や夫婦での野宿は身を寄せられる場所がない。知的障害のある10代の息子を連れて夫から逃れてきた女性は「男子禁制」のシェルターに入れない。「ぜいたくを言うな」と言うのは簡単だが、人の数だけ事情があり人生がある。  一方でホームレスの自立を支援する「ビッグイシュー」の試みや自助組織の立ち上げなど現実的な問題解決の紹介、提案もなされている。希望も確かにある。(葉)

拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々

蓮池透 著

  • 拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々
  • 蓮池透 著
  • 講談社1600円
 刺激的なタイトルの書だが内容もしかり。著者は「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」の元事務局長。右派団体である「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」に扇動され、北朝鮮に対し強硬派の急先鋒になった過去を反省しながら、家族会がいかにして救う会に“乗っ取られ”たかや、家族会の内情を暴露。拉致問題を解決しようとしないばかりか、利用するだけの政治家や外交官を厳しく批判している。拉致問題を最も政治的に利用し、被害者と家族に冷たい安倍首相の言動には、読んでいるこちらの怒りも収まらなくなる。  本書の対談では青木理さんも、拉致問題は戦後初めて「加害国」日本を唯一「被害国」の立場にし、人々の憤懣を多くの政治家が利用してきたと言う。拉致解決への道は、日本が「過去清算」をし、日朝国交正常化を目指すことという見解に納得。ただの暴露本ではない、拉致問題を解くための貴重な書だ。(ゆ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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